不貞行為を理由とする慰謝料の相場は、概ね数十万〜300万円といわれていますが、その金額は個々の事案によって様々です。
本稿では、不倫慰謝料が増額される事由を解説いたします。
目次
1. 不倫慰謝料とは
一般的に「不倫」と呼ばれている行為は、法律上は「不貞行為」といいます。
不貞行為とは、既婚者が配偶者以外の者と肉体関係を持つ(性交渉を行う)ことをいいます。
不貞行為が認められると、不貞行為を行った当事者は不貞をされた配偶者に対する慰謝料の支払義務を負います(民法第709条、同710条)。
これがいわゆる「不倫慰謝料」になります。
なお、不倫慰謝料の請求方法については、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
不倫の慰謝料を請求したい!金額は?請求方法は?
2. 不倫慰謝料の増額事由
①離婚ないし別居している
不貞行為により離婚している場合は、婚姻関係を完全に破綻させたことになるので、その精神的苦痛も大きいとして、慰謝料の増額事由に当たります。
離婚に至っている場合の慰謝料の相場は、200万〜300万円程度になります。
また、離婚は成立していないが、不貞行為が理由で夫婦が別居するに至っている場合、婚姻関係を破綻させたものとして、慰謝料の増額事由に当たります。
別居に至っている場合の慰謝料の相場は、150万〜200万円程度といわれています。
②婚姻期間が長期に渡る
夫婦の婚姻期間が長期に渡る場合、破綻させた婚姻関係の程度が大きいものとして、慰謝料の増額事由に当たります。
目安としては、婚姻期間が10年以上に渡る場合、慰謝料の増額事由に該当すると考えて良いでしょう。
一方で婚姻期間が3年以下の場合、婚姻期間が短いと評価され、慰謝料の減額事由に当たると考えられています。
③不貞行為の期間が長期に渡る
不貞行為の期間が長期に渡る場合、不貞行為の悪質性が高く、また、配偶者の精神的苦痛が大きいとして、慰謝料の増額事由に当たります。
目安としては、不貞行為の期間が1年以上の場合は慰謝料の増額事由に該当し、3年以上の場合は大幅な増額事由に該当すると考えて良いでしょう。
④不貞行為の回数・頻度が多い
不貞行為の回数や頻度が多い場合も、不貞行為の悪質性が高く、また、配偶者の精神的苦痛が大きいとして、慰謝料の増額事由に該当します。
一方で、不貞行為が1回限りというように極端に回数や頻度が少ない場合には、慰謝料が減額される傾向にあります。
⑤夫婦の間に子どもがいる
夫婦の間に子どもがいる場合、婚姻関係に与えた影響が大きいとして、慰謝料の増額事由に当たります。
特に子どもが幼かったり、子どもが複数いる場合には、慰謝料が増額される傾向にあります。
⑥不合理な弁解をしている
不貞行為を行った当事者が不合理な弁解をしている場合には、反省の態度が見られず悪質性が高いとして、慰謝料の増額事由に当たります。
例えば、ラブホテルに2人で出入りする探偵の調査報告書があるにもかかわらず、「おしゃべりしていただけ」などと客観的合理性を欠く弁解をしているようなケースでは、慰謝料が増額される傾向にあります。
⑦不貞相手との子を妊娠・出産した
不貞相手との子どもを妊娠・出産した場合には、婚姻関係に与える影響が大きいものとして、慰謝料の増額事由に当たります。
特に、不貞相手が子を出産して認知や養育費の支払義務が生じた場合などは、婚姻関係に与える影響が極めて大きいので、大幅な慰謝料の増額事由に該当します。
⑧夫婦関係が円満であった
夫婦関係が円満であった場合、婚姻関係に与えた影響が大きいものとして、慰謝料の増額事由に当たります。
例えば、不貞行為がある又は不貞行為が発覚する直前まで、家族で旅行に行っていたり、親族と会っていたなどの事情は、夫婦関係が円満であったことを示す事情になるでしょう。
一方で、不貞行為の前から、配偶者による身体的なDVがあり別居していたなどの事情がある場合には、不貞行為の前に婚姻関係が破綻していたものとして、慰謝料請求が認められない又は慰謝料が大幅に減額されることがあります。
⑨配偶者が精神病に罹患した
不貞行為により不貞をされた配偶者がうつ病やPTSDなどの精神病に罹患した場合、配偶者の精神的苦痛が大きいものとして、慰謝料が増額されることがあります。
もっとも、精神病の場合、不貞行為との因果関係を立証(証明)することが難しい場合が多いことから、増額事由に当たると認定している裁判例は多いものの、大幅な増額事由にはなっていないというのが裁判実務です。
⑩一方当事者が不貞行為に積極的・主導的な役割を果たしていた
不貞行為を行った当事者の一方が不貞行為に積極的かつ主導的な役割を果たしていた場合には、慰謝料の増額事由に該当する可能性があります。
例えば、不貞行為の当事者AとBは、AがBの上司で、Bよりも10歳年上であったというケースにおいて、AがBに積極的に肉体関係を持つように迫っていたというような事情がある場合、Aが不貞行為に積極的かつ主導的な役割を果たしていたとして、Aに対する慰謝料が増額されることがあります。
⑪接触禁止の合意に違反した
不貞行為発覚後、不貞当事者の一方又は双方が連絡及び接触しないことを合意していた、又は、不貞をされた配偶者から連絡及び接触しないよう通知されていたにもかかわらず、正当な理由なく連絡又は接触をした場合には、慰謝料の増額事由に当たることがあります。
特に、不貞当事者が同棲し夫婦同然の生活をしているような場合には、慰謝料の大幅な増額事由に当たるでしょう。
⑫経済的利益の享受
不貞当事者がもう一方の不貞当事者から高額な経済的利益を享受している場合、夫婦の経済事情に大きな影響を与えたものとして、慰謝料の増額事由に当たることがあります。
例えば、高額なプレゼントをもらっていたり、家賃を負担してもらっていて、その金額が数百万円に及ぶような場合には、慰謝料の増額事由に該当すると考えて良いでしょう。
⑬謝罪がないこと
不貞当事者が不貞をされた配偶者に謝罪をしていないことは、配偶者の精神的苦痛を増加させたものとして、慰謝料の増額事由に当たることがあります。
もっとも、謝罪は内心では反省していない場合でも形式的に行うことができてしまうことから、謝罪がないことをもって慰謝料が大幅に増額されるケースは稀です。
謝罪や反省の有無の判断は、客観的な事情、例えば、配偶者からの接触禁止の求めに応じている、慰謝料請求に対して無視することなく速やかに対応しているなどの事情が重視されます。
⑭挑発的な言動や不誠実な対応
不貞当事者が不貞をされた配偶者に対し、挑発的な言動や不誠実な対応をした場合、配偶者の精神的苦痛を増加させたことや行為の悪質性が高いとして、慰謝料の増額事由に当たることがあります。
例えば、配偶者に対し暴言を吐いたり、慰謝料請求を無視するなどの対応があった場合には、慰謝料の増額事由に該当すると考えて良いでしょう。
3. まとめ
これまで述べきたとおり、不倫慰謝料の増額事由は、多岐に渡り、その評価も難しいことから、不倫慰謝料の請求を検討されている方は、一度弁護士に相談し、見通しを聞いてみると良いでしょう。
当事務所は、不貞慰謝料案件に注力しており、豊富な知識と経験を有していますので、的確な慰謝料額の見通しをお伝えすることができます。
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