新静岡駅前法律事務所

遺言書の書き方を弁護士が解説

相続のイメージ
2023-10-18
相続

相続人間の紛争を避けるため、きちんと遺言書を作成しておきたいと考える方は多いと思います。

しかし、民法上、遺言書には要件が定められており、これを満たさない場合、遺言が無効になってしまいます。

また、遺言の内容が不明確であったり、内容に漏れがあったりすると、解釈を巡って相続人間で紛争が生じるおそれがあります。

そこで、本稿では、遺言書の書き方や作成を弁護士に依頼した場合のメリットを解説します。

目次

遺言書の種類

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言者本人自らがすべて手書きで(相続財産目録は除く)、かつ、押印して作成する遺言です(民法第968条)。

平成30年の民法改正(平成31年1月13日施行)により、財産目録は自書でなくても良いことになりました。

遺言者本人が自書できる能力があれば、費用が生じず、公証役場等での手続も不要なため、簡単に作成することができるのがメリットです。

もっとも、自ら作成する必要があるため、民法上定められている要件を欠き無効となってしまったり、内容が不明確で解釈に疑義が生じ相続人間の紛争を誘発するリスクがあります。

また、自筆証書遺言は、破棄・隠匿・偽造されるおそれがあり、遺言書が発見されなかったり、遺言の有効性に関し紛争が生じる可能性がある点は注意が必要です。

なお、自筆証書遺言の破棄・隠匿・偽造を可及的に防止するため、自筆証書遺言の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、遺言書を家庭裁判所に提出して、検認の請求をしなければならないとされています(民法第1004条1項)。

また、封印のある遺言書の場合、家庭裁判所において、相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することはできないとされています(民法第1004条3項)。

公正証書遺言

公正証書遺言とは、遺言者本人に代わり、公証人が作成してくれる遺言です(民法第969条)。

遺言者本人が自筆する必要がないため、自筆ができない場合でも、作成することが可能です。

また、証人2人が立会いのもと、公証人が作成し、かつ、遺言書の原本は公証役場が保管してくれることから、自筆証書遺言と比較すると、遺言の要件を満たさなかったり、遺言書が破棄・隠匿・偽造されるリスクを大きく減少させることができます。

公正証書遺言は、公証役場とやりとりをしたり、戸籍謄本・印鑑登録証明書・不動産の全部事項証明書(登記簿)・住民票等の資料を準備したり、実際に公証役場に赴いたり(出張サービスもありますが日当や交通費がかかります)する手間がかかり、また、公証役場に納める手数料も生じますが(金額は相続人の数や相続財産の金額により異なります)、最も紛争が生じにくく、お勧めの方法です。

秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、遺言者本人が作成した遺言書を公証役場に持参し、公証人に提示することで、遺言の存在を証明してもらう方法です(民法第970条)。

遺言書を作成し(自筆である必要はありません)、署名・押印した後、封に入れて、遺言書に押印したのと同じ印鑑で封を閉じることが必要です。

自筆証書遺言と異なり、署名・押印以外は自筆である必要がないこと、遺言書が破棄・隠匿されても遺言書の存在を証明できることがメリットになります。

もっとも、遺言書の保管は遺言者本人が行うため、遺言書を発見してもらえなかったり、破棄・隠匿・偽造されても気付かれないおそれはありますし、また、公証人は、遺言書の内容を確認しませんので、要件を欠き無効となるリスクは残ります。

これらの問題点があることから、実務上、秘密証書遺言の方法はほとんど取られていません。

自筆証書遺言の要件

前述のとおり、遺言書を作成する場合は、公正証書遺言がお勧めですが、公正証書遺言を作成することが難しいという方や公正証書遺言作成に先立ち自筆証書遺言を作成しておきたいという方もいらっしゃるでしょう。

有効な自筆証書遺言を作成するためには、以下の要件を満たす必要があります(民法第968条)。

自書

前述のとおり、相続財産目録を除き、すべて自書であることが必要です。録音や録画で代替することもできません。

代筆も認められていないので、一部でも代筆がある場合、遺言書全部が無効となってしまいます。

自書が難しいという方は、公正証書遺言の方法を取りましょう。

日付

自筆証書遺言には、日付を記載することが必要です。具体的に日付(年月日)を明記しないと遺言は無効となります(無効になる例:「7月10日」(年が抜けている)、「2023年7月吉日」)。

また、遺言書が複数ある場合は、最も新しい日付のものが有効になりますので、日付は正確に記載しましょう。

署名・押印

署名・押印も自筆証書遺言の要件の1つです。氏名は、戸籍のとおり、フルネームで正確に書きましょう。印鑑は擦れないようにきちんと押印し、印鑑が消えにくい朱肉で押すと良いです。印鑑は、認印でも有効ですが、偽造を疑われないように、印鑑登録されている印鑑を使用すると良いでしょう。

訂正

遺言書の内容を訂正したい場合、遺言者本人が変更したい箇所と変更した後の内容を指示し、変更した旨を付記した上で、元々遺言書に署名・押印していたものとは別に、署名・押印をすることが必要です。

署名・押印がなされていないと、変更の効力が生じないので、注意しましょう。

相続財産目録

自筆証書遺言に相続財産目録を添付する場合、財産目録は自書である必要はありません。

ただし、財産目録のすべての頁に自筆での署名・押印が必要になるので、注意しましょう。

公正証書遺言の作成方法

遺言書の案を作成する

まずは、遺言書の内容を考えましょう。後ほど、公証人に示すために文章でまとめておくのが良いです。

遺言書の案を作成するに当たっては、相続人の範囲や自らの財産を把握しておく必要があります。

相続人の範囲を確定するためには戸籍謄本を、自らの財産を把握するためには、財産資料、例えば、金融機関の取引履歴通帳不動産の全部事項証明書(登記簿)等を確認します。戸籍謄本と財産資料は、後ほど公証人から提出を求められることがあるので、その点からも早めに収集しておくと良いでしょう。

必要書類の提出

遺言書の案が完成したら、公証人に郵送、FAX、メール等で送付します。公証人から、戸籍謄本や財産資料の提出を指示された場合には、指示どおりに提出しましょう。

公正証書遺言の文案作成

遺言書の案と必要書類の提出が完了すると、公証人が公正証書遺言の文案を作成してくれます。

修正したい箇所がある場合には修正を依頼し、公正証書遺言の内容を確定させましょう。

公正証書遺言作成日の調整

公正証書遺言の内容が確定したら、公正証書遺言を作成する日程の調整をします。

当日、公正証書遺言の作成にかかる費用を納める必要があるので、日程調整の際、費用も確認しておくと良いでしょう。

公正証書遺言の作成

予約した日時に公証役場に赴きます。

病気等で公証役場に行くことが難しい方の場合、公証人が自宅や病院に出張してくれるサービスもありますが、日当や交通費が生じますので、出張サービスを利用する場合は、事前に金額を確認すると良いです。

当日は、証人2名が立会いのもと、公証人が遺言者本人の前で、公正証書遺言の内容を口頭で確認します(「口述」(くじゅ)といいます)。

内容の確認が終わると、遺言者本人及び証人2名が署名・押印し、最後に公証人が職印を押捺することで、公正証書遺言が完成します。

病気等で自書による署名が難しい場合には、公証人が「病気のため」などと自書ができない理由を付記し、公証人の職印を押捺することで、押印のみでの公正証書遺言の作成が可能です(実務では公証人が遺言者の氏名を代筆し遺言者に押印してもらう運用が一般的です)。

押印すら難しいという場合は、遺言者本人の意思確認を行った上で、公証人が遺言者に代わって押印することもできます。

遺言書は3通作成し、1通(原本)は公証役場が保管し、2通(正本・謄本)は遺言者本人か、遺言者本人から保管を依頼された者が保管します。

遺言書の作成を弁護士に依頼するメリット

後の紛争を予防することができる

弁護士は法的知識を有していますので、法的に有効な遺言書を作成してもらえます。

単に法的に有効なものを作成してくれるというだけではなく、相続財産の内容を漏れなく、詳細かつ具体的に記載したり、誰に相続又は遺贈させるのかを明確にするなどして、解釈に疑義が生じることを防止し、将来の相続人間での紛争を予防する効果があります。

また、法的に有効であっても、遺言執行者の選任に関する記載が漏れているなどして、相続開始後に余計な手続を増やしてしまうことも散見されます(遺言執行者の選任に関する記載が漏れていた場合、家庭裁判所に対し、別途、遺言執行者選任の申立てを行い、遺言執行者を選任してもらう必要が生じます)。弁護士に依頼することで、このようなミスにより手間が増えるという事態も避けることができます。

作成の手間が省ける

遺言書の文案はすべて弁護士が作成してくれますので、遺言書の案を作成する手間を省くことができます。

公正証書遺言を作成する場合、公証役場とのやりとりを一任できますし、弁護士が証人になってくれますので、証人を探す手間も省けます。

資料を収集してもらえる

戸籍謄本や不動産・会社の全部事項証明書(登記簿)は、弁護士が職権で取得することが可能ですので、資料収集の手間も省くことができます(特に、戸籍謄本は、上の世代まで遡る必要があるので、大量の戸籍謄本を取得しなければならず、作業量が膨大になることが多いです)。

トラブルを防止するためのアドバイスをもらえる

有効な遺言書であっても、遺言書の内容によっては、後日、相続人の間でトラブルが生じやすいものとなってしまっている場合があります。

  • すべての財産を1人の相続人に相続させる内容→他の相続人から遺留分減殺請求をされる可能性(「遺留分減殺請求」とは、特定の相続人に有利な内容の贈与や遺贈があった場合に、他の相続人が返還請求をすることです)
    ※対処法:他の相続人にも一部財産を相続させて遺留分を侵害しない内容に変更する
  • 不動産を複数の相続人で共有させる内容→相続人の1人が共有物分割請求をする可能性や複数の相続が繰り返されて共有者が増えてしまい事実上分割が困難になる可能性
    ※対処法:単独所有になるように相続させ、所有しない相続人には他の財産を相続させたり生前贈与で代替する

このように、自身で作成した遺言書が実は法的リスクの高いものになっているということは十分にあり得ます。

弁護士に依頼して法的アドバイスを得ることにより、将来のトラブルを防止することができるかもしれません。

まとめ

当事務所の弁護士は、多数の相続案件を経験していますので、どのような遺言書だと紛争が生じやすいか、紛争を生じさせないためにどのような内容とすべきかというノウハウを有しています。

遺言書が作成されているにもかかわらず、調停や訴訟等の紛争が生じている案件も多数存在しますが(遺留分減殺請求、遺言無効確認、遺言書の偽造を理由とする欠格事由の主張等)、違う内容の遺言書であれば、紛争が生じなかったであろうと考えられるケースは少なくないです。

遺言書の作成に不安を感じている方、作成したけれどもこの内容で大丈夫か専門家の意見を聞きたいという方は、一度当事務所までお問い合わせください。

著者

弁護士 長谷川達紀

弁護士
長谷川達紀

静岡県弁護士会所属

家事事件と男女トラブルを中心に月100件を超える相談に対応。

趣味はグルメ巡りとテニス。

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