SNSで個人情報を無断で投稿されてしまったり、犯罪を犯した事実(前科)を投稿されてしまっている場合には、プライバシー侵害を理由に投稿の削除や損害賠償を求めることのできる可能性があります。
そこで、本記事では、どのような場合にプライバシー侵害が成立するのかや、プライバシー侵害を受けている場合の対処法について解説します。
目次
1 プライバシー侵害とは?
プライバシー権とは、一般に「自己の私生活上の事柄をみだりに公開されない権利」と解釈されています。法律に直接明記はされていませんが、憲法第13条の幸福追求権を根拠に、憲法上も保障される基本的人権であると解されています。
2 プライバシー侵害が成立する要件
プライバシー侵害は、一般に、以下の3つの要件を全て満たした情報を無断で公開した場合に成立すると考えられています。
| ①私生活上の事実又は私生活上の事実らしく受け取られる事実であること ②一般人の感受性を基準として、他人に知られたくないと考えられる事実であること ③いまだ他人に知られていない事実であること |
例えば、どこに住んでいるかといった情報は、個人の私生活に関する事実であり、通常、第三者に知られても良いという人は少ないでしょうから、住所を既に本人が公にしているといった例外的な場合を除いては、プライバシーに関する事実に該当し、無断で投稿した場合には、プライバシー侵害が成立する可能性が高いでしょう。
その他に、以下のような情報についても、プライバシー情報に該当すると考えられています。
| ・前科に関する情報 ・病歴 ・顔写真 ・指紋データ ・性的嗜好 |
他方で、例えば「Aさんはバスケットボールが趣味である」といった情報や、インターネット上で本人が既に公開している情報を投稿することは、プライバシー侵害にならない可能性が高いでしょう。
3 プライバシー侵害を受けている場合の対処法
SNSやインターネット上でプライバシー情報を投稿されてしまっている場合には、以下のような形で削除を求めることを検討しましょう。プライバシー情報が掲載され続けることにより、多くの人が閲覧し、被害が拡大してしまうので、早めの対処がお勧めです。
| ①本人に削除を求める ②サイトの管理者にウェブフォーム等から削除依頼をする ③一般社団法人テレコムサービス協会が作成したガイドラインに基づいて削除請求をする ④裁判手続で削除を請求する |
①本人に削除を求める
投稿した相手が誰であるか認識できている場合や、DM等で連絡が取れる場合には、本人に連絡して任意に削除をしてもらうことが考えられます。
単に削除を要求するのではなく、法的に削除が認められる可能性があることを説明して削除を促すと良いでしょう。
②サイトの管理者にウェブフォーム等から削除依頼をする
多くのSNSや掲示板では、違法な投稿の通報や削除請求のためのフォームを設けています。比較的簡単に削除依頼ができる点がメリットですが、削除までに時間を要することが多い、削除するか否かはサイト管理者の判断に委ねられてしまうため、必ずしも削除されるわけではないというデメリットもあります。
③一般社団法人テレコムサービス協会が作成したガイドラインに基づいて削除請求をする
一般社団法人テレコムサービス協会とは、インターネットサービスのプロバイダ等が所属している団体です。いわゆる「テレサ書式」という、削除請求の書式が公開されていますので、必要事項を記入して削除依頼をすることができます。
ただし、こちらも必ず削除がされるわけではないといったデメリットがあります。
④裁判手続で削除を請求する
①~③の方法を試しても削除がされない場合などには、裁判手続きを利用することを検討しましょう。具体的には、裁判所を通じた手続きである仮処分の申立てをすることをお勧めします。仮処分の方法を用いることにより、通常の裁判手続きに比べて早く手続きを進めることができます。
削除請求については、以下のコラムで詳しく解説していますので、ご確認ください
4 プライバシー侵害の慰謝料請求は可能?
プライバシー侵害は、民法上の不法行為に該当するため、プライバシー侵害を行った相手に対して損害賠償請求をすることができます(民法第709条・710条)。通常は、プライバシー侵害により被った精神的損害への賠償として、慰謝料を請求するのが一般的です。
プライバシー侵害の慰謝料の相場は、投稿の内容や悪質性等の事情を考慮して決定されますが、一般的にはおよそ10万円~50万円程度であることが多いです。ただし、例えば無断で住所を投稿されたことにより引っ越しを余儀なくされたといったケースでは、引っ越し費用等の経済的損害も請求できる可能性があるでしょう。
相手に対して慰謝料を請求する場合には、まずは投稿者が誰であるかを特定することが必要となります。投稿者が判明していない場合には、発信者情報開示請求により、相手の住所や氏名の情報を確認することが必要です。
発信者情報開示請求については、以下のコラムで詳しく解説しています。
投稿した相手が特定できた場合には、相手に対して内容証明郵便を送付する・裁判を起こすといった形で慰謝料を請求することが考えられます。
なお、プライバシー侵害のご相談でよくあるのが、元交際相手が交際中に知り得た事実を投稿しているというケースです。プライバシー侵害については、刑法上の犯罪には該当しませんが、同時に元交際相手から執拗に連絡を受けている、脅迫を受けているといった場合には、ストーカー行為等の規制等に関する法律違反や脅迫罪(刑法第222条)に該当する可能性があるので、警察に相談することも検討しましょう。
5 ワンポイント捕捉:肖像権侵害について
既に述べているとおり、公開されている情報については、プライバシー情報といえないため、SNSで自身が公開しているプロフィール写真等を無断で転載されても、プライバシー侵害とはいえない可能性が高いです。しかし、このような場合でも、肖像権侵害については主張できる可能性があります。肖像権とは、自己の容貌等を無断で撮影されたり、撮影された撮影された写真をみだりに公表されない権利をいいます。
プライバシー侵害といえない場合でも、肖像権侵害が主張できないか、弁護士に相談してみるとよいでしょう。
なお、肖像権侵害については、以下のコラムで詳しく解説しています。
6 まとめ
プライバシー侵害を受けている場合、自身の私生活にも影響ができないことから、一刻も早く対処することが必要です。投稿されている内容がプライバシー侵害に該当するのか、しないとしても他に主張できる権利はないのかといった判断は、ご自身のみでは難しい場合も多いでしょうから、お早めに弁護士に相談することをお勧めします。当事務所には、東京都内大手IT企業にて企業内弁護士として勤務した経験のある弁護士が所属しており、プライバシー侵害を理由に仮処分手続きにおいて、投稿記事の削除を認めさせた経験も豊富です。お悩みの方は、問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。
