新静岡駅前法律事務所

婚姻費用の相場は?請求方法や金額を弁護士が解説

2024-06-06
婚姻費用 離婚

婚姻費用の相場は?請求方法や金額を弁護士が解説

別居をしている夫婦の一方は、相手に対して生活費(婚姻費用)を請求できる場合があります。

そこで、本記事では、別居をしようと考えているけれど、別居後の生活が心配という方のために、婚姻費用の相場や請求方法を解説します。

目次

1. 婚姻費用とは?

婚姻費用とは、簡単にいうと生活費のことで、家族が通常の生活を営むために費用のことをいいます。

具体的には、食費や被服費、住居費、医療費、交際費、子どもの学費などがこれにあたります。

民法で、夫婦は、婚姻から生ずる費用(=婚姻費用)を分担する義務があると定められていますので(民法第752条)、婚姻中は、別居していたとしても、この規定を根拠に相手に生活費を請求できるのです(民法第760条)。

2. 婚姻費用の相場は?

婚姻費用の額は、裁判所が作成した婚姻費用算定表を用いて決めることがほとんどです。

算定表は、家庭裁判所の裁判官などが、簡単に婚姻費用の額を算定するために作成したもので、婚姻費用を請求する人(=「権利者」といいます)と婚姻費用を支払う人(=「義務者」といいます)の双方の年収を元に、婚姻費用の額が表で簡単に確認できるようになっているので、婚姻費用の請求をお考えの方は、一度算定表を確認してみるとよいでしょう。

①夫の年収が800万円、妻の年収が200万円、子どもがいない夫婦の場合

婚姻費用は、夫婦が同程度の生活を営むことができるようにするという考え方から請求が認められるものであり、通常は、年収が低い方が高い方に請求することができます。

例の場合、妻の方が年収が低いため、妻が夫に対し婚姻費用を請求できます。

子どもがいない夫婦なので、裁判所が作成した算定表のうち「(表10)婚姻費用・夫婦のみの表」を使用して婚姻費用を算定します。

婚姻費用を請求する権利者(妻)の年収は200万円なので、グラフの横軸は200万円の箇所を、義務者(夫)の年収は800万円なので、グラフの縦軸は800万円の箇所をみます。

グラフ内で交差する場所が、8~10万円の上方付近なので、婚姻費用の額は10万円が適正となります。

②夫の年収が800万円、妻の年収が200万円、妻が子ども2人(15歳の子ども1人、8歳の子ども1人)を養育している場合

婚姻費用の額の中は、子どもの生活費も加味して算出されるため、権利者が子どもを養育している場合、夫婦が①の例と同じ年収であっても、婚姻費用の額は高くなる傾向にあります。

この例では、15歳以上の子どもが1人、14歳以下の子どもが1人いるため、「(表14)婚姻費用・子2人表(第1子15歳以上、第2子0~14歳)」を利用して婚姻費用の額を算定します。

夫婦の年収を表に当てはめると、交差する場所は、16~18万円の真ん中付近なので、婚姻費用の額は17万円が適正となります。

③夫の年収が200万円、妻の年収が800万円で、子どもがいない場合

前述のとおり、婚姻費用は年収が高い方が低い方に支払うのが原則のため、この場合は、妻は夫に対し婚姻費用を請求できません。

逆に、夫が妻に対し婚姻費用を請求できることとなります(請求できる額は①の例と同じです)。

④夫の年収が400万円、妻の年収が500万円で、妻が子ども1人(15歳以上)を養育する場合

前述のとおり、婚姻費用は年収が低い方が高い方に請求することができるのが一般的ですが、婚姻費用は、夫婦の収入を収入に応じて公平に分担するという考えによるものですから、子どもの養育に要する費用も、夫婦の収入に応じて公平に分担すべきであるとされています。

そこで、一方が子どもを養育している場合には、相手より収入が高い場合でも、婚姻費用を請求できるケースがあります。

この例の場合、「(表12)婚姻費用・子1人表(子15歳以上)」を利用して算定すると、婚姻費用の月額は、2~4万円となり、妻の方が年収が高くても、夫に婚姻費用を請求できます。

3. 婚姻費用を算定表の額より増額できることはある?

「婚姻費用とは別に、子どもの学費を負担してもらうことはできますか?」婚姻費用のご相談の際、よくこういった質問をいただくことがあります。

婚姻費用の算定表は、統計を元に、標準的な住居費、医療費、学費等を加味して婚姻費用の額を決めています。

そのため、子どもが公立学校に通っている場合の学費は既に加味したうえで定められているのが婚姻費用であるとして、学費分を増額して請求することはできないことが一般的です。

ただし、私立学校の学費については、算定表上加味されていないことから、算定表の額に加えて一部を相手に請求することができる場合があります。

ただし、私立学校に通っている場合の学費を加味できるのは、基本的には①相手が私立学校への進学を承諾していた場合か②相手の収入・学歴・地位等からその教育費負担が不合理でない場合のみとされています。

例えば、明示的な承諾がなかったとしても、同居中から私立学校への進学が決まっていた場合には、①の同意があったとして婚姻費用の額に追加して請求できる場合があります。

追加して請求できる額としては、既に算定表情考慮されている公立学校の標準的な学費と私立学校の学費(実際にかかる額)の差額をそれぞれの年収で按分するという形が一般的です。

この方法で加算額を計算する場合、具体的には、以下の式で計算します。

(私立学校の学費-公立学校の標準的な教育費)×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)

例えば、夫の年収が800万円、妻の年収が400万円、子どもが通っている私立高校の学費が100万円の場合でみてみましょう。

公立高校の標準的な教育費は、年額で25万9342円です。

基礎収入とは、年収から公租公課や、住居関係費などの必要経費を引いた額をいいます。

可処分所得とほぼ同じと考えていただくとイメージがつきやすいでしょう。

婚姻費用の算定表では、この基礎収入を元に婚姻費用の額を決めていることから、私立学校の学費を増額する場合も、基礎収入を算出して計算します。

年収ごとに基礎収入割合が決められており、その割合を収入に乗ずることで基礎収入が算定できます。

年収800万円の場合の基礎収入割合は40%、400万円の場合の基礎収入割合は42%です。

夫の基礎収入=800万円×0.4=320万円

妻の基礎収入=400万円×0.42=168万円

これを上の式に当てはめると、以下のとおりとなります。

(100万円―25万9342円)×320万円÷(320万円+168万円)≒485677

以上より、年額約48万5677円、月額約4万円を婚姻費用の額に加算して請求できることとなります。

4. 婚姻費用の請求方法は?

①相手との協議で請求する

婚姻費用の請求方法としてまず考えられるのが、相手との協議によって額を決めて請求する方法です。

相手と協議ができそうであれば、相手に対し婚姻費用を請求することを伝え、額や支払い方法について協議しましょう。

この場合、相手との合意さえできれば、婚姻費用の額は自由に決めていいことになりますから、必ずしも算定表に従う必要はありません。

ただし、相手としても、裁判所が作成している算定表であれば合意がしやすいでしょうから、算定表をベースに話し合いをするとスムーズに合意ができることが考えられます。

②調停

相手と婚姻費用について合意ができない場合には、婚姻費用の請求調停を申し立てることを検討しましょう。

調停とは、1名の裁判官(又は調停官)と2名の調停委員が当事者の話し合いを仲介し、当事者による合意を目指す手続です。

あくまで話し合いの手続きですから、相手と合意することが必要となりますが、婚姻費用の額については、算定表という客観的な指標があることから、争点が少なくなる傾向があり、調停段階で合意することができることも多いです。

調停の申立ては、裁判所に申立書や必要書類を提出することで行います。

婚姻費用請求調停の申立て方法は、こちらのコラムで詳しく解説していますので、ご確認ください。

調停でも話し合いが成立しなかった場合には、調停は不成立となり、自動的に審判という手続きに移行します。

審判では、調停と異なり、裁判官が当事者の提出した証拠を元に婚姻費用の額を決定します(通常、1か月あたり●円を支払え。といった形で結論が出されます)

5. 婚姻費用はいつからいつまで請求できる?

婚姻費用の支払開始時期は、一般的に、請求時からとされています。

よく、別居した時点から過去に遡って請求できますか?という質問をいただくことがあるのですが、実務では請求時からとされているため、別居後しばらく経ってから請求した場合には、その請求時点以降の部分しか請求できません。

そのため、別居を開始した際には、早めに婚姻費用を請求するとよいでしょう。

なお、口頭で「婚姻費用を支払ってください」とだけ言った場合には、具体的に請求があったとは認められないことが多いので、内容証明など請求したことが分かる書面で請求するとよいでしょう。

また、婚姻費用は、あくまで夫婦間に生活費の分担義務があることから請求が認められるものですので、離婚が成立した場合には、婚姻費用は請求できません。

そこで、婚姻費用を請求できるのは、離婚成立時までということになります。

6. まとめ

ご自身の収入のみでは生活が困難であることから、離婚をしたいのに別居に踏み切れないという方もいらっしゃるのではないかと思います。

婚姻費用を請求することで、別居をしながら落ち着いた環境で離婚の条件を協議できることもありますので、お悩みの場合は、問い合わせフォームから一度お気軽にご相談ください。

著者

弁護士 日吉加奈恵

弁護士
日吉加奈恵

静岡県弁護士会所属

東京都内の法律事務所に出向経験もあり、離婚・男女トラブル・相続等の個人案件の経験も豊富。

趣味は旅行と野球観戦。

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