離婚事件の弁護士費用の相場は?費目ごとに解説
配偶者と離婚したい、配偶者から離婚を求められているという場合に、ご自身で解決することが難しく、弁護士への依頼を検討されている方もいらっしゃると思います。
以前は弁護士報酬基準により弁護士費用が定められていましたが、現在は同基準が廃止され、弁護士費用は自由に設定できることになっています。
弁護士費用の設定が自由になったことで、弁護士により費用が異なるようになり、妥当な金額が分からないという方が増えました。
本稿では、離婚事件の弁護士費用の相場について解説いたします。
目次
1. 依頼の種類
法律事務・裁判手続の代行業務
相手方との交渉(離婚協議)、調停・訴訟などの裁判手続のすべてを弁護士に代行してもらう方法です。
書面の作成、裁判所とのやりとり、裁判所への出頭も弁護士に一任することができるので、当事者の負担が最も少ない方法です。
弁護士に依頼する場合はこの方法で依頼するケースが多いです。
書面の作成代行
書面の作成のみを弁護士に依頼する方法です。
書面の作成のみですので、前述した法律事務・裁判手続の代行よりも弁護士費用を抑えられますが、相手方との交渉、裁判所とのやりとり、裁判所への出頭は自身で対応する必要があります。
また、この場合、「代理人」、つまり、弁護士が代わりに交渉等を行う地位にないことから、書面に弁護士名を載せることができないのが一般的です。
相手方との交渉や裁判手続が必要ない時、例えば、既に配偶者と離婚条件について合意ができている時に離婚協議書や公正証書の作成のみを依頼したいといった場合に、多く利用される方法です。
顧問契約
月額の顧問料を支払うことで継続的に弁護士にアドバイスをもらうことができる方法です。
一般的には企業法務で利用されることが多い類型ですが、弁護士に法律事務・裁判手続の代行を依頼するまでもないというケースで利用されることもあります。
具体的には、配偶者と裁判外で協議を行っている中で配偶者から提示された条件が妥当か否かを判断してもらいたいという場合や継続して子との面会交流を実施しているようなケースにおいて面会交流の方法等について適宜アドバイスをもらいたいといった場合に利用されることがあります。
2. 弁護士費用の相場
相談料
「相談料」とは、弁護士に法律相談をする際に生じる費用です。
相談料の相場は、30分当たり5000円〜1万円としている事務所が多いですが、近年では、初回の相談は無料としている事務所も多いです。
弁護士に相談をするのみですので、弁護士が代わりに法律事務・裁判手続を行うことはなく、書面の作成やリーガルチェックをすることもできません。
法律事務・裁判手続の代行業務の場合
着手金
「着手金」とは、弁護士が代行業務に着手するに際し支払が必要となる費用です。
着手金の支払が完了してから、弁護士が代行業務を開始するのが一般的です。
着手金の相場は、以下のとおりです。
協議離婚(裁判外)の交渉 20万〜30万円程度
離婚調停 30〜40万円程度
離婚訴訟 40〜50万円程度
報酬金
「報酬金」とは、ある一定の条件を満たした場合に生じる費用のことです。
例えば、離婚事件の場合、「離婚が成立した場合」、「相手方から慰謝料や財産分与などの離婚給付金を回収できた場合」などの条件が付されることが多いです。
報酬金の相場は、以下のとおりです。
離婚成立時又は相手方との合意成立時(協議離婚の場合) 20万〜30万円程度
離婚成立時又は相手方との合意成立時(調停・裁判離婚の場合) 30万〜50万円程度
相手方から金員(慰謝料・財産分与・養育費等)を回収できた時 回収した金額の10〜16%
日当
「日当」とは、弁護士が調停ないし訴訟の期日に出頭するなど事件処理のために事務所外で活動をした際に生じる費用です。
近年では、裁判期日がウェブ会議や電話会議で実施されることが増えているところ、ウェブ会議や電話会議の場合には日当が生じないとしている事務所も一定数あります。
また、協議離婚の交渉の場合、相手方と事務所外で交渉を行った場合に日当が生じると定めている事務所が多いです。
日当の相場は3万〜5万円ですが、遠方の裁判所に出頭する場合には、移動時間によりこれ以上の金額が生じることもあります。
実費
弁護士費用と異なりますが、裁判所に納める収入印紙・郵券代、内容証明郵便などの郵送代、戸籍謄本・住民票を取得するために地方自治体へ支払う手数料など、事件処理のために生じた費用は、「実費」として請求されることがあります。
事務所によっては、実費は着手金に含むとしていたり、みなし実費として一定額を支払うことで実費を免除していることもあるので、依頼する際には実費の処理についてきちんと確認するようにしましょう。
書面の作成代行の場合
弁護士に書面の作成代行を依頼した場合の相場は、書面の内容や文量にもよりますが、概ね3万〜10万円となります。
離婚協議書の作成代行を依頼した場合の相場は3万〜5万円程度、公正証書の作成と公証役場への出頭代行を依頼する場合の相場は10万円程度が相場となります。
また、離婚協議書や公正証書案のリーガルチェックのみの場合は、1万〜3万円程度が相場となります。
なお、離婚協議書と公正証書については、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
顧問契約の場合
顧問契約の相場は、月額3万〜5万円程度です。
多くの事務所では、顧問弁護士として稼働する時間に上限を設けていますので、稼働時間を超えた場合には追加の費用を支払う必要があります。
3. 弁護士に依頼する場合の注意点
相場より高額でないかを確認する
離婚事件の弁護士費用の相場は、上記のとおりです。
相場よりも弁護士費用が高額な場合には、他の法律事務所にも相談して、相見積もりを取ってみると良いでしょう。
委任契約書の内容をきちんと確認する
弁護士に依頼する場合、委任契約書を締結します。
「委任契約書」とは、弁護士への依頼内容や弁護士費用などを定める書面です。
委任契約書の中に、説明がなかった費用が記載されていることもあるので、委任契約書の内容をきちんと確認し、疑問点や不明点がある場合には必ず弁護士に確認してから、委任契約書を締結するようにしましょう。
経験上、「日当が高額であった」、「会議費(弁護士と打合せをする場合に別途費用が生じる)や書面代(書面を作成する場合に別途費用が生じる)が定めてあった」などの理由で、想定していた費用よりも弁護士費用が高額になってしまったというケースも少なくありません。
想定外の費用が生じてしまったという事態を避けるためにも、委任契約書の確認は絶対に怠らないようにしましょう。
離婚以外の手続が必要となった場合の費用を確認する
離婚事件の場合、婚姻費用分担や面会交流など、離婚に付随する別の手続への対応が必要となることがあります。
離婚の手続のみを依頼したものの、事後的に婚姻費用分担や面会交流など他の手続への対応が必要となった場合、別途弁護士費用が生じる可能性があります。
そのような場合に、別途生じる弁護士費用を確認していないと、想定していた以上の費用が生じてしまうおそれがあります。
離婚に付随する別の手続への対応が必要となる可能性がある場合には、事前に別の手続を依頼する場合の費用を確認するようにしましょう。
4. まとめ
ここまで離婚事件の弁護士費用の相場について解説してきましたが、事務所によって弁護士費用は様々です。
弁護士への依頼を検討するに当たっては、きちんと弁護士費用や依頼する内容を確認し、また、できれば複数の事務所に相談をした上で、依頼する弁護士を選定することをお勧めします。
当事務所は、ホームページにおいて弁護士費用を明示しており、ご相談の際には弁護士費用を分かりやすくかつ丁寧に説明するよう心がけております。
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