関係を持った相手が既婚者であると知らなかった場合、不貞慰謝料を支払わなくて良いと思っている方もいらっしゃると思います。
しかし、相手が既婚者であると知らなかった場合でも、相手が既婚者であると知ることができた場合には、慰謝料を支払う必要があります。
この記事では、相手が既婚者であると知らなかった場合に、慰謝料を支払う必要があるケースとないケースを解説します。
目次
1 不貞慰謝料の要件は?
「不貞慰謝料」とは、相手が既婚者であることを知りながら肉体関係を持った場合に(「不貞行為」といいます)、相手の配偶者が被った精神的損害を慰謝するために支払う金銭のことをいいます。
不貞行為は、民法上の不法行為に該当することから、慰謝料の支払義務が生じます(民法第709条、同第710条)。
不法行為に基づき慰謝料の支払義務が生じる要件は、以下のとおりです。
- ①違法行為があること
- ②権利又は法律上保護される利益を侵害したこと
- ③故意・過失があること
- ④精神的損害が生じたこと
- ⑤違法行為と精神的損害との間に因果関係があること
既婚者と肉体関係を持った場合、原則として、不貞行為(違法行為)によって、夫婦の平穏な婚姻生活を送る権利を害し、相手の配偶者に精神的損害を与えたと認められることから、①・②・④・⑤の要件は満たします。
しかし、相手が既婚者と知らなかった場合には、③故意・過失が認められるかが争点になります。
既婚者と知らなかった場合、夫婦の平穏な婚姻生活を送る権利を害する認識がないことから、故意が認められません。
ただし、既婚者と知らなかった場合でも、既婚者と知ることができた場合には、過失が認められるため、不貞慰謝料の要件を満たすことになります。
2 既婚者と知らなくても不貞慰謝料が認められるケースは?
既婚者と知らなかったとしても、以下のようなケースでは、過失が認められ、不貞慰謝料の支払義務が認められやすいです。
①相手が同じ会社に勤務している場合
相手が同じ会社に勤務している場合、既婚者と知ることができたと判断される可能性が高いです。
一般的に、健康保険や年末調整などで家族がいることを知ることができたり、他の従業員が結婚式に参加していたり配偶者や子どもの話を聞いているなど、既婚者であると認識できる可能性が高いためです。
ただし、大企業で就業場所が異なる、一緒に仕事をすることはないなどの事情がある場合には、過失が否定されることもあります。
②相手の家に行ったことがない
何度も会っているにもかかわらず、相手の家に行ったことがなく、行きたいと言うと拒否されたりはぐらされていたなどの事情がある場合、既婚者であると疑うことができたとして、過失が認められやすくなります。
③休日に会ったことがない
何度も会っているにもかかわらず、休日に会ったことがなく、休日に会いたいと言うと拒否されたりはぐらされていたなどの事情がある場合、相手が休日は家族で過ごすため会うことができないと疑うことができたとして、過失が認められやすくなります。
3 不貞慰謝料が認められにくいケースは?
以下のような事情がある場合には、既婚者と知ることができなかったと認められる可能性が高いです。
①マッチングアプリで知り合った場合
マッチングアプリなどの面識のない人と関係を持った場合、既婚者であると認識できないことが多いことから、過失が認められにくくなります。
特に、独身者限定のマッチングアプリの場合には、更に過失が認められにくくなります。
②相手方が独身と偽っていた場合
相手が独身であると偽っていた場合、特に、離婚届や戸籍謄本を偽造して提示してきたような場合には、過失が認められない可能性が高いです。
なお、相手が独身と偽って関係を持った場合、相手に対して、貞操権侵害を理由とする慰謝料請求ができる可能性があります。
貞操権侵害の慰謝料請求については、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
4 過失が認められたらどれくらいの慰謝料を支払う必要がある?
上述のとおり、既婚者と知らなくても既婚者と認識できた場合には、相手の配偶者に対する慰謝料の支払義務が生じます。
不貞慰謝料の相場は、50万〜300万円程度です。
不貞慰謝料の相場の詳細については、以下のコラムで解説しておりますので、ご確認ください。
相手の配偶者に不貞慰謝料を支払った場合、相手に対して、求償請求をすることができます。
不貞行為は、不倫当事者の共同不法行為(2人で共同して違法行為を行うこと)に該当します(民法第719条)。
共同不法行為者の1人が被害者に損害賠償金を支払った場合、他の共同不法行為者に対し、責任割合に応じた求償金を支払うよう請求することができます。これが「求償請求」です。
例えば、相手の配偶者に不貞慰謝料として100万円を支払った場合、相手に対して、責任割合に応じた求償金を請求することができます。
不貞慰謝料の場合、責任割合は5:5とされることがほとんどですので、上記の例の場合、相手に対し、50万円の求償金を請求することができます。
しかし、相手が既婚者と知らなかった場合で、かつ、相手が故意に既婚者であることを隠していたような場合には、責任割合が修正されることが多いです。
具体的には、相手の責任割合が6〜8割に修正されることがあります。相手が独身と偽っていた例ですと、相手に対し、60〜80万円の求償金を請求することができます。
なお、求償請求の詳細については、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
4 既婚不知に関するよくある質問
Q1 既婚者と知らなかったが過失が認められる場合、既婚者と知らなかったことが慰謝料の減額事由として考慮されないですか?
既婚者と知らなかったことを証明できる場合には、慰謝料の減額事由として考慮されることがあります。
また、上述した貞操権侵害や求償請求により、経済的損失を抑えて事実上慰謝料の支払を減らすことができる場合があります。
Q2 既婚者と知っていたことや過失があったことは誰が証明するのですか?
既婚者の故意・過失の立証責任(証明する責任)は、慰謝料を請求する側にあります。
もっとも、実務上は、既婚者と知らなかったことや過失がなかったことを、慰謝料を請求されている側が積極的に証明していくことが多いです。
既婚者と知らなかったことや過失がなかったことを示す証拠がある場合には、積極的に提出すると良いでしょう。
5 まとめ
既婚者と認識することができたか否かは、法的評価を伴うことから、ご自身で判断するのが難しいケースが多いです。
既婚者の認識が問題となっている場合には、一度弁護士に見通しを相談してみると良いでしょう。
当事務所は、不貞慰謝料案件に注力しており、既婚者の故意・過失が争点となった案件の経験も豊富です。
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