配偶者が不貞(不倫)をし、不貞相手に対し慰謝料を請求する場合、公正証書を作成することがあります。
公正証書を作成すべきケースであるにもかかわらず、公正証書を作成しなかったことにより、不貞相手からの支払が滞ったり、強制執行ができないなどのリスクを負うことがあります。
本稿では、不貞慰謝料で公正証書を作成するメリットと作成方法を解説いたします。
目次
1 公正証書とは
「公正証書」とは、公務員である公証人がその権限に基づいて作成する公文書のことをいいます。
不貞慰謝料で公正証書を作成する場合、「債務弁済契約公正証書」というタイトルとすることが多いです。
2 不貞慰謝料で公正証書するメリット
強制執行が可能
公正証書には、支払が滞った場合に、強制執行をすることができる権利(「執行力」といいます)を付与することができます。
執行力が付与された公正証書のことを「強制執行認諾文言付公正証書」といいます。
強制執行認諾文言付公正証書を作成することで、不貞相手が慰謝料の支払を滞った場合、訴訟(裁判)を提起することなく、強制執行(差押え)の手続を行うことができます。
特に、不貞相手に資力がなく、慰謝料の支払が長期の分割払いとなる場合には、一括払いと比較すると支払が滞る可能性が高いため、強制執行認諾文言付公正証書を作成することをお勧めします。
任意の支払を促す効果がある
前述のとおり、強制執行認諾文言付公正証書を作成することにより、慰謝料の支払が滞った場合は、強制執行の手続を行うことができます。
不貞相手としては、支払が滞った場合、自己の財産を差し押さえられてしまうという心理的プレッシャーを受けることになります。
このようなプレッシャーにより、不貞慰謝料の支払を担保する(任意の支払を促す)効果があります。
法的に有効な書面を作成できる
前述のとおり、公正証書は、公務員である公証人が作成する文書ですので、証拠能力が高く、後日、「偽造された」、「強迫されて作成した」などの主張がなされる可能性を低下させることができます。
また、公証人には、元裁判官や元検察官などが就任します。法的知識を有しているので、法的に有効で、かつ、解釈に疑義が生じにくい条項を作成してもらうことができます。
紛失等のリスクを防止できる
当事者間で作成した示談書や合意書の場合、紛失や滅失のリスクを伴います。
示談書や合意書を紛失又は滅失してしまった場合、合意した内容を証明するものがなくなってしまうことから、不貞相手が合意した内容を否認してきた場合に、合意に基づく不貞慰謝料の支払や条件の遵守を要求できなくなるリスクがあります。
公正証書の場合、公正証書の原本は公証役場で保管されるので、上記のリスクを防止することができます。
3 公正証書の作成方法
①不貞慰謝料の金額及び条件について協議する
まずは、不貞相手に対して慰謝料請求を行い、慰謝料の金額や条件について、協議を行います。
条件としては、配偶者と不貞相手の接触禁止条項、接触禁止条項に違反した場合の違約金条項、口外禁止条項(不貞の事実などを第三者に口外しないことを約束する条項)などが考えられます。
なお、不貞慰謝料の請求方法は、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
②示談書を作成する
慰謝料の金額や条件について合意が成立したら、合意した内容を書面にまとめましょう。
書面のタイトルに決まりはありませんが、一般的には、「示談書」、「合意書」とすることが多いです。
不貞の示談書の作成方法については、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
なお、書面を作成するに当たっては、公正証書の作成費用を誰が負担するかを定めておくと良いでしょう。
③公証役場に予約をする
書面の作成が完了したら、公証役場に連絡をし、公正証書作成の予約をしましょう。
予約せずに公証役場を訪れても、公証人が空いていなかったり、公証人が公正証書案を作成する時間がなかったりして、当日に作成できないことがほとんどです。
公証証書は全国どこの公証役場でも作成できるので、互いに訪問しやすい公証役場を選ぶと良いでしょう。公証役場の一覧は日本公証人連合会のホームページ(https://www.koshonin.gr.jp/list)に掲載されていますので、ご確認ください。
公証役場からは、必要な資料(示談書、身分証明書、印鑑証明書等)の提供を求められるので、指示に従いましょう。
必要な資料を送付した後、公正証書を作成する日程を調整します。
公証人は、示談書や送付した資料をもとに公正証書案を作成しますので、事前に文案を確認し、内容に問題がないか確認しておきます。
④公正証書の作成
公証役場への予約が完了しましたら、事前に調整した日時に公証役場に向かいましょう。
当日、持参するものは以下のとおりです(※下記以外にも公証人から持参を求められることがあるので、その場合は公証人の指示に従いましょう)。
- 身分証明書(運転免許証等)
- 印鑑証明書
- 公正証書の作成費用
公証役場では、公証人が当事者と公正証書の内容を読み合わせ、当事者双方の意思を確認した上で、電子署名を行います(改正により押印は不要になりました)。
電子署名が完了したら、公正証書の作成費用を納めて、公正証書の正本又は謄本を受領して手続終了となります。
なお、強制執行手続に際しては、公正証書の正本又は謄本の送達証明書(当事者に公正証書が交付されたことを証明する書類)が必要になります。当事者本人が公証役場に出頭した場合には、その場で公正証書の正本又は謄本の交付を受けることで送達が完了するので(交付送達といいます)、送達証明書を取得しておきたいという方は、併せて送達証明書の申請と受領をしておくと良いでしょう。送達証明書の発行手数料は250円です。
また、公正証書の作成費用は、不貞慰謝料の金額により変わります。公正証書の作成費用は、日本公証人連合会のホームページで確認することができます。
4 不貞慰謝料の交渉と公正証書の作成は弁護士法人新静岡駅前法律事務所へ
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