新静岡駅前法律事務所

誹謗中傷してしまったらどうなる?損害賠償請求された場合の対処法

2024-05-29
インターネット 刑事

「匿名だからと安心して誹謗中傷してしまったら、相手から慰謝料を請求されてしまった」

近年、インターネットの発達により誰でも気軽に5チャンネル・爆サイなどの掲示板に書き込めたり、Facebook・X(旧Twitter)・InstagramなどのSNSが普及したことにより、誹謗中傷に関するご相談も増えています。

そこで本記事では、誹謗中傷をしてしまったとして相手から損害賠償請求されている場合の対処法について解説します。

目次

1. 誹謗中傷をしてしまった場合に起こりえること

①誹謗中傷の被害者や代理人から連絡が来る

例えば、SNSで誹謗中傷をしてしまい、そのSNSにDM(ダイレクトメッセージ)などを送る機能がある場合は、被害者やその代理人から抗議や、投稿の削除、慰謝料の支払いなどを求める書面が送られてくることがあります。

この連絡を無視してしまうと、相手が③で述べるような発信者情報開示請求を行ったうえで、民事訴訟や刑事告訴を行う可能性があるので、相手と示談をするべき場合にあたるか慎重に検討するようにしましょう。

例えば、投稿が相手の権利を侵害するものではなく、慰謝料を支払う必要がないということもあり得ますが、ご自身で判断して何も連絡を取らずに無視してしまうと、相手は何も対応する気がないと判断して民事訴訟や刑事告訴に進む可能性がありますので、連絡を無視することは非常に危険です。

自身の投稿が権利侵害に当たらないと考える場合には、その理由と共に相手に主張することを検討しましょう。

②サイトの管理者から連絡が来る

サイトによっては、投稿の削除や投稿をした人の情報提供を請求するためのフォームを準備していることがあります。

相手がこのフォームを利用して申請した場合、サイトの管理者からあなたに対して、投稿の削除や情報の開示に同意するか?という投稿者の意見を聞くための連絡が来ることがあります。

この連絡に対して返答しなかった場合に、サイト側が任意であなたの情報を開示することは考えづらいですが、投稿が権利侵害に当たらないと考えている場合には、その理由と共に返答するとよいでしょう。

③発信者情報開示請求に関する意見照会書が届く

発信者情報開示請求とは、投稿により権利を侵害されたと考える人が、加害者を特定して損害賠償請求などを行うために、インターネットのプロバイダ等に対して発信者情報(投稿者の氏名や住所など)の開示を請求するための手続きです。

相手があなたの投稿により自身の権利を侵害されたとして投稿者の情報を開示するよう請求すると、プロバイダは、投稿者の情報を開示することについて、投稿者に意見を聞きます。

通常は、開示に同意するか否か、また同意しない場合はその理由を記載して書面を提出するよう求める「意見照会書」が送られてきます。

この意見照会書が届いた場合には、開示に同意して被害者と示談交渉を開始するか、または、投稿が権利侵害に当たらない場合にはその旨を意見照会書に記載して開示に同意しないといった対応が考えられます。

なお、意見照会書が届いた場合の対応についての詳細は、以下の記事で解説していますので、併せてご確認ください。

2. 誹謗中傷が権利侵害に当たる場合とは?

前述のとおり、SNSで誹謗中傷をしてしまった場合、それが相手の権利を侵害するか否かによって取るべき対応が変わるため、投稿が権利侵害に当たるか否かを判断する必要があります。

以下、代表的な権利侵害に当たる場合について解説します。

①名誉棄損・名誉権侵害

公然と事実を適示し、人の社会的評価を低下させた場合、名誉棄損罪が成立する場合があります(刑法第230条)。

事実を適示」とは、具体的な事実を挙げることをいいますので、例えば「Aさんは不倫をしている」などと投稿した場合に名誉棄損罪が成立する可能性があります。

また、投稿で具体的な事実を挙げていないため刑法上の名誉棄損罪が成立しない場合でも(「この店のハンバーグは美味しくない」など、意見や論評を述べたに過ぎない場合など)、人の社会的評価を低下させた場合には、民法上の不法行為に該当する場合があります。

例えば、「BというバンドのCというメンバーは演奏が下手すぎて、曲を聴いたら体調を崩すだろう。もはや犯罪行為だ。」などといった投稿をした場合には、Cさんの社会的評価を低下させたとして不法行為が成立する場合があるでしょう。

なお、名誉棄損罪の成立には「公然」性が必要であり、不特定多数の人が知る可能性があるといえる場合に成立します。

SNSでの発信の場合、その投稿を誰でも見ることができることがほとんどでしょうから、基本的には公然性があるといえるでしょう。

また、特定の人しか見られないような設定(例えば、許可をしたフォロワーのみが閲覧できる状況など)であったとしても、閲覧した人がその投稿を拡散させるなどということも想定できるとして、「公然」性を認めた裁判例もあるので、閲覧者を限っているからといって安易に投稿しないよう注意が必要です。

ただし、名誉棄損罪は、以下のような要件を満たした場合には、例外的に罪になりません。

  • 公共の利害に関する事実に係るものであること
  • その目的が専ら公益を図ることにあったと認められること
  • 真実であることの証明があったこと

例えば、政治家の汚職を報道する場合にまで名誉棄損罪が成立してしまうと、重要な報道であっても一切できなくなってしまうことになりかねません。

そこで、3つの要件を満たす場合には、違法性がないとして名誉棄損罪が成立しないのです(これを「違法性阻却事由」といいます)。

また、仮に真実ではなかったとしても、「真実であると信じることについて相当の理由があるとき」についても名誉棄損罪は成立しません。

例えば、必要な取材を尽くしたうえで真実であると考えて報道したものの、実は真実ではなかった場合などがこれにあたります。

②侮辱罪・名誉感情侵害

事実を適示していない場合に成立する可能性のある犯罪が侮辱罪です(刑法第231条)。

侮辱罪は、「公然と人を侮辱した場合」に成立します。

例えば、「バカ」「ハゲ」といった表現は、侮辱的表現に該当し、侮辱罪が成立しえます。

また、社会通念上許される限度を超えた侮辱については、人の名誉感情を侵害するものとして、民法上の不法行為に該当します。

名誉感情侵害の場合、公然性は要件となりませんので、DMで侮辱をした場合であっても民法上の不法行為に該当し得る点には注意が必要恵です。

③プライバシー権の侵害

プライバシー権とは、一般に「自己の私生活上の事柄をみだりに公開されない権利」と解釈されています。

私生活上の事実などで、一般的には知られたくなく、実際に知られていない事柄をみだりに公開されない権利がこれにあたります。

このような私生活上の事実を勝手に公開してしまった場合には、プライバシー権の侵害として不法行為に該当する場合があります。

例えば、SNSで他人の住所や職場などを公開してしまった場合、プライバシー権の侵害に該当する可能性があります。

3. 誹謗中傷を理由に損害賠償請求されてしまったときの対処法

①権利侵害があるかを確認する

誹謗中傷をしたとして損害賠償請求されてしまった場合には、まずは「2」で述べたような権利や、その他の権利侵害が成立するかを確認しましょう。

権利侵害に当たらない場合には、相手が主張している損害賠償請求に応じる必要がないといえますので、自分の投稿に権利侵害が当たるか否かによって対応が異なります。

もし権利侵害に当たらないと考える場合には、損害賠償の必要がない旨を相手に反論する必要があります。

なお、権利侵害がないと考える場合でも、相手の請求を無視してしまうと相手が訴訟を提起し、裁判手続きの手間やコストがかかってしまうことになりかねないため、相手の請求を無視するのではなく、しっかり反論する必要があるでしょう。

②示談交渉をする

権利侵害があると考える場合には、相手と速やかに示談交渉を開始し、示談することを検討しましょう。

速やかに示談交渉を開始し、相手と示談することにより訴訟を提起されてしまったり、刑事告訴されてしまうなどのリスクを減らすことができます。

また、もし示談をする場合には、必ず示談書を締結しましょう。

示談書を締結せずに解決金を支払ってしまうと、相手から名目を変えて追加で金銭請求をされたり、解決金を支払ったにも関わらず刑事告訴されてしまうといったことになりかねません。

そこで、示談書には、刑事処分を求めない旨の文言(「宥恕文言」といいます)や、解決金の支払以外にお互いに金銭の請求ができない旨の文言(「清算条項」といいます)を入れるようにしましょう。

4. 誹謗中傷をしてしまった場合の慰謝料の相場は?

これまで述べてきたとおり、誹謗中傷をしてしまった場合には、相手に生じた損害の賠償をしなくてはならない場合があります。

一般的には、相手は「慰謝料」という形で損害賠償請求をしてきます。

慰謝料とは、相手が誹謗中傷により精神的苦痛を被ったとして、その精神的苦痛を慰謝するために支払うものです。

相手と示談をする場合であっても、相手が請求してきた金額を必ず支払わなくてはならないわけではないので、相手の請求額が高額に過ぎる場合などには、減額交渉をすることを検討するとよいでしょう。

誹謗中傷の場合、その内容の悪質さや投稿回数、相手に生じた不利益の大きさなどによっても慰謝料の相場は変わってきますが、慰謝料の額のおおよその目安は以下のとおりです。

  • 個人に対する名誉棄損の場合:10万円~50万円程度
  • 事業主に対する名誉棄損の場合:50万円~100万円程度
  • 侮辱の場合:数万~10万円程度
  • プライバシー権侵害の場合:10万円~50万円程度

一般に、個人に対する名誉棄損の場合に生じる損害より、企業に対する名誉棄損の場合に生じる損害の方が大きくなる傾向にあるため、慰謝料の相場も高額になります。

また、侮辱の場合でも、頻度が相当多かったり、内容が悪質である場合には、10万円以上の慰謝料が認められる場合もあります。

プライバシー権侵害の場合には、例えばリベンジポルノなどで性的な画像を公開されてしまったというケースでは100万円を超える慰謝料が認められることもあります。

示談をするには相手との合意が必要であるため、必ずしも上記どおりの額で合意できるとは限りませんが、相手の請求額があまりにも高額である場合などには、裁判で慰謝料の額を判断してもらう方が良い場合もあるでしょう。

5. まとめ

誹謗中傷をしてしまった場合には、自分の投稿が権利侵害に当たるのかや、適切な慰謝料の額がいくらであるかなどを慎重に検討する必要があります。

ご自身のみでは判断することが難しい場合もあると思いますので、お困りの方は、問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。

著者

弁護士 日吉加奈恵

弁護士
日吉加奈恵

静岡県弁護士会所属

東京都内の法律事務所に出向経験もあり、離婚・男女トラブル・相続等の個人案件の経験も豊富。

趣味は旅行と野球観戦。

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