家庭裁判所に子どもに関する紛争が係属している場合、調査官による調査が実施されることがあります。
本稿では、調査官調査の内容と実施方法を解説いたします。
目次
1 家庭裁判所調査官とは
「家庭裁判所調査官」とは、家庭裁判所に係属している家事事件や少年事件について、裁判官の命令により事件の審理に必要な事項を調査する裁判所の職員です。
調査官は、心理学や社会学等の専門知識を有しており、子どもやその親と面接をしたり、関係機関と連絡や調整するなどして調査を行い、裁判所に調査内容を報告します。
家庭裁判所調査官になるためには、裁判所職員採用総合職試験を受験した後、裁判所職員総合研究所にて2年間の研修を受けて修了することが必要です。
2 調査官調査とは
家庭裁判所における「調査官調査」とは、裁判官の命令により調査官が家事事件の適切な解決のために調査を行うことをいいます。
例えば、父母が子の親権や監護権を争っている場合に父母のいずれを親権者又は監護権者と指定することが適切か、父母の一方が子どもとの親子交流を求めているところどのような親子交流の内容とすることが適切かを判断するために、家庭裁判所調査官が調査を実施することがあります。
なお、家庭裁判所調査官は、少年事件においても調査を行うことがありますが、本稿では親権・監護権・親子交流などの家事事件における調査官調査について、解説いたします。
少年事件について知りたい方は、以下のコラムをご参照ください。
3 調査官調査の内容・実施方法
調査官調査では、以下のような調査を実施することが多いです。
ただし、調査の内容や範囲は、裁判官と調査官が協議して決めますので、必ずしも以下の調査がすべて実施されるわけではありません。
父母との面接
子どもに関する調査官調査で最初に実施されるのが調査官と父母との面接です。
一緒に面接が行われるわけではなく、父母それぞれが個別で調査官と面接をします。
面接では、父母の生活歴、子どもの生活歴・性格、現在の子どもの状況、相手方と子どもの関係性、監護補助者の状況、親子間交流の実施状況、相手方の監護で心配なところなど、子どもに関する事項全般について質問がなされます。
時間は1時間〜3時間程度のことが多く、場所は家庭裁判所で実施することが多いですが、遠方の場合はオンラインや電話での面接となることもあります。
父母への面接は、調査官調査が実施される場合はほぼすべてのケースで実施される調査内容になります。
家庭訪問
主に子どもの親権や監護権が争われている場合、調査官が現在子どもを監護している親の自宅を訪問し、調査を実施することがあります。
家庭訪問による調査では、自宅の状況が子どもを監護するのに適切か、具体的には、掃除が行き届いているか、整理整頓がなされているか、子どもを監護するために必要な家具家電・備品は備わっているか、間取りに問題はないかなどを調査します。
また、家庭訪問による調査で、子どもの心情や意向を調査したり、同居している監護補助者(祖父母など)からの事情聴取を行ったり、自宅での親子の様子を確認することもあります。
子どもの心情・意向調査
子どもの心情や意向を調査するために、調査官が子どもと面接を行うことがあります。
子どもが幼い場合には、家庭訪問での現在の子どもの状況調査や後述する保育園の先生との面接の調査に留めることが多いですが、子どもが一定の年齢に達している場合(小学生の場合)は子どもの心情調査を実施することが多いです。
心情調査の場合、前述した家庭訪問の際に子どもと同居している親がいない状況で、調査官が子どもの話を聞いて調査を行うことが多いです。
家庭訪問以外で心情調査を行う場合、家庭裁判所のプレイルーム(子どもが遊べるおもちゃやスペースが確保されている部屋)にて調査官が子どもと遊びながら、質問をすることもあります。
また、子どもが中学生以上の場合は、家庭裁判所において調査官が子どもと面接を行い、子どもの意向を調査することがあります。
なお、子どもが15歳以上の場合、親権者の指定等の裁判をするときには、調査官が必ず子どもの陳述を聴く必要があるとされています(人事訴訟法第32条4項、家事事件手続法第169条2項)。
上記規定に基づき、実務上は、15歳に近い年齢の子どもについては、調査官が面接等により意向調査を行うことがほとんどです。
保育園や学校等の調査
子どもが現在通っている保育園や学校、父母の別居等により転園や転校した場合には転園や転校する前の保育園や学校に対する調査を行うことがあります。
主に子どもの親権や監護権が争点となっている場合に、実施されることが多い調査です。
具体的な調査内容としては、担任の先生と主にやりとりを行っていたのは誰か、病気での早退時に対応していたのは誰か、保育園や幼稚園の送迎は誰が行っていたか、保育園や学校での子どもの様子、持ち物や身だしなみが整っていたか、不自然な痣がなかったか(虐待の主張が出ている場合)などが挙げられます。
保育園や学校等の調査により、同居中に父母のどちらが子どもを監護していたか、主に監護していた方の親の監護が適切であったかが分かり、また、虐待の有無など子の福祉に悪影響を及ぼす事情の有無を確認することもできます。
調査の方法は、調査官が保育園や学校に赴き、担任の先生、園長や校長と面接を行う方法を取ることが多いです。
交流場面観察・試行的親子交流
親子交流が争点となっている場合、親子交流を求める親と子どもが交流している場面に調査官が同席して、その様子や内容を記録する調査を実施することがあります。
調査の場所は、家庭裁判所の外(近くの公園や商業施設等)で実施することもありますが、多くの場合は、前述した家庭裁判所内のプレイルームで実施します。
家庭裁判所のプレイルームで実施する場合、プレイルームの様子を見ることができる別室が設けられていることが多く、親子交流を求められている側の親が別室のマジックミラー越しで交流場面観察・試行的親子交流の様子を見ることが可能です。
児童相談所・警察への調査
以前に虐待等で児童相談所や警察へ通報・相談があったような場合は、調査官が児童相談所や警察の担当者から事情聴取を行うことがあります。
4 まとめ
家庭裁判所で調査官調査が必要となるケースでは、親権・監護権・親子交流の争いが激しい場合が多く、主張や立証(証明)の方法を誤ると、自身に不利な結果となってしまうおそれがあります。
調査官調査が必要となっている案件の場合は、弁護士に依頼することで、有効な主張や立証を行うことができます。
また、調査官調査が不安という方は、弁護士に依頼することで、調査に同席してもらうことも可能です。
当事務所は、離婚案件に注力しており、調査官調査への対応実績も豊富です。
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