Instagramで誹謗中傷をされている場合には、相手を特定して投稿者に損害賠償請求をすることを検討するとよいでしょう。
そこで、本記事では、Instagramで誹謗中傷の被害にあっている場合の対処法・流れについて解説します。
目次
1 Instagramで誹謗中傷されている場合、相手を特定できる?
Instagramで誹謗中傷を受けている場合、相手はインターネット上の知り合いで、氏名や住所が分からないという方も多いでしょう。
相手に対して慰謝料を請求する場合には、相手の氏名や住所を把握する必要があるので、まずは相手を特定することが重要です。なお、相手の住所や氏名が分からない場合に、DMで慰謝料請求をすることも考えられなくはないですが、DMのみの請求で相手が慰謝料請求に応じることは稀でしょう。
相手を特定するには、発信者情報開示命令という制度で相手の住所や氏名を開示するよう求めることになります。この開示命令の申立ては、どのような場合でもできるわけではなく、相手がこちらの法律上保護された権利を侵害している場合に可能となります。
代表的な権利侵害としては、名誉権侵害、名誉感情侵害、肖像権侵害、プライバシー侵害、アイデンティティ権の侵害等が挙げられます。
名誉権侵害とは、人の社会的評価を低下させた場合に成立します。例えば「Aさんは不倫をしている」といった投稿は、名誉権侵害が成立する可能性があります。
名誉感情侵害は、人が自身の人格的価値に関して有する主観的評価のことをいい、主に侮辱的な投稿に対して成立します。例えば、執拗に「バカ」「ハゲ」と投稿した場合などがこれにあたります。
肖像権侵害とは、みだりに写真を撮影されたり、その写真を投稿された場合に成立します。勝手に写真を撮られ、許可なくInstagramに投稿された場合には、肖像権侵害が成立し得るでしょう。
プライバシー侵害は、みだりに私生活上の事柄を公表された場合に成立すると考えられています。例えば、自身が公開していないのに、勝手に住所を公開された場合に成立します。
さらに、裁判例上、他者から見た人格の同一性を偽られ、その人格の同一性に関する利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超える場合、アイデンティティ権侵害が成立すると解釈されています。例えば、勝手に自身の名前を用いてInstagramのアカウントを開設されていた場合には、アイデンティ権侵害が成立する可能性があります。
2 投稿者の特定の方法
投稿者の特定は、発信者情報開示命令という手続きによるのが一般的です。発信者情報開示請求という裁判上の手続きも利用することができますが、発信者情報開示命令の申立ての方が、より迅速で簡易な手続きであることから、現在では主にこちらの手続きが用いられています。
Instagramへ開示命令の申立てをする場合、以下で述べる提供命令についても併せて申立てることで、より迅速に投稿者の特定をできます。提供命令を用いる場合の流れは、以下のとおりです。
①Instagramへの開示命令申立て
まずは、Instagramに対し、投稿に用いられたIPアドレスの開示をするよう求めます。
また、Instagramについては、アカウントの開設の際に一定の情報(氏名や電話番号、メールアドレス等)を登録しているユーザーが多いことから、アカウントに登録された情報についても開示するように求めることをお勧めします。アカウント情報の開示を求めることで、IPアドレスの開示を求める申立書と同一の書面で申立てができますし、プロバイダ側のログの保存期間の関係で、IPアドレスから投稿者が特定できなかった場合でも、電話番号やメールアドレスから投稿者を特定できる可能性があります。
開示命令の申立ては、申立書や必要書類を裁判所に提出することで行います。書式や必要書類は、裁判所のホームページで確認しましょう。
②提供命令の申立て
提供命令とは、Instagramに対し、プロバイダに一定の情報を提供するよう命令するものです。提供命令の申立てでは、申立人に対して投稿に用いられたIPアドレスの管理者であるプロバイダ名を開示するよう求めると共に、そのIPアドレス等をプロバイダに提供せよ、という趣旨の申立てを行います。これを行うことで、Instagramは、プロバイダに対し、投稿者の特定に必要なIPアドレス等の情報を、直接プロバイダに提供してくれます。
また、この申立ては、①の申立てと同時に行うことができますので、申立書に提供命令の申立ても行う旨を記載しましょう。
③プロバイダ名の開示
提供命令は、書面のみで審理がされることから、受付がされてから通常数日間で発令されます。
発令後、1週間から2か月程度で、IPアドレスの管理者であるプロバイダの名称が開示されます。
これにより、どのプロバイダに対して投稿者の情報を開示するよう求めればよいかが分かり、④のプロバイダへの開示命令の申立てに進むことができます。
④プロバイダへの開示命令申立て
プロバイダは、インターネットサービスの提供者であり、契約者(インターネットサービスを利用している者)の氏名や住所情報を把握していることから、投稿に用いられたIPアドレスから、投稿者を特定することが可能です。そこで、プロバイダ宛に、②でプロバイダに提供されたIPアドレスの契約者情報を開示するように求めるのが、プロバイダへの開示命令の申立てです。
申立て方法は、①のInstagram宛に開示命令を申し立てる場合とほぼ同じです。
なお、この申立てを行う際は、プロバイダへの開示命令の申立ての際には、プロバイダに対し、アクセスログの保存期間を過ぎてもログを消さないよう求める消去禁止命令の申立ても同時にしておくことをお勧めします。消去禁止命令の申立てをしないと、審理の途中でプロバイダのログの保存期間が経過してしまい、プロバイダ側で投稿者を特定できなくなる、といったことを防ぐことができます。
⑤InstagramからプロバイダへのへのIPアドレスの提供
プロバイダに対して発信者情報開示命令を申し立てたら、申立てを行った旨をInstagramに通知します。
この通知をすることにより、Instagramからプロバイダ宛にIPアドレス等が通知されます。
⑥発信者情報の開示
裁判所は、申立書やプロバイダ側の主張を踏まえ、投稿に権利侵害があるかを判断します。裁判所が権利侵害を認め、その他開示命令の発令の要件を満たしていると判断すれば、プロバイダに対し、契約者情報を開示せよ、といった形で開示命令が発令されます。
開示命令が発令されると、数週間から1か月程度で、プロバイダから投稿者の情報が開示されます。
3 ログの保存期間との関係
多くのプロバイダでは、アクセスログの保存期間が決められており、その保存期間は概ね3か月から半年程度と言われています。この期間を過ぎてしまうと、プロバイダ側ではログが消去されてしまい、投稿者の特定ができなくなってしまいます。投稿からの時間の経過からして、ログの保存期間に余裕がないと思われる場合には、IPアドレスの開示仮処分という手続きを行うことも検討しましょう。X(Twitter)の例ですが、開示仮処分の手続きは、以下のコラムで詳しく解説しています。
4 投稿者が特定できたら
発信者情報が開示され、相手の住所や氏名が特定できたら、相手に対して、投稿の削除や損害賠償を求めることが考えられます。また、相手の投稿が名誉棄損(刑法第230条)など刑法上の犯罪にあたる場合には、刑事告訴を行うことも検討するとよいでしょう。慰謝料請求については、以下のコラムもご参照ください。
誹謗中傷の場合:
肖像権侵害の場合:
なりすましの場合:
プライバシー権侵害の場合:
5 Instagramの誹謗中傷でよくある質問
DMで悪口を言われているが、開示請求できる?
発信者情報の開示「特定電気通信」による情報の流通がなされた場合に認められます。
「特定電気通信」とは、簡単にいうと不特定多数の人に受信される通信をいうため、DMを対象とした開示請求は難しいでしょう。
ストーリーズだと開示請求はできない?
Instagramには、24時間で投稿が消えるストーリーズという機能があります。この投稿についても、開示命令の要件を満たしていれば開示が可能な場合があります。
ただし、すぐに投稿が消えてしまうので、必ず投稿の証拠(URLや内容が分かるスクリーンショットやPDF)を保存しておきましょう。
必ず開示が認められる?
開示が認められるか否かについては、投稿がどのような権利侵害に該当するかを慎重に判断する必要があります。開示が認められるかの見通しをつけたい場合には、弁護士に相談することをお勧めします。
アカウント情報のうち、電話番号しか分からなかった場合どうすればよい?
ログの保存期間の関係でIPアドレスから投稿者が特定できず、アカウント情報の開示のみ開示がされた場合でも、Instagramが投稿者の住所まで把握していることはほぼありません。この場合には、電話番号から投稿者を特定するために、弁護士会照会(弁護士が依頼を受けた事件について、証拠や資料を収集し、事実を調査するなど、その職務活動を円滑に行うために設けられた制度(弁護士法第23条の2))により、携帯電話会社に、該当の電話番号を利用している者の住所や氏名を照会する必要があります。弁護士でないと弁護士会照会はできないため、この場合は弁護士に相談しましょう。
6 まとめ
Instagramで誹謗中傷をされている場合、早めの対処が重要ですが、開示命令の手続きは、Instagramへの請求と、プロバイダへの請求と2段階に分かれており、手続きも複雑で、ご自身のみで全て行うのは難しい場合も多いでしょう。当事務所には、都内大手IT企業にて企業内弁護士として勤務していた経験のある弁護士が所属しており、Instagramの誹謗中傷について投稿者を特定し、高額な慰謝料を獲得した経験もございます。Instagramの誹謗中傷でお悩みの方は、問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。
