不貞行為を理由とする慰謝料請求を弁護士に依頼した場合、どのくらいの費用がかかるのかと疑問に思う方もいらっしゃると思います。
近年、不貞慰謝料案件を取り扱う事務所は増加傾向にあり、弁護士費用の体系や金額も様々です。
本稿では、不貞慰謝料案件の弁護士費用の相場について、解説いたします。
目次
1. 不貞慰謝料とは
婚姻関係にある者が配偶者以外の者と肉体関係を持つことを不貞行為といいます。
不貞行為は、民法上の不法行為に該当するため、不貞行為を行った当事者双方に配偶者への慰謝料の支払義務が生じます。
なお、不貞行為は、民法の定める法定離婚事由にも該当するため(民法第770条1項1号)、配偶者は、不貞慰謝料に加え、離婚も請求することができます。
不貞慰謝料の詳細については、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
2. 費用体系
不貞慰謝料の弁護士費用の体系は、いわゆる着手金・報酬型を採用している事務所が多いです。
着手金・報酬型とは、案件処理に着手する際に一定額の着手金を支払い、案件が終了した時点で一定の条件や成果に応じた報酬金を支払うというものです。
近年では、完全成功報酬型、すなわち、着手金を0円とし、案件終了時に一定の条件を満たしていたり成果を達成することができていた場合に限り、報酬金が発生するという費用体系を採用している事務所も増えています。
3. 弁護士費用の相場
請求側
着手金
不貞慰謝料の請求を依頼した場合の着手金の相場は、10万〜30万円程度です。
裁判外での交渉が決裂して訴訟に移行する場合に、追加の着手金が生じることもあります(10万円程度)。
また、前述のとおり、着手金を0円とする事務所も増えています。
ただし、着手金は0円ですが、「事務手数料」や「みなし実費」などという名目で一定の金額を支払うことになっている事務所も散見されますので、依頼する際にはきちんと委任契約書を確認しましょう。
報酬金
不貞慰謝料の請求側の報酬金は、経済的利益(相手方から回収した金額)の10〜20%が相場です。
回収金額をベースにしている事務所が多いですが、実際に回収ができなくても、裁判で認容判決(慰謝料請求を認める内容の判決)を獲得した場合等に報酬金が発生する事務所もあるので、委任契約締結時には、回収金額がベースか、認容金額がベースかを確認するようにしましょう。
また、完全成功報酬型の場合、着手金が0円である代わりに報酬金が通常よりも高額に設定されていることが多いです。
完全成功報酬型の報酬金の相場は、20%〜30%程度になります。
調査費用
不貞慰謝料を請求する側の場合、不貞相手の氏名や住所が分からないということは少なくありません。
このような場合、弁護士は、職務上請求(地方自治体に住民票や戸籍謄本等を請求できる権限)や弁護士会照会(所属弁護士会を通じて企業等に契約者情報の照会をすることができる権限)などにより、不貞相手の氏名や住所を特定することができる場合があります。
事務所によっては、上記のような調査が必要な場合に、調査費用を請求されることがあります。
調査費用の相場は、調査の内容にもよりますが、1万〜10万円程度が相場です。
なお、不貞相手の調査については、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
不倫相手の名前や住所を調べることはできる?対応方法を弁護士が解説
書面作成代行
交渉や裁判の代理業務を依頼するのではなく、不貞相手に対する通知書や合意書、裁判上の書面(訴状や準備書面等)の作成のみを依頼する方もいらっしゃいます。
書面の作成代行の場合、弁護士が代理で交渉や裁判手続を行うことはないので、書面の作成以外はご自身で行っていただく必要があり、書面に弁護士名を記載することもできませんが、代理業務を依頼する場合と比較して、弁護士費用を低額に抑えることができます。
書面作成代行を弁護士に依頼した場合の相場は、書面の内容や文量にもよりますが、1通当たり概ね5万〜15万円程度です。
日当
「日当」とは、弁護士が訴訟の期日に出頭するなど事件処理のために事務所外で活動をした際に生じる費用です。
近年では、裁判期日がウェブ会議や電話会議で実施されることが増えているところ、ウェブ会議や電話会議の場合には日当が生じないとしている事務所もあります。
日当の相場は3万〜5万円ですが、遠方の裁判所に出頭する場合には、移動時間によりこれ以上の金額が生じることもあります。
実費
弁護士費用と異なりますが、裁判所に納める収入印紙・郵券代、内容証明郵便などの郵送代、戸籍謄本・住民票を取得するために地方自治体へ支払う手数料など、事件処理のために生じた費用は、実費として請求されることがあります。
事務所によっては、実費は着手金に含むとしていたり、みなし実費として一定額を支払うことで実費を免除していることもあるので、依頼する際には実費の処理についてきちんと確認するようにしましょう。
被請求側
着手金
不貞慰謝料を請求されている場合の着手金の相場は、10万〜30万円程度です。
着手金を0円としている事務所は、不貞慰謝料の請求側に限定していることも多く、被請求側で完全成功報酬型を採用している事務所は少ないです。
なお、不貞行為を行った夫婦の一方が配偶者から慰謝料を請求されている場合、離婚も併せて請求されているケースが多いです。
上記着手金の相場は、不貞慰謝料を請求されている場合にその減額交渉を依頼した場合の費用ですので、離婚も請求されている場合には、上記相場よりも弁護士費用が高額になる可能性が高いです。
報酬金
不貞慰謝料の被請求側の報酬金は、経済的利益(相手方の請求額から減額できた金額)の10〜20%が相場です。
相手方の請求額が法外である場合は(例えば1000万円など)、請求額を300万円とみなしたり、報酬金の額に上限を設けるなどの対応をしてもらえるのが一般的ですので、委任契約締結前に弁護士に確認するようにしましょう。
日当等
日当及び実費については、前述した請求側と同じになります。
4. まとめ
不貞慰謝料案件を弁護士に依頼する場合には、弁護士費用の体系や金額、内訳、対応範囲などについて、弁護士から説明を受けた上で、委任契約書の内容をきちんと確認することが重要です。
説明を受けなかったり、契約書の確認を怠ると、想定していた以上の弁護士費用がかかってしまい、トラブルにも発展しかねません。
当事務所は、弁護士費用について詳細かつ明確に説明した上でご依頼いただくか否かを検討していただくよう心がけております。
不貞慰謝料について、相談をご希望の方は、問い合わせフォームよりご連絡ください。