調停や審判等で決められた義務を履行しない相手方に対しては、差押えなどの強制執行の申立てを行うことができます。
強制執行には、直接相手方の財産を差し押さえる方法もありますが(「直接強制」といいます)、相手方が一定期間内に義務を履行しない場合に、間接強制金を課すことで心理的圧迫を加えて、任意での履行を促す方法があります。これを「間接強制」といいます。
本稿では、間接強制を行うべきケースと申立方法を解説いたします。
目次
1 間接強制とは
「間接強制」とは、債務者が債務名義(判決、裁判上の和解、調停、審判等)上の債務を履行しない場合に、間接強制金(≒制裁金)の支払を命じることで、債務者に心理的圧迫を加えて、任意の履行を促す強制執行の方法です(民事執行法第172条)。
原則として、金銭の支払を目的とする債権に対しては、差押えなどの直接強制の方法によることになります。
間接強制は、債務名義上の作為義務や不作為義務の不履行に対して行うのが一般的です。
なお、直接強制に関しては、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
2 間接強制を申し立てるべきケース
前述のとおり、間接強制は、債務名義上の作為義務や不作為義務の不履行に対して行うのが一般的です。
実務上は、以下のケースで間接強制を申し立てることが多いです。
面会交流
面会交流とは
「面会交流」とは、子と離れて暮らしている父母の一方(非監護親)が、子と直接会ったり、電話、手紙、メールのやりとりをするなどして交流を図ることをいいます。
面会交流については、以下のコラムで解説しておりますので、面会交流について知りたい方はご確認ください。
直接強制はできない
面会交流を認める内容の調停又は審判が成立しているにもかかわらず、面会交流が実施されない場合には、間接強制の申立てを検討すると良いでしょう。
面会交流は、裁判所が強制的に子を連れ出して非監護親と交流をさせたとしても、子の健全な発達・成長のためにという面会交流の趣旨に沿った交流を実現することはできず、むしろ、子が面会交流を嫌がるようになってしまい、定期的・継続的な交流を阻害する可能性が高いという理由から、面会交流の直接強制はできないと解されています。
注意点
面会交流の間接強制で注意すべき点は、調停又は審判で「面会交流の日時又は頻度、面会交流時間の長さ、子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど給付の特定に欠けるところがないといえる場合」という要件が必要であることです(最決平成25年3月28日)。
例えば、以下のような内容であれば、面会交流の内容が具体的に定められていると判断されます。
- 頻度:月1回
- 日時:第1日曜日、午前10時から午後6時
- 引渡場所:◯◯公園入口
一方で、以下のような内容の場合、面会交流の内容が具体的に定められておらず、間接強制が認められないと判断される可能性が高いです。
- 妻は、夫が子と、月1回程度、面会交流をすることを認め、その日時、場所、方法等については、子の福祉に配慮し、夫婦間で別途協議して定める
間接強制金の相場
面会交流の間接強制金の場合、月額3〜10万円程度が相場ですが、婚姻費用や養育費の金額を基準にすることが多く、債務者の収入により金額が大きく異なります。
面会交流の間接強制の詳細については、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
子の引渡し
「子の引渡し」とは、一方の親が子を連れ去ったような場合に子を引き渡すよう求める手続をいいます。
子の引渡しは、直接強制の方法も可能ですが、子が嫌がったり怖がったりしてしまい、執行ができないことがあります。また、子を紛争に巻き込んでしまうリスクもあります。
これらのリスクを避けるために、子の引渡しの義務を履行しない親に対して、間接強制の申立てを行うことがあります。
子の引渡しの間接強制の場合、金額が高額に設定される傾向があり、月1万円の間接強制金の支払を命じた裁判例もあります。
なお、子の引渡しは、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
発信者情報開示請求・削除請求
インターネット上で誹謗中傷され、その内容が名誉権侵害等の法的権利を侵害するものである場合、投稿者(発信者)の情報の開示請求や投稿の削除請求をすることができます。
発信者情報開示請求は、IPアドレスが消えてしまうと発信者の情報が特定できないため、早急に手続を進めなければいけないケースもあります。
また、削除請求についても、早期に削除しないと投稿が拡散されたり、閲覧者が増えてしまうおそれがあることから、通常は早急に手続を進める必要があります。
そこで、発信者情報開示請求や削除請求を行う場合には、仮処分という通常よりも迅速な手続を利用することが多いです。
発信者情報開示請求や削除請求の仮処分の決定がなされると、サイト運営者は決定に従うことが多いですが、情報の開示までに時間を要したり、投稿の削除に応じないケースもあります。
そのような場合には、間接強制の申立てを行うのが有効です。
ほとんどのケースで、間接強制の申立てを行うことにより、投稿が削除されます。
発信者情報開示請求と削除請求については、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
3 間接強制の申立方法
①履行勧告
「履行勧告」とは、債務名義上の債務を履行しない相手方に対し、裁判所が債務を履行するように説得したり勧告する手続です。
履行勧告は、手数料が生じず、口頭での申出も可能であるため、簡便な手続といえます。
一方、相手方が履行勧告に従わない場合の罰則や強制力はないので、実効性の低い手続ではあります。
前述した面会交流や子の引渡しにおいては、まずは履行勧告から実施するというケースも少なくありません。
一方で、発信者情報開示請求及び削除請求の場合、履行勧告に応じる可能性が低いことから、実務上、履行勧告はほとんど利用されていません。
②間接強制の申立て
履行勧告を経ない場合、又は、履行勧告をしたが相手方が応じなかった場合には、間接強制の申立てを行いましょう。
申立先は、債務名義を取得した裁判所です。
また、申立てに必要な書類は以下のとおりです。なお、書類の提出方法は、直接裁判所に提出することもできますし、郵送による提出も可能です。
- 申立書(正本・副本) ※債務者が複数いる場合、副本は債務者の人数分
- 間接強制金の計算根拠の報告書
- 執行力のある債務名義の正本 ※執行力を付すためには裁判所に執行文の付与を申請する必要があります
- 債務名義正本の送達証明書
- 資格証明書(当事者が法人の場合)
- 収入印紙2000円分
- 郵券 ※郵券の金額と内訳は裁判所により異なりますので、事前に裁判所に確認しましょう
申立書や提出書類に不備がある場合には、裁判所から補正・追完の指示がありますので、裁判所の指示に従いましょう。
③間接強制の決定
間接強制の申立てが完了すると、特段の事情がない限り、裁判所が申立てを認容する決定を下します。
間接強制決定後も、債務者が債務を履行せず、間接強制金も支払わない場合には、間接強制金に対する強制執行を行うことが可能です。
4 まとめ
間接強制は、相手方が債務名義上の作為義務又は不作為義務を履行しない場合の手段として非常に有効です。
もっとも、裁判所を通じた手続になるため、手続が複雑になることも少なくありません。
当事務所は、面会交流や子の引渡しなどの家事事件、インターネット上の誹謗中傷などのインターネット・IT問題に注力しており、間接強制の経験と実績は豊富です。
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