突然、配偶者の代理人弁護士から「受任通知」という書面が届いて驚いたという方もいらっしゃると思います。
本稿では、離婚事件において弁護士から受任通知が届いた場合の対処法を解説いたします。
目次
1. 受任通知とは
「受任通知」とは、一般的に弁護士が代理人(協議や裁判手続の代行を依頼された者)に就任した旨を通知する書面のことをいいます。
通常、受任通知には、依頼者の氏名、弁護士の氏名、弁護士の所属する法律事務所名、法律事務所の連絡先(電話番号やFAX番号等)、代理人弁護士として就任した旨、今後依頼者本人に連絡及び接触をすることは控え連絡がある場合には代理人弁護士を通すようにすることが記載してあります。
受任通知は、法律上定められた書面ではなく、基本的に受任通知の送付自体に法的拘束力はありません(例外的に金銭を請求する場合の時効の完成猶予や遅延損害金の起算点を定める効果が生じる場合もあります)。
2. 離婚事件における受任通知の内容
離婚事件の場合、受任通知の内容は主に以下の種類に分けられます。
①協議を求める内容
離婚に関し裁判外での協議を求める内容です。
この場合、相手方としては、協議離婚を希望している可能性が高いです。
②離婚条件を提示する内容
受任通知の段階で、具体的に離婚条件を提示してくる場合もあります。
もっとも、離婚事件の場合、養育費や財産分与の金額を算出するに当たり、配偶者の正確な収入や財産が不明であることが多いことから、当初より離婚条件を提示することは難しいケースが多いです。
そのため、離婚事件の受任通知においては、まずは収入資料や財産資料の開示を求めてくる場合の方が多いです。
③離婚条件の提示を求める内容
相手方が条件次第では離婚に応じるという意向の場合や双方離婚自体には同意しているが離婚条件で揉めているという場合には、受任通知に希望する離婚条件を提示するよう記載されていることがあります。
④近日中に調停を申し立てる旨の内容
近日中に調停を申し立てる予定と記載されている受任通知も多いです。
この場合、相手方としては、協議(裁判外での話合い)での解決は難しいと判断していることが多く、実際に近日中に離婚調停や婚姻費用分担調停を申し立ててくる可能性が高いです。
なお、離婚調停を申し立てられた場合の対処法については、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
⑤離婚を拒否する内容
こちらが配偶者に離婚を求めている場合で、相手方が離婚を強く拒否している場合には、離婚する意向はない旨の内容が記載されていることもあります。
この場合には、こちらから離婚調停の申立てを行うことを検討する必要があります。
離婚調停の申立方法や離婚調停の流れについては、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
3. 対応方法
無視する
上記④のように、近日中に調停を申し立てるという内容の場合には、相手方からの調停の申立てを待つというのも選択肢としてあり得ます。
しかし、上記①・②・③の場合、受任通知を無視してしまうと、相手方から調停を申し立てられる、又は、協議が進まない可能性が高く、本来であれば協議離婚で早期に解決できたにもかかわらず、紛争が長引いてしまったということになりかねません。
また、上記⑤の場合、こちらから離婚調停の申立て等の手続を行わないと、いつまでも離婚の話が進まないということになりかねません。
したがって、上記④の場合を除いては、受任通知を無視することはリスクが高いため、控えた方が良いでしょう。
配偶者に直接連絡する
受任通知を受領したにもかかわらず、代理人弁護士を通さずに直接配偶者に連絡してしまうことは非常に危険ですので、控えるべきです。
配偶者としては、直接やりとりをしたくない、連絡や接触をしたくないという意向を有しているために弁護士に代理人を依頼している可能性が高く、それにもかかわらず、直接連絡を取ってしまうと、ストーカー行為等の規制等に関する法律(通称「ストーカー規制法」)に違反するおそれがあり、最悪の場合、刑事事件に発展しかねません。
したがって、受任通知受領後に配偶者に直接連絡することは絶対に止めましょう。
代理人弁護士と直接連絡を取る
いきなり相手方の代理人弁護士と直接連絡を取ることもリスクが高いです。
離婚事件は、離婚事由・親権・養育費・面会交流・財産分与・慰謝料・年金分割など、一般的に争点の多い案件と言われており、法的知識が必要となることが多いです。
法的知識に基づききちんとした見通しを立てないまま、代理人弁護士に直接連絡してしまうと、不利な条件に合意してしまったり、不利な事実を認めてしまったり、交渉をうまく進められなかったりと、大きな不利益を被ってしまうおそれがあります。
受任通知が届いた場合には、まずは弁護士に相談し、見通し等を確認してから連絡をするか、後述するとおりご自身も弁護士に依頼して対応を一任するのが良いでしょう。
弁護士に依頼する
弁護士は、離婚事件の知識や経験を有していることから、ご自身で相手方の代理人弁護士と協議を行うことは難しいケースが多いです。
一般的には弁護士の方が交渉力が高いことが多いので、ご自身で交渉された場合、弁護士に言いくるめられてしまうこともあります。
配偶者が弁護士に依頼している場合には、ご自身も弁護士に依頼することを検討すると良いでしょう。
4. 婚姻費用分担請求について
配偶者と別居しており、かつ、配偶者の方が収入が低い場合又は配偶者が子と同居している場合には、受任通知において、婚姻費用という婚姻期間中の生活費の請求をしてくる可能性があります。
これは、婚姻費用の分担を請求できる始期が請求時であることから、受任通知を内容証明郵便で送付することにより、婚姻費用分担請求をしたことの証拠を残し、婚姻費用分担請求の始期を確定させることが目的です。
婚姻費用分担請求をされた時の対処法と基礎知識は、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
5. まとめ
これまで解説してきたとおり、配偶者の代理人弁護士から受任通知が届いた場合、ご自身で対応することは大きなリスクを伴います。
離婚や婚姻費用に関する受任通知が届いた場合には、まずは弁護士に相談した上で、ご自身も弁護士に依頼することを検討すると良いでしょう。
当事務所は、離婚案件に注力しており、離婚案件の経験と実績は豊富です。
弁護士からの受任通知が届いてお困りの方はぜひご相談ください。
ご相談に際しては、当事務所のホームページの問い合わせフォームよりご連絡ください。