「元交際相手から金銭を要求されている」、「お金を払わなければ裁判すると言われている」、「一度関係を持った人からつきまとわれている」、「不倫相手から奥さんにバラすと脅されている」など、近年では男女トラブルの相談が多いです。
本稿では、脅迫やストーカー被害などの男女トラブルに遭っている場合の対処法について、解説いたします。
目次
1. 金銭の要求を受けている場合
具体例
元交際相手や不倫相手から金銭を要求されており、これを拒否すると、「親に言う」、「奥さんに不倫の事実をバラす」、「職場に連絡する」、「裁判する」、「詐欺罪で警察に通報する」、「知り合いに弁護士がいるから、弁護士に頼んで財産を差し押さえる」、「今から家に行く」などと言われ、困っているといった相談は多いです。
このような行為は、恐喝罪(刑法第249条)や脅迫罪(刑法第222条)に該当する可能性があります。
私の経験上、脅迫を伴う金銭請求の場合、その要求に法的根拠がないことがほとんどです。
例えば、以下のようなケースでは、金銭請求に法的根拠がなく、仮に訴訟(裁判)になった場合でも、請求は認められません。
- 交際期間中に支払ったお金(飲食代、プレゼント代、旅行代、家賃等)を返せ※ただし、金銭の返還や立替えの合意をしている場合を除く)
- 浮気したから慰謝料を支払え※婚姻、事実婚、法的保護に値する婚約が成立している場合を除く
- 妊娠・中絶したから慰謝料を支払え※不同意性交の場合を除く
- 婚約破棄に当たるから慰謝料を支払え※法的保護に値する婚約が成立している場合を除く
他方、以下のようなケースでは、金銭請求に法的根拠があることが多いです。
- お金を借りていた
- お金を立て替えてもらった(例:元交際相手と旅行に行き、元交際相手が旅行費全額を支払ったが、後ほど半額を支払うことを約束していた)
- 相手方に暴行してしまった
- 同意のない性交渉やわいせつ行為をしてしまった
- 法的保護に値する婚約が成立していたが、婚約を破棄し、かつ、婚約破棄に正当な理由がない場合
もっとも、上記のようなケースでも、請求金額が過大であり、かつ、脅迫が伴っている場合には、恐喝罪(刑法第249条)や脅迫罪(刑法第222条)に該当する可能性があるので、相手方の請求金額が妥当であるか、弁護士に相談することをお勧めします。
絶対にやってはいけないこと
金銭請求を受けている場合に、絶対にやってはいけないことは、安易にお金を払ってしまうことです。
脅迫を受けていると、脅迫から逃れたいという精神状態のもと、お金を支払ってしまう方が少なくありません。
しかし、相手方が脅迫を伴う金銭請求をしている場合、お金を払っても、名目を変えて追加の金銭請求をしてくることが多いです。
例えば、「交際期間中に支払ったお金を返せ」と言われ、お金を払ったら、「支払が遅れた分の利息も払え」、「支払が遅れたせいで精神病にかかったから慰謝料を払え」などです。
金銭請求に法的根拠がある場合や早期・円満解決の観点から解決金として金銭を支払って終わらせたいという場合に、金銭を支払うという選択は十分に考えられますが、仮に金銭を支払う場合には、安易に支払ってしまうのではなく、必ず清算条項(これ以上の金銭請求をしないことを確認する条項)を含めた書面を交わすことが重要です。
2. ストーカー被害を受けている場合
「一日に何十件もLINE、メール、電話がくる」、「自宅や職場の前で待ち伏せされた」、「自宅や職場に押しかけてきた」、「後をつけられた」、「会ってくれないなら実家に行き親にすべてを話すと言われた」など、ストーカー被害に遭っているという相談も多いです。
上記のような行為は、ストーカー行為等の規制等に関する法律に違反する可能性があり、同法に違反した場合には刑事罰の対象となります。
ストーカー行為等の規制等に関する法律第2条1項は、ストーカー行為の定義を以下のように定めています。
第二条
この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。
- つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その現に所在する場所若しくは通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。
- その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
- 面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。
- 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
- 電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、文書を送付し、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること。
- 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
- その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
- その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、その性的羞恥心を害する文書、図画、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この号において同じ。)に係る記録媒体その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録を送信し若しくはその知り得る状態に置くこと。
上記の行為に該当する可能性がある被害を受けている方は、該当性の有無について、弁護士に相談すると良いでしょう。
3. 対処法
相手にしないことが重要
脅迫やストーカー被害を受けている場合、怖い、何をされるか分からないという心境から、相手方からの連絡に返信してしまったり、面会の要求に応じてしまったり、金銭を支払ってしまうという方が多いです。
しかし、相手方からの連絡や要求に応じて脅迫やストーカー行為が治まるというケースはほとんどありません。
むしろ、相手方の要求や脅迫がエスカレートして、更に精神的に追い詰められるということが多いです。
脅迫やストーカー行為を繰り返す相手方に対する基本的な対応方法は、相手にしないことです。
具体的には、「もう連絡しないでください」、「会うつもりはありません」、「金銭の要求には応じられません」とだけ返信して、その後は連絡が来ても無視する(着信拒否やLINEをブロックする)という対応がベストです。
もっとも、無視することで、相手方が危害を加えてくるのではないかという恐怖を感じる方は多いと思います。
そのような場合には、後述する警察や弁護士に警告をしてもらうことを検討しましょう。
警察に相談する
脅迫やストーカー行為を繰り返す相手方が危害を加えてくることを100%止める方法はありません。
しかし、第三者に警告をしてもらうことにより、相手方が危害を加えてくる可能性を減少させることはできます。
まず、抑止力のある第三者として考えられるのは、警察です。
脅迫やストーカー被害を受けている場合、警察に相談ないし被害届を提出することで、警察が相手方に警告をしてくれたり、刑事事件化して捜査を開始してくれることがあります。
もっとも、警察が対応してくれるか否かは、警察の判断になるため、相談ないし被害届を提出したとしても、対応してくれなかったり、被害届を受理してもらえないことは少なくありません。
なお、相手方が自宅や職場に押しかけてきて、危険を感じた場合には、すぐに110番通報をしてください。
そのような場合には、警察官が臨場し、相手方に警告をした上で、帰らせてくれます。
弁護士に依頼する
警察に対応してもらえなかった場合、弁護士に依頼し、相手方に警告してもらうことを検討すると良いでしょう。
警察と異なり、弁護士は依頼を受ければ、相手方へ警告文を送付するなどの対応をしてくれます。
また、法律の専門家である弁護士から、「今後、依頼者本人、その親族又は勤務先に直接連絡ないし接触をした場合には、刑事告訴や訴訟提起等の法的措置を取る可能性がある」と警告されることで、相手方が危害を加えることの強い抑止力になります。
さらに、弁護士に依頼する以前は警察が対応してくれなかった場合でも、弁護士が介入することで、弁護士が警察とやりとりをし、警察が対応してくれるようになることもあります。
弁護士に依頼する場合、費用はかかりますが、このように柔軟に対応してもらえて、かつ、相手方に対する強い抑止力にもなるので、メリットは大きいです。
4. まとめ
元交際相手や不倫相手から、脅迫やストーカー被害を受けている場合、精神的に追い詰められている方が多いと思います。
そのような場合、誰かに話を聞いてもらうだけでも精神的に楽になることがありますので、脅迫やストーカー被害を受けている方は、まずは弁護士に相談してみることをお勧めします。
当事務所は、男女トラブルに注力しており、脅迫やストーカー被害の対応の実績と経験は豊富です。
当事務所への相談をご希望の方は、問い合わせフォームよりご連絡ください。
なお、元交際相手や不倫相手からの脅迫・ストーカー被害については、以下のコラムでも解説しておりますので、ご参照ください。
