近年、「パパ活で知り合った男性側からお金を返せと言われている」といったご相談が増えています。
中には、お金を返さなかったり、連絡を取らないでいたら、男性側が脅迫をしてきたというケースも多く見られます。
本稿では、パパ活で金銭を請求されている場合、脅迫されている場合の対処法を解説いたします。
目次
1. 金銭を支払う必要がない場合
①デート(性交渉なし)の対価としてもらったお金
デートの報酬としてもらったお金の場合、デートの対価としてもらったものなので、当然、返還する必要はありません。
ただし、内容に不履行があった場合、例えば、デートをキャンセルしてしまった場合や女性側のミスで約束していた内容と違った場合、事前にもらっていた金銭の返還が必要な場合があります。
②性交渉の対価としてもらった場合
性交渉を行う代わりに金銭を支払う契約、いわゆる援助交際は、公序良俗に反し無効とされています(民法第90条)。
しかし、男性側が「援助交際は無効だから、お金を返せ」と求めても、法律上は、返還する必要がありません。
これを「不法原因給付」といいます(民法第708条)。
すなわち、援助交際のような公序良俗に違反する内容の契約に基づき給付された金銭は、返金を求めることができないというものです。
したがって、性交渉の対価としてお金をもらった場合には、お金を返す必要はありません。
先にお金をもらい、実際に性交渉は行わなかったという場合も、不法原因給付として、お金を返す必要はありません。
ただし、最初から性交渉を行う意思がないにもかかわらず、性交渉をする意思があるように見せかけて金銭を交付させた場合には、民法上の詐欺(民法第96条1項)や刑法上の詐欺罪(刑法第246条1項)に該当し、返還請求が認められたり、刑事事件化するリスクがあるので、注意が必要です。
なお、「男性側から、売春や援助交際をしたことは違法だから、警察に通報すると言われている」という相談を受けることがあります。
確かに、売春や援助交際は売春防止法に違反する行為ですが、売春行為に対する罰則規定は規定されていないため、警察に通報したとしても、逮捕されたり、刑事罰を受けることはありません。
③贈与の場合
食事代を出してもらったり、物を買ってもらったり、プレゼントとして物をもらった場合、民法上の「贈与契約」に該当するので(民法第549条)、返還の必要はありません
「関係を解消したいと申し入れたところ、今まで支出したお金を返すよう求められた」というトラブルは多いですが、ほとんどの場合、この贈与契約に該当し、返還義務がないケースが多いです。
ただし、相手を騙して金銭を支出させたり、物を交付させた場合には、詐欺(民法第96条1項)として、返還義務が生じる場合があるので、注意しましょう。
2. 金銭を支払う必要がある場合
①お金を借りた場合
金銭の交付を受けた際に、「お金を返す」という返還の合意をしていた場合は、民法上の金銭消費貸借契約に該当するため(民法第587条)、金銭の返還義務が生じます。
物を買ってもらう際にお金を立て替えてもらった(支払ってもらった金銭を後日返済すると約束した)場合も、同様に金銭を支払う義務が生じます。
後になって、「あの時のお金は貸したものだ」と言い出す相手方も少なくないですが、返還の合意をしていない場合には、返還する必要がないことになります。
②詐欺に該当する場合
前述したように、相手を欺いて金銭や物を交付させた場合には、詐欺(民法第96条1項)として、金銭を返還する義務が生じる可能性があります。
詐欺が成立する要件は、ⅰ相手方を騙す行為(欺罔行為)があったこと、ⅱ欺罔行為により相手方が錯誤に陥って(騙されて)意思表示をしたことです。
相手方を騙す行為があったとしても、その行為が意思表示(金銭や物の交付)に繋がっていなければ(欺罔行為と意思表示との間に因果関係がない場合)、詐欺は成立しないことになります。
例えば、年齢を20歳と偽り(本当は21歳)、相手方がこれを信じたとして、20歳であっても21歳であってもプレゼントをしていたような場合は、「欺罔行為により・・・意思表示をした」とは言えないので、詐欺は成立しません。
経験上、「嘘をつかれた」=「詐欺」と考えている方が散見されるので、嘘をついていたからと言って必ずしも詐欺に該当するわけではないことには注意しましょう。
民法上の詐欺に該当する場合、意思表示を取り消すことができるので、相手は意思表示に基づき交付した金銭や物の返還を請求することができます(これを不当利得返還請求といいます(民法第703条))。
③金銭を支払うことに同意した場合
相手方から金銭の支払を求められ、これに同意した場合には、金銭の支払義務が生じることになります。
ただし、相手に脅迫されて同意してしまったなどの事情がある場合には、同意を取り消すことができる可能性があります(民法第96条1項)。
3. 対応方法
金銭を支払う義務がない場合
金銭の支払義務がない場合、相手方の要求を拒否して問題ありません。
ただし、金銭の支払義務がない場合であっても、紛争の早期・円満解決の観点から、一定の解決金を支払って解決するというのも選択肢の1つでしょう。
解決金を支払って解決するという方法を選択する場合、合意書などの書面を作成し、「清算条項」という解決金以外に債権債務がないことを確認する条項(和解に際して支払う解決金以外に金銭請求をしないこと)を定めることが重要です。
書面において、清算条項を定めておかないと、後から名目を変えて追加の金銭請求をされてしまうおそれがあります。
また、相手方との関係を断ちたいという方は、「接触禁止条項」という今後互いに連絡及び接触をしないことを約束する条項も定めると良いです。
その他、トラブルが生じたことを他の人に知られたくないという場合には、「本件に関する事情を第三者に口外しないことを約束する」といった口外禁止条項を定めることもあります。
金銭を支払う義務がある場合
金銭の支払義務がある場合には、きちんと支払うにようにしましょう。
支払を拒否したり、無視していると、民事訴訟(裁判)を提起されたり、事案によっては警察に被害届を出されてしまうリスクがあります。
一括での支払が難しい場合には、分割払いなど支払方法について、交渉を行ってみると良いでしょう。
交渉の結果、相手方と合意が成立した場合には、前述した解決金を支払う場合と同様に、書面で清算条項を定めると、後の紛争を防止することに繋がります。
また、刑事事件化する可能性がある事案の場合には、宥恕文言(刑事処罰を求めない旨の条項)を定めることで、刑事事件化のリスクも減らすことができます。
脅迫を受けている場合
お金を返さなかったり、連絡を無視していると、相手方が、「警察に被害届を出す」、「裁判を起こす」、「家族にバラす」、「職場や学校に連絡する」、「SNSに拡散する」などと脅迫してくることがあります。
上記行為は、刑法上の恐喝罪(刑法第249条)、強要罪(同法第223条)、脅迫罪(同法第222条)に該当する可能性があります。
また、相手方が、執拗に連絡をしてきたり、つきまとい行為をしてきた場合には、ストーカー行為等の規制等に関する法律や各都道府県が定める迷惑行為等防止条例に違反する可能性があります。
金銭の支払義務がある場合であっても、内容によっては、上記のような犯罪に該当する可能性があります。
上記のような行為があった場合には、まずは警察に相談してみることをお勧めします。
ただし、警察が対応してくれるか否かは、警察の判断になるので、必ず警察が動いてくれるとは限りません。
経験上、「事件性がない」、「金銭請求が絡んでいるので、警察は民事不介入で対応できない」などの理由で、対応してもらえないケースは多いです。
警察に対応してもらえなかった場合には、弁護士に介入してもらい、相手方に警告をしてもらったり、金銭請求に関する交渉を代行してもらうなどの対応も検討しましょう。
4. まとめ
パパ活は、金銭や男女関係が絡んでくるので、トラブルに発展することが多い類型です。
パパ活でお金を返すよう求められているなど、トラブルが生じている場合には、大きな問題に発展する前に、まずは弁護士に相談してみることをお勧めします。
当事務所は、パパ活トラブルを含む男女トラブル・男女問題に精通している弁護士が所属しておりますので、パパ活トラブルでお悩みの方は、お問い合わせください。