配偶者が不倫をしていることに気づいた場合、多くの方が驚き、そして不安な気持ちになるでしょう。
どうしたらいいか分からないという方も多いと思います。
本記事では、配偶者が不倫をしている場合にどのような対応をすべきかについて、解説します。
目次
1. 不貞行為とは?
配偶者がいるにも関わらず、他の異性と性的関係にいたることを、法律用語では「不貞行為」といいます。
よく、配偶者が他の異性と食事に行った、手をつないだ、キスをした、として「不倫ではないか」というご相談をいただくことがありますが、慰謝料等の請求をする場合には、「不貞行為」に該当する必要があります。
よくいう「浮気」や「不倫」については、人によってどこからが浮気や不倫になるかは様々でしょう。
例えば、異性と2人だけで食事に行っただけでも不倫に当たると考える人もいるでしょう。
しかし、不貞行為については、「肉体関係の有無」を基準に判断します。
そのため、例えば他の異性とキスをしたとしても不貞行為とは認められません。
もちろん、夫や妻が他の異性とキスをすることを許せないと感じる人は多いでしょうし、一般的には、結婚をしている場合に他の異性とキスをすることが“よくないこと”であるという感覚をお持ちの方は多いでしょう。
しかし、「不貞行為」についてはあくまで肉体関係を基準に判断し、「不貞行為」があった場合に、相手に本記事で述べるような請求をすることができることになります。
2. 配偶者が不貞行為をしていることに気づいた場合にすべきこと3選
①不貞行為の証拠をつかむ
配偶者が不貞行為をしていることに気づいた場合にまずすべきことは、不貞行為の証拠をできるだけ集めることです。
不貞行為の証拠がない場合には、相手が不貞行為をしたことを認めなければ、話が平行線になってしまうことが予想されます。
また、証拠がないままに「不貞をしているのではないか」と配偶者に確認した場合、逆に相手に証拠となるような資料やメッセージを消去、隠匿などされてしまうことも懸念されます。
まずは、冷静に、相手の不貞行為の証拠を集めましょう。
「1」で述べたとおり、不貞行為とは肉体関係がある場合に認められるものですから、肉体関係があることを示す証拠が必要となります。
例えば他の異性と一緒に宿泊を伴う旅行に行ったことを示す写真や宿泊施設の領収書、メールやSNS等で性的関係があったことをほのめかす会話をしている場合にはそのトーク履歴などが考えられます。
なお、メールやSNSの場合には、よほど直接的な表現ではない限り「冗談で言った」「そういう意味のやり取りではなかった」などと反論されてしまうことがあります。
メールやSNSのみでは完全に証明をすることが難しくとも、他の証拠と合わせて不貞行為を証明できる場合もありますので、怪しい会話等があれば、トーク履歴やメールを保存しておくようにしましょう。
また、まれではありますが、性交渉中や裸体の写真等があれば、有力な証拠となります。
さらに、もし配偶者が不貞行為を認めている場合には、その旨の念書を書いてもらうことが考えられます。
経験上、当初は不貞行為を認めていた場合でも、正式に慰謝料や離婚の請求をした段階で「急に問い詰められてつい本当のことではないのに認めてしまった」というような言い訳を始めるということがよくあります。
そのようなことを防ぐためにも、不貞行為をしたという旨について、配偶者の署名がある書面に書いてもらうことが効果的です。
②今後のことを考える
不貞行為をした配偶者が許せない場合には、離婚を請求することができます。
不貞行為は民法上の離婚事由として定められているためです。
ただし、不貞行為発覚直後には「許せないので離婚したい」と言っていた相談者様が、その後「離婚を辞めたい」という気持ちになることはよくあります。
しかし、離婚を前提に相手と協議を始めてしまっているなどしていると、相手の気持ちや協議の経過等から、元通りに仲の良い夫婦としてやり直すことが難しい場合もあります。
不貞行為が発覚した直後には、大きな衝撃を受けることが多いでしょうから、証拠を集めるなどしながら少し時間をかけて、今後どのようにしたいかを、検討すると良いでしょう。
また、不貞行為をされた場合には慰謝料を請求することができますが、慰謝料の額は、離婚するか否かによっても額が変わってきます。
一般的には、不貞行為により離婚に至った場合の方が、被った精神的苦痛も大きいといえますから、慰謝料の額も高額となります。
そういった事情も踏まえて、今後の方針を検討すると良いでしょう。
なお、不貞行為の慰謝料請求については、こちらのコラムで詳しく解説しています。
③不貞相手の素性を知る
不貞行為をした配偶者や、配偶者の不貞の相手には、慰謝料を請求することができます。
そして、慰謝料を請求する場合には、相手の住所や氏名を知ることが必要です。
もし氏名や住所が分からない場合には、慰謝料を請求するための書面を送ることもできませんので、氏名や住所を可能な範囲で調べるのが良いでしょう。
なお、相手の携帯電話番号のみ分かる、などという場合であっても、弁護士に依頼をすることで、弁護士会を通じて携帯電話会社に契約者の情報を教えてもらうことができる場合があります(これを弁護士会照会といいます)。
そのため、まずはどんなことでも良いので、不貞相手に関する情報を集めるようにしましょう。
配偶者が認めている場合には、不貞相手の情報を配偶者に教えてもらうことも効果的です。
3. 慰謝料請求の流れ
それでは、実際に慰謝料を請求する場合には、どういった流れとなるのでしょうか。
①相手との交渉
まずは、相手と任意に交渉することが考えられます。
慰謝料の額については、相手との合意があれば基本的には自由に決められますが、一般的な相場としてはおおむね50万円から300万円程度となります。
不貞行為の回数や態様等にもよって変わりますが、離婚をしない場合には、50万円~100万円程度であることも多いです。
慰謝料については、不貞相手と配偶者のどちらにも請求できますが、離婚をしない場合には、配偶者に請求をしたとしても、家庭内でのお金のやり取りになるため、家庭に入ってくる金銭の額という点では、あまり効果がないという側面があります。
他方、不貞相手にのみ請求をしたとしても、不貞相手から配偶者には、求償権といって、共同で不法行為(不貞行為は不法行為に当たります)を行った者の一部が損害賠償債務を負担した場合に、他の不法行為者に対し、その責任の割合に応じて負担額の一部を請求することができる権利を有しています。
不貞行為の場合には、負担割合は1:1となることが多いため、不貞相手が200万円の慰謝料を支払った場合には、不貞相手は100万円を配偶者に負担するよう求めることができます。
交渉の過程で相手が素直に慰謝料の支払いに合意してくれれば別ですが、電話やメール等のやり取りによる交渉がうまくいかない場合には内容証明郵便といって、書面の内容や書面が送付された日時等を郵便局が証明してくれる方法で書面を送付するのが効果的です。
特に弁護士名での内容証明郵便を受け取ることは、通常あまりないことですから、相手にとってはプレッシャーでもあり、こちらが本気で慰謝料を請求するということを示すことができます。
なお、もし慰謝料の支払いについて合意した場合には、必ずその額や支払い時期、支払方法(一括か分割かなど)について書面に残すようにしましょう。
この書面がないと、あとから「そんな約束はしていない」と言われた場合にその主張を覆すことが難しくなってしまいます。
②裁判による請求
慰謝料の額などについて相手と折り合いがつかない場合には、裁判をすることとなります。
なお、配偶者と離婚をすることを選択した場合は、まずは離婚のための調停(家庭裁判所において行われる手続で、裁判官1名と調停委員2名を交えて、相手方と話し合いにて合意することを目指す手続をいいます)を申し立てた上で、慰謝料の額についてもその調停の中で話し合う方法をとることが一般的です。
裁判を行う場合、裁判所に訴状というこちらの主張や慰謝料請求の根拠となる不貞行為があったことを示す事実等を記載した書面を提出する必要があります。
併せて、不貞行為があったことを示す証拠も提出することとなります。
訴状を裁判所に提出すると、裁判所がその内容について、形式に不備がないかなどを審査し、特に問題がなければ相手に訴状の写しが送付されます。
訴状の相手への送付が完了すると、第1回の裁判期日が決まります。
その後はこちらの主張に対する相手の反論がされ、さらにこちらが相手の反論に対する再反論を行う、という形で進んでいきます。
基本的には1か月に1回程度期日が指定され、その期日までに交互に反論を記載した書面を提出していく形で進行していきます。
特に相手が不貞行為の事実を認めていない場合には、裁判官にこちらの主張が正しいということを認めてもらうためにも、上で述べたような証拠があることが重要となります。
また、裁判が進行していく過程では、裁判官から和解を勧告されることがあります。
和解とは、争いのある点について双方が譲歩して争いをやめることをいいます。
裁判官が、それまでにされた双方の主張を加味して、適切と考える慰謝料の額を提案したり、両者においていくらであれば納得できる、なとどいうことを示して和解に応じることができるかを双方で検討することとなります。
相手と和解をすることで合意できた場合には、合意した内容について裁判所において書面が作成され、裁判手続はそこで終了します(肉体関係があったことに争いがない場合、和解で終了するケースが多いです)。
双方が譲歩しきれずに合意に至らなかった場合には、裁判官が判決にて、適切な慰謝料の額を決めることとなります。
4. まとめ
配偶者のことを信じていたのに不貞行為が発覚した場合、すぐに冷静になれない方がほとんどです。
そして、冷静になれないままに配偶者や不貞相手と話し合いをした場合には、逆にこちらの不利になるような条件を飲んでしまったり、相手に言い逃れの機会を与えてしまうなど、あとから弁護士に依頼をいただいても取り返しがつかない状態になってしまっていることも、残念ながらよくあります。
当事務所では、経験豊富な弁護士が、ご相談者様の状況に合わせて、今後の方針を一緒に検討することができます。
また、不貞行為の証拠が少ない場合でも、相手との個別の交渉により、不貞行為を認めさせることができることもあります。
当事務所では、初回の相談は無料となっていますので、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。