夫婦が離婚をする際には、夫婦が婚姻中に築いた財産を夫婦で分け合うのが一般的です。
しかし、中には相手が自分の財産を開示せず、財産分与の協議が思うように進まない場合があります。
そこで本記事では、相手が財産の開示を拒否している場合の対処法について解説します。
目次
1 財産分与とは
民法第768条1項には、「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。」と定められています。
これが財産分与の根拠規定であり、夫婦が婚姻期間中に協力して築き上げてきた財産は、夫婦二人の共同の財産に該当するので、離婚に伴い分与すべきであるという考え方から、婚姻中に築いた財産は、どちらの名義であっても夫婦で2分の1ずつ分けるのが一般的です。
なお、財産分与の基礎知識は、こちらのコラムで解説しています。
2 財産分与における財産開示
前述のとおり、財産分与をするにあたっては、お互いの財産を2分の1ずつ分けることになるため、どの財産をどのように分けるか決定するためにも、まずはお互いの財産を互いに開示しあい、財産分与の対象となる財産を確認する必要があります。
しかし、この際に、財産分与で相手に財産を取られたくない等と考えて、財産の開示を拒否したり、財産を隠そうとしたりする人は、一定数存在します。
また、法律上、離婚の協議にあたって自分の財産の開示をしなければならないという規定は存在しないため、拒否しても罰則等はありません。相手がなかなか財産を開示しない場合には、以下で述べるような制度を使って、相手の財産を調べるようにしましょう。
3 相手が開示を拒否した場合の対処法
郵便物を調べる
未だ別居していない場合には、相手宛の郵便物から相手が保有している財産の状況が分かることがあります。
例えば、銀行からのお知らせや、証券会社、保険会社からのお知らせ等がある場合には、どこの会社から来ているかだけでも確認しておくと、以下で述べる弁護士会照会や調査嘱託が行いやすくなります。
ただし、相手宛の郵便物を勝手に開封してしまう等は避けた方がよいでしょう。
離婚調停を申し立てる
相手に直接財産の開示を求めても応じない場合には、離婚調停を申し立てることを検討しましょう。調停とは、1名の裁判官(又は調停官)と2名の調停委員で構成される調停委員会が、当事者の話し合いを仲介してくれる手続きです。
離婚調停では、離婚における様々な条件についても協議することができるため、財産分与についても話し合いができます。調停委員を通じて財産の開示を求めることで、相手が開示に応じてくれることがあります。
離婚調停の詳しい流れは、以下のコラムでご確認ください。
なお、財産分与は離婚成立後2年以内であれば請求することができるため、既に離婚している場合には、財産分与の調停を申し立てることができます。
弁護士を通じて説得する
相手がなかなか財産を開示しない場合には、弁護士に依頼し、弁護士を通じて説得することも考えられます。
弁護士であれば、以下で述べる弁護士会照会や調査嘱託という制度もあるので、開示を拒否しても最終的には財産を把握できることや、拒否すると協議が長引いてしまい相手にも不都合がある等、説得的な根拠と共に相手の説得をすることができます。また、弁護士が介入することで相手に対して開示へのプレッシャーを与える効果もあります。
弁護士会照会を利用する
弁護士会照会とは、弁護士が依頼を受けた事件について、証拠や資料を収集し、事実を調査するなど、その職務活動を円滑に行うために設けられた制度です(弁護士法第23条の2)。
この制度を利用すれば、弁護士会を通じて、銀行や保険会社に、口座の保有の有無や残高、生命保険への加入の有無や解約返戻金の額等の事項を照会できます。
ただし、どの銀行や保険会社に照会をするかについては、こちらで決める必要があるので、相手が保有している銀行や加入している生命保険に心当たりがある場合には、事前にその会社を確認しておくとよいでしょう。
また、弁護士会照会は、依頼を受けた事件についてのみ利用することが可能な制度なため、調停は自分で行い、照会だけ弁護士に依頼するといったことができない点には注意が必要です。
調査嘱託を行う
調査嘱託とは、裁判所が企業や団体に対し必要な調査を依頼し、回答を求める手続きです(民事訴訟法第186条1項)。
裁判所が企業等に調査をするため、調停や裁判などの手続きが進行している場合にのみ利用できます。
裁判所が嘱託の必要性があるかを判断するため、必ず行ってくれるわけではない点には注意が必要ですが、財産分与が必要なのに相手が財産を開示しないという場合には、裁判所も必要性を認めてくれる可能性が高いでしょう。
4 特有財産と財産開示
相手に財産の開示を求めた際に「特有財産なので開示しない」という理由で開示を拒否されることがあります。
特有財産とは、法律上、「夫婦の一方が婚姻前から有する財産」と「婚姻中自己の名で得た財産」をいいます(民法第762条1項)。例えば、独身時代に貯めていた預金は、夫婦の一方が婚姻前から財産にあたるため、財産分与の対象にはなりません。
ただし、特有財産については、それが特有財産にあたると主張する側が特有財産であることを立証しなければなりません。特に、独身時代に貯めていた預金を婚姻後も給与の振込先として使い、そこから生活費も支出していた場合には、日々の口座の利用の中で、特有財産と婚姻後の収入が混じりあってしまい、特有財産と共有財産の区別が困難であるとして、婚姻時の残高が特有財産であると認められない場合があります。
このように、相手が特有財産にあたると主張している場合でも、実際には特有財産であると認められない場合もあります。相手の「特有財産なので開示しない」という言葉を鵜吞みにするのではなく、特有財産の該当性を確認するためにも開示は必要であると主張し、開示を求めることをお勧めします。
5 まとめ
財産分与をする際は、相手の財産を正確に把握しないと思わぬ損をしてしまうことがあります。
相手が財産を隠匿している場合には、弁護士会照会や調査嘱託が有効ですが、弁護士会照会については、弁護士に事件の依頼をしていないと利用することができません。また、調査嘱託については、裁判所に対し必要性を説得的に説明する必要があります。ご自身のみでは対応が難しい場合には、弁護士に依頼して相手の財産を調査することで、適切な額の財産分与を受けることにつながります。
当事務所では、離婚案件に注力しており、財産分与の際の財産開示の実績も豊富です。相手が財産を開示せずお困りの場合は、問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。
