婚姻中に他の異性と肉体関係を持つことは不貞行為に該当し、原則として慰謝料請求の対象となります。
しかし、配偶者と別居した後に肉体関係を持った場合には、婚姻関係が破綻した後の不貞行為であると認められ、慰謝料請求が認められないことがあります。
本稿では、別居後の不倫について、慰謝料請求が認められるケースと認められないケースを解説いたします。
目次
1 不貞行為が不法行為に該当しないことがある
「不貞行為」とは、婚姻期間中に自己の意思で他の異性と肉体関係を持つことをいいます。
不貞行為は、原則として民法上の不法行為に該当し、配偶者と不倫相手に対する慰謝料請求が可能です(民法第709条、同法第710条)。
しかし、民法上の不法行為が成立するためには、違法行為があること、損害(精神的損害を含む)が生じたこと、違法行為と損害との間に相当因果関係があること(違法行為により損害が生じることが相当といえること)が必要です。
不貞行為は違法行為に該当しますが、不貞行為より前に婚姻関係が破綻していた場合には、不貞行為と精神的損害との間に相当因果関係が認められないため、不法行為は成立せず、慰謝料請求は認められないことになります。
判例も、婚姻関係が既に実質的に破綻していたときは、特段の事情がない限り、不法行為責任を負わないと判断しています(最判平成8年3月26日)。
2 婚姻関係の破綻が認められやすいケース
①別居期間が長期に及ぶ場合
別居期間が長期間に及んでいる場合には、婚姻関係が実質的に破綻していると認められやすい傾向にあります。
具体的には、別居期間が1年以上の場合には婚姻関係の破綻が認められる可能性が高くなるでしょう。
ただし、実務上、別居期間が何か月であれば婚姻関係の破綻が認められるという明確な基準はなく、婚姻期間や別居に至る経緯等を総合的に考慮して、婚姻関係破綻の有無が判断されることが多いです。
また、後述する単身赴任などの離婚を前提としていない別居の場合や離婚事由に該当し得ない理由による別居の場合には、婚姻関係の破綻が認められない可能性が高い点には注意が必要です。
なお、民法には、離婚事由として「婚姻を継続し難い重大な事由」が定められています(民法第770条1項4号)。
婚姻を継続し難い重大な事由が認められるか否かの判断基準として、婚姻関係が破綻しているか否かが挙げられますが、離婚における婚姻関係の破綻が認められる別居期間の基準は3〜5年といわれています。
本稿で解説している不貞行為時の婚姻関係の破綻と、離婚における婚姻関係の破綻では別居期間の基準が異なるので、注意しましょう。
②別居の理由が配偶者の不貞や身体的DVの場合
配偶者の不貞行為や身体的DVを理由に別居をするに至った場合には、婚姻関係の破綻が認められる可能性が高いです。
配偶者の不貞行為や身体的DVの証拠がある場合には、別居期間が短い場合でも、婚姻関係の破綻が認められる可能性が高いでしょう。
③離婚調停・離婚訴訟中の場合
配偶者と離婚調停・離婚訴訟中の場合には、婚姻関係の破綻が認められやすい傾向にあります。
特に、配偶者の方から離婚調停の申立て、離婚訴訟の提起をしている場合には、婚姻関係の破綻が認められる可能性が高くなります。
3 婚姻関係の破綻が認められにくいケース
①別居期間が短い場合
別居期間が短い時点で不貞行為があった場合、婚姻関係が実質的に破綻しているとは認められず、慰謝料請求が認められやすい傾向にあります。
具体的には、別居期間が3か月未満の場合には、婚姻関係の破綻が認められない可能性が高いです。
②離婚を前提としていない別居の場合
別居の理由が単身赴任や里帰り出産など離婚を前提とした理由でない場合には、婚姻関係が破綻しているとはいえないため、慰謝料請求が認められます。
③離婚事由に該当し得ない別居の場合
別居の理由が民法上の離婚事由(民法第770条1項)に該当し得ない理由による別居の場合には、婚姻関係の破綻が認められにくい傾向にあります。
例えば、「何となく一緒にいるのが嫌だから」、「他に好きな人ができたから」、「実家の方が住みやすいから」などの理由で別居をしている場合には、婚姻関係の破綻が認められない可能性が高いでしょう。
④別居中に夫婦・親族間の交流がある場合
別居中に夫婦間や親族間の交流がある場合には、婚姻関係の破綻が認められにくい傾向にあります。
離婚を前提に別居をしている場合、あまり多くないケースではありますが、配偶者と一緒に食事をしたり、配偶者の実家に新年の挨拶に行っているような場合には、婚姻関係の破綻が認められない可能性が高くなります(私の経験上、離婚協議をするために会った際に食事をした、別居はしているもののまだ離婚は成立していないため配偶者の親族との交流は継続していたというケースはありました)。
また、別居後も家計が一緒、例えば、別居後も夫の給与口座を妻が管理し、給与口座から生活費等の支出がなされているような場合にも、婚姻関係の破綻が認められにくくなります。
4 まとめ
前述したとおり、実務上、別居期間が何か月であれば婚姻関係の破綻が認められるという明確な基準はなく、婚姻期間や別居に至る経緯等を総合的に考慮して、婚姻関係破綻の有無が判断されます。
婚姻関係が破綻しているか否かをご自身で判断することは難しい場合がありますので、別居後の不貞行為について慰謝料請求を検討されている方、慰謝料請求を受けている方は、弁護士に相談し、婚姻関係の破綻が認められるか否かについて意見を聞いてみると良いでしょう。
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