新静岡駅前法律事務所

親権を決める8つの判断要素を弁護士が解説

離婚のイメージ
2023-10-25
親権 離婚

日本では、離婚後の単独親権制度が採用されているので、離婚をするに際しては父母のいずれかを子の親権者として定める必要があります(民法第819条)。

つまり、親権者が定まらないと離婚を成立させることができないため、離婚に際し、親権は大きな争点となることがあります。

本稿では、親権の基本的知識と親権者を決定する判断要素について、弁護士が解説します。

目次

親権とは

親権は、財産管理権身上監護権から構成されます。

以下、財産管理権と身上監護権の詳細を紹介いたします。

財産管理権

名称のとおり、子の財産を管理する権利です(民法第824条)。

例えば、子がもらったお年玉やお小遣いを子名義の口座に預金したり、出金したりするなどする行為は、財産管理権に基づくものです。

また、携帯電話の契約を代理するなどの法定代理人として代理権を行使する権利も財産管理権に含まれます。

身上監護権

主に子を監護養育することが身上監護権の内容になります。

具体的には、監護教育権(民法第820条)、居所指定権(民法第821条)、懲戒権(民法第822条)、職業許可権(民法第823条)が親権者に与えられる権利になります。

親権と監護権の分離

法律上、親権(財産管理権)と監護権を分離することは可能です。

しかし、子を監護養育する親が財産管理権を行使できないと、子を監護養育する親にとって不便であり、子の福祉に悪影響を及ぼすおそれがあるので、親権と監護権を分離しているケースは極めて稀です。

親権者を決定する際の判断要素

監護実績

同居中にどちらの親が主に子を監護していたか、別居後に子を安定して監護できているかは、親権者を定める上で、非常に重要な判断要素となります。

同居中の監護実績については、証拠がないケースが多いですが、例えば、保育園や幼稚園の連絡帳先生の証言(送迎はどちらの親が多く行っていたか、学校行事には参加していたか等)、子の育児をしている写真子と遊んでいる写真等は、証拠として残っていることが多いので、証拠として提出すると良いでしょう。

相手方配偶者が、一方的に子を連れて別居するケースがありますが、その場合は、早急に子の監護者指定・子の引渡しの審判、並びに、審判前の保全処分を申し立てるべきです。

上記審判及び保全処分を申し立てることをしないと、相手方配偶者に別居後の監護実績を作られてしまい、親権者の指定において不利に働く可能性が高まるためです。

監護補助者

監護養育を補助してくれる人がいるか、補助してくれる人の監護補助能力が高いかも、親権者の決定には、大きな影響を及ぼします。

祖父母や兄弟姉妹等の近い親族が同居している又は近くに住んでいる場合には、親権の獲得にあたって有利に働きます。

そのような親族がいない場合には、知人や職場関係者、ヘルパーを監護補助者として主張することもありますが、やはり近い親族と比較すると、監護補助能力という点で低い評価をされてしまうことが多いです。

親権が争点となっている場合、家庭裁判所の調査官が自宅訪問をする調査を行うことがありますが、その際は、監護補助者に同席してもらうと、監護補助に協力的であると評価される場合が多いので、できる限り、同席してもらうようにしましょう。

生活状況・健康状態

前述のとおり、親権が争点となっている場合、調査官が自宅訪問の調査を行うことがあります。

自宅訪問の際は、部屋が清潔に保たれているか、子の生活環境は整っているかなどの住環境の確認がなされるため、生活状況は良好に保つ必要があります。

相手方配偶者に虐待や育児放棄等の親権者にふさわしくない事情がある場合には、親権者の決定に当たり非常に不利になるので、証拠を示した上で、強く主張すべきです。

また、健康状態が良好でない場合、入院や通院等により子を安定して監護することができないと判断され、親権者の決定において不利に働く可能性があるので、健康に不安がある方は、適切な治療や監護補助者によるケア等の監護計画を具体的かつ詳細に示したり、医師から「子の監護養育に支障を来す程度の症状ではない」という内容の診断書を取得し、資料として提出するなどの対応をすることが望ましいです。

職業・経済状況

安定した職業に就いているか、経済的に安定しているかという点も、親権者指定の判断要素の1つにはなりますが、児童手当、児童扶養手当、生活保護等の公的手当、並びに、相手方配偶者からの養育費により、経済的安定性を確保することは可能ですので、職業及び経済状況は親権者の決定に影響を及ぼさないと判断されることが多いです。

子の意向

子が父母のいずれを親権者とすることを希望しているかという点も判断要素になりますが、その影響力は子の年齢により大きく変わってきます。

法律上、15歳以上の子については、親権者指定等の裁判をする場合に、意向調査をする必要があると定められていることから(人事訴訟法第32条4項)、15歳以上の子の意向は重要視される傾向にあります。

15歳未満の子であっても、10歳程度の年齢の場合には、一定程度の判断能力が備わっているとして、子の意向が重視される傾向にあります。

一方で、10歳未満の子については、子の意向はあまり重視されない傾向にあり、年齢が下がるほど、親権者指定の判断に対する影響力が低くなります。

面会交流の実施状況

面会交流を認めることが子の福祉に反する特段の事情がない限り、非監護親と子との面会交流を実施することが子の福祉にかなうとされています。

したがって、子の福祉に反する特段の事情がないにもかかわらず、子との面会交流を実施していないなどの事情がある場合には、親権者としてふさわしくないとして、親権者指定の判断において不利に働くおそれがあります。

面会交流の審判においては、月1回の面会交流が認められることが多いため、最低でも月1回の面会交流を認めることにより、親権者指定の判断において、有利になる可能性が高まります。

母性優先の原則

父親よりも母親が監護した方が子の福祉に資するというのが母性優先の原則です。

乳幼児(0〜5歳)に関しては、母性優先の原則を採用した裁判例はありますが、あくまで親権者指定の判断における一要素に過ぎませんので、単に母親であるからといって、大きく有利になるとは限りません。

母性優先の原則よりも、前述した監護実績の方が親権者指定の判断においては重要な要素になります。

兄弟不分離の原則

兄弟不分離の原則とは、子が2人以上いる場合に、兄弟をそれぞれ別の親の親権者とすることで離すことは子の福祉に反することから、兄弟の親権者は同一とすべきとする考え方です。

実際に、裁判所が兄弟不分離の原則を考慮要素とした例はありますが、親権者指定においては、補完的な要素に留まります。

親権者を決定する際の判断要素まとめ

判断要素重要性
監護実績重要視される
監護補助者考慮される
生活状況・健康状態考慮される
職業・経済状況補完的要素
子の意向子が15歳以上:重要視される
10歳以上:考慮される
面会交流の実施状況考慮される
母親であること考慮されることもある
(否定した裁判例あり)
兄弟を別の親権者とするか補完的要素

不貞行為は親権者の決定に影響を及ぼすか

不貞行為を行った相手方配偶者は、親権者としてふさわしくないという主張は多いですが、裁判実務では、不貞行為が親権者指定の判断に及ぼす影響は極めて限定的です。

その理由は、不貞行為を行ったことと親権者としての適格性は関係性が希薄だからです。

したがって、不貞行為自体が親権者指定に不利な事情になる可能性はありますが、重要な判断要素にはなりません。

ただし、不貞相手と過ごす時間が長くなった結果、子の監護養育に悪影響を及ぼしていたり、不貞相手が子に虐待をしているような場合は、親権者の指定において不利な事情となります。

親権者変更

仮に親権者が相手方配偶者に指定されてしまった場合も、相手方配偶者に親権者としてふさわしくない事情がある場合には、親権者変更の調停又は審判を申し立てることが可能です。

もっとも、親権者が相手方配偶者と指定された場合、子の状況を把握することは難しく、親権者としてふさわしくないことの立証は困難を極めますので、子の状況を把握するためには、安定して面会交流を実施することが必須になります。

例えば、面会交流時に、子の身体に痣があったり、子が相手方配偶者の監護に対し、不満を述べているような場合には、親権者変更の調停又は審判を申し立てるきっかけを作ることができます。

このような状況も想定されるので、仮に親権を取れなかったとしても、充実した面会交流については、きちんと合意をするべきです。

なお、虐待や育児放棄の可能性がある場合には、児童相談所に相談されると良いでしょう。

児童相談所の職員がヒアリングを行い、子の状況を調査してもらえる可能性がありますし、親権者変更の調停又は審判において、児童相談所の相談記録や調査結果を証拠として提出できるためです。

弁護士に依頼するメリット

これまで紹介してきたとおり、親権者の指定においては、様々な事情が考慮されます。

また、親権に争いがある場合、家庭裁判所の調査官による調査もあり、その際には、どのような事項を聴取されるのか、調査官からの質問にどのように回答すべきかといった検討も必要になりますし、面会交流に関する交渉、調停、審判の対応が必要になる場合があります。

親権者指定、調査官調査、面会交流に関する対応を弁護士に任せることにより、裁判所から有利な判断を引き出すことができる可能性があります。

また、裁判所を介した手続(調停、審判、訴訟)においては、弁護士が同席してくれますので、調停、審判、訴訟を弁護士に一任することができ、裁判所に出頭する手間が省けますし、さらに、依頼者様が出頭する場合には弁護士が同席してくれますので、法的アドバイスを受けながら裁判を進めることができます。

まとめ

離婚に伴う親権者の指定は非常に重要な事項であり、仮に親権を獲得することができなかった場合であっても、充実した面会交流を確保することは子の福祉の観点からも重要ですので、離婚に際し、親権が争点となっている場合には、一度弁護士に相談されると良いでしょう。

著者

弁護士 長谷川達紀

弁護士
長谷川達紀

静岡県弁護士会所属

家事事件と男女トラブルを中心に月100件を超える相談に対応。

趣味はグルメ巡りとテニス。

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