死因贈与とは、贈与者が、自己が亡くなることを条件として財産を贈与する契約のことをいいます。
本記事では、死因贈与を行う際の注意点や、似た制度である遺言書を書いて財産を相続させる「遺贈」との違いを解説します。
目次
1 死因贈与とは
死因贈与とは、贈与者(財産をあげる人)が亡くなることを条件として、受贈者(財産をもらう人)に財産を贈与することです。このように、一定の事由が生じることを条件として法律効果が生じる契約を、停止条件付契約といい、死因贈与もその一種です。
死因贈与の場合、贈与者が亡くなることを条件として贈与をするという契約となり、実際に贈与の効果が発覚するのは、贈与者が亡くなった時点となります。
なお、死因贈与と異なり、自分の存命中に財産を贈与する場合は、生前贈与といいます。
生前贈与の場合には、自己の財産が、自分の生きている間に受贈者のものとなります。
生前贈与については、以下のコラムで解説しています。
2 死因贈与と遺贈の違い
遺贈とは、遺言書を作成して、自己の財産を受贈者に相続させることをいいます。自身が死亡した際に財産をあげるという点で死因贈与と遺贈は似たような効果をもたらしますが、以下のような違いがあります。それぞれの違いを考慮して、どちらの方法を取るか検討するとよいでしょう。
双方の合意が必要かどうか
遺贈の場合、贈与者は、受贈者に事前に合意を取る必要なく、自身の考えのみで遺言書を作成することができます。他方で、死因贈与は双方の合意により契約することが必要です。相手が「財産を欲しくない」といった場合には、契約が成立しないため、死因贈与を行うことはできません。
ただし、遺言書を作成していたとしても、受贈者は、遺贈の放棄をすることはできるため(民法第986条1項)、必ず財産をもらってもらえるわけではない点には注意が必要です。
書面が必要かどうか
死因贈与の場合、書面の作成は必須ではなく、口頭のみで契約することも可能です。
他方で遺贈の場合には、必ず遺言書を作成する必要があり、また、遺言書は記載方法が民法によって定められています。民法で定められた方法で記載されていない遺言書は無効となってしまうので、注意が必要です。
ただし、死因贈与の場合であっても、口頭のみでの契約は後に他の相続人とトラブルになったりすることが考えられるので、書面を作成した方が良いでしょう。
税金の額
法定相続人が不動産を遺贈された場合、不動産取得税がかからないのに対し、死因贈与の場合には不動産取得税がかかります(固定資産税評価額の3%または4%)。また、登録免許税についても、法定相続人が遺贈を受ける場合には、0.4%なのに対し、死因贈与の場合は2%となります。
贈与したい遺産に不動産がある場合には、遺贈の方が税負担が軽くなるといえるでしょう。
ただし、遺贈であっても相続税はかかりますので注意が必要です。
相続税については、以下のコラムで解説しています。
3 死因贈与のメリット
受贈者と合意したうえで財産を確実に渡せる
前述のとおり、死因贈与は、贈与者と受贈者の合意が必要です。生前に受贈者と協議ができるため、受贈者が「本当は土地ではなく預金が欲しい」などの希望があった場合には、その希望を取り入れつつ、契約ができます。また、死因贈与の場合、事前に合意して契約をしていることから、受贈者はその財産を放棄することができません。遺言によって財産を渡せると思っていたら、財産を放棄されてしまった、ということも防ぐことができます。
遺言書に比べて手続きが簡単
前述のとおり、遺言書は民法により定められた方式により記載する必要があります。方式を守っていないと、せっかく遺言を書いても無効となってしまいます。他方、死因贈与の場合には自由な方式により契約書を記載することができるので、比較的手間がかからない方法といえます。
遺産分割協議の手間を減らすことができる
被相続人(亡くなった方)が有している財産(遺産)を相続人間で分けるには、誰がどの遺産を取得するか等について、相続人間で話し合う遺産分割協議を行う必要があります。また、話し合いの結果は遺産分割協議書といった書類に記載する手間もかかります。遺産分割協議の過程で、誰がどの財産を取得するかについて相続人間で争いとなってしまうことも少なくありません。死因贈与を活用することで、遺産分割協議の手間や後の相続人間のトラブルを減らせるといったメリットがあります。
遺産分割協議については、以下のコラムで解説しています。
4 死因贈与の注意点
撤回できない場合がある
死因贈与は、受贈者の合意なく、贈与者が自由に撤回することができます(民法第554条、第1022条)。
しかし、受贈者が何らかの負担を負う「負担付死因贈与」の場合には、負担の全部または、全部に類する部分が履行された場合には撤回することができません。例えば、自宅の土地と建物を贈与する代わりに、受贈者が贈与者の月々の生活費を支払うといった契約は、負担付死因贈与に該当しますので、生活費を受け取っていた場合には、撤回ができなくなる可能性があります。これに対して、遺言書はいつでも自由に内容を書き直すことができます。負担付死因贈与を行う場合には、途中で撤回することができなくなる可能性があることを踏まえ、慎重に検討するとよいでしょう。
遺留分に注意して行う
遺留分とは、特定の法定相続人に保障されている、最低限の相続分のことをいいます。これを侵害された法定相続人は、侵害した人に対して、遺留分に該当する額を請求することができます。そして、死因贈与で贈与した財産についても遺留分の計算の際に考慮されるため、特定の法定相続人にのみ死因贈与を多く行ってしまうと、後に遺留分を請求され、相続人間でトラブルになってしまう可能性があります。
死因贈与を行う場合は、遺留分の額を考慮して行うとよいでしょう。
遺留分については、以下のコラムで解説しています。
契約書を作成する
前述のとおり、死因贈与を行う場合、口頭の合意であっても有効です。
ただし、契約書がない場合、他の相続人から、「本当に契約があったか疑わしい」などと主張され、相続人間でトラブルとなってしまう可能性がありますし、言われた側も、死因贈与契約があったことを客観的に証明することが難しくなってしまいます。
確実に死因贈与があったことを証明するためにも、契約書を作成すると良いでしょう。
5 まとめ
死因贈与は、正しく活用することで様々なメリットを受けることができますが、税金や遺留分を考慮しておかないと、相続人間でトラブルとなってしまったり、税負担が重くなってしまったりと、思わぬ結果を招いてしまうこともあります。
当事務所では、相続案件に注力しており、提携している税理士と、税に関する相談までをワンストップでお受けすることも可能です。当事務所への相談をご希望の方は、問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。
