近年、多数の口コミサイトがあり、口コミを参考にお店選びをする、就職先を探すといった方も増えてきています。
他方で、事実と異なる悪質な口コミに悩まされているというご相談も多くお受けします。
口コミは一般に率直な意見が記載されており、信用性が高いと捉えられる傾向にあるため、悪質な口コミを放置していると、お店や会社の信用性に大きな影響を及ぼすことになりかねません。
そこで、本記事では、悪質な口コミの削除方法について解説します。
目次
1. 口コミの削除方法3選
①サイト運営者の問い合わせフォームを用いて削除依頼をする
多くのサイトでは、悪質な口コミについての削除依頼や通報をするためのフォームが用意されています。
例えばGoogleマップの口コミであれば、該当の口コミ横のボタンから通報するか、又はヘルプセンターから通報ができます。
Googleビジネスプロフィールを登録している場合には、管理画面からも削除依頼ができます。
また、食べログの口コミであれば、口コミの右下部分に「問題のある口コミを連絡する」というボタンが設けられています。
サイト運営者へ投稿の削除を依頼する際のポイントは、投稿がなぜ削除されるべきであるかの理由を明確に伝えることです。
多くのサイトでは、口コミポリシーやガイドラインといったものが公開されており、それに違反する場合には口コミ削除の対象となります。
サイト運営者側としても、ポリシー違反や他人の権利を侵害している口コミでないものを無制限に削除することはないため、理由を明確に伝えられない場合には、削除してもらえることはないでしょう。
虚偽の口コミであることを証明できる客観的資料があれば、併せて提出するとより削除してもらえる可能性が高くなります。
例えば、Aというメニューを食べたが信じられないくらいまずいといった口コミに対して、Aという料理は提供していないことを示す店舗のメニュー表などが考えられます。
投稿内容が名誉棄損(公然と事実を適示したり、意見や論評をすることにより人・法人の名誉を棄損すること)に当たる場合、つまり、口コミがお店や会社の社会的評価を下げるようなものである場合には、名誉棄損の要件を整理して、該当性を説明するといいでしょう。
名誉棄損については、以下のコラムで詳しく解説しているため、併せてご確認ください。
②一般社団法人テレコムサービス協会が作成したガイドラインに基づいて削除請求をする
①の方法を取っても削除がされなかった場合、一般社団法人テレコムサービス協会のガイドラインに基づいて削除請求をすることも考えられます。
一般社団法人テレコムサービス協会は、インターネットサービスのプロバイダ等が所属している団体です。
同団体が公開している削除請求の書式に必要事項を記載することにより削除が請求でき、請求を受けたサイトは、投稿者の意見も聞いたうえで口コミの削除をするか否かを決定します。
こちらについても、確実に削除されるという手続ではないため、やはり削除の根拠を明確に記載して請求することが重要です。
③裁判所に対し、削除命令をするよう申立てを行う
①や②の方法でも口コミの削除がされない場合、裁判手続を利用することも検討しましょう。
具体的には、裁判所に対し、投稿の削除命令を出すように仮処分命令申立を行います。
仮処分とは、争いのある権利関係について、暫定的な措置をすることを認める手続です。
インターネット上の投稿により権利侵害を受けた人が裁判所に申し立て、裁判所が必要性を認めた場合、投稿を削除せよという仮処分命令が発令されます。
あくまで暫定的な手続ではあるものの、仮処分命令が出されれば、投稿の削除を実現できること、また通常の民事訴訟の手続と比べて簡易・迅速に判断をしてもらえるため、投稿を放置しておくことにより被害が拡大してしまう削除請求の場面では、仮処分命令の申立てをすることをお勧めします。
仮処分の申立ては、申立書を管轄の裁判所(サイト運営者の所在地のを管轄する裁判所)に提出することで行います。
詳しい手続は、以下のコラムで解説していますので、ご確認ください。
2. 口コミの投稿者への請求
投稿の削除とは別に、投稿者に対して損害賠償請求をすることも考えられます。
例えば、口コミの内容が名誉棄損である場合(口コミの内容によって、お店や会社の社会的評価が下がった場合)には、それにより被った損害の賠償を請求することができます。
法人に対する名誉棄損については、個人に対する場合と比べて、事業へ影響が出る、売上が減少するなど、被害の程度が多いことが一般的であり、賠償額が高額になる傾向があります。
投稿された内容や頻度、回数にもよりますが、50万円~100万円程度の賠償を得ることができる可能性があります。
ただし、多くの口コミは匿名で投稿されているため、投稿者へ請求するためには、まずは投稿者を特定することが必要です。
投稿者を特定するためには、発信者情報開示請求という手続を利用します。
発信者情報開示請求とは、プロバイダに投稿者の情報(住所や氏名、メールアドレスなど)を開示するよう請求する手続です。
サイト運営者に対して、発信者のIPアドレスを開示させたうえで、プロバイダ宛に該当のIPアドレスの契約者の情報を開示させるという流れで投稿者を特定していきます。
詳しい手続は、以下のコラムで解説していますので、ご確認ください。
なお、サイト運営者がIPアドレスを保存している期間は、通常3か月から6か月程度といわれており、投稿から時間がたってしまうと、ログが残っておらずに投稿者の特定ができないことになってしまうため、早めに請求をする必要がある点に注意が必要です。
また、手続の中で投稿のURLや投稿の内容を明らかにする必要があるため、口コミの削除依頼をしている場合には、削除がされる前にURLと投稿日時や投稿内容、投稿者のアカウントが分かる画面をスクリーンショット等で保管しておくようにしましょう。
3. 削除ができない場合の対処法
口コミの削除について解説してきましたが、前述した方法を試しても口コミの削除がされない場合やなどには、以下のような対応をすることにより、お店や会社の信用が下がることを避けることも考えられます。
①口コミへ返信する
悪い内容の口コミであっても、丁寧に返信し、誤解がある場合には誤解を解くような説明をすることで、お店や企業の印象が悪くなることを防ぐことができる場合もあります。
ただし、喧嘩腰で言い返したり、相手を侮辱するような投稿をしてしまうと逆効果になってしまったり、最悪の場合にはこちらが訴えられてしまうということにもなりかねないため、投稿内容には十分注意しましょう。
②良い口コミを増やす
数個の悪い口コミがあったとしても、良い口コミが多ければ、お店や企業の印象が悪くなるのを防いだり、悪い口コミのみが目立ってしまうことにならない場合も多いでしょう。
お客様に積極的に口コミを投稿してもらえるよう促すことも有効な対処法です。
なお、口コミの投稿と引き換えにプレゼントをするなどという場合、サイトによっては規約違反になってしまうこともあるので、規約をよく確認したうえで実施するとよいでしょう。
③警察へ相談する
公然と事実を適示(挙げて)人や法人の社会的評価を下げた場合には、刑法上の名誉棄損罪に該当します(刑法第230条)。
また、虚偽の風説を流布(虚偽の事実を不特定又は多数の人に伝えること)し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損したり、業務を妨害した場合には、信用棄損罪に該当します(刑法第233条)。
具体的には、「料理に虫が入っていた」とか「消費期限切れの食材を使った料理を提供している」など嘘の口コミを投稿した場合などがこれにあたります。
このように、悪質な口コミの中には、刑法上の犯罪に問われるケースもありますので、警察に相談することも対処法の一つでしょう。
警察が捜査を開始することにより、相手が取り調べなどを受け、結果的に投稿を削除してもらえたり、相手から示談の申し入れがあり、損害の補償を受けられる可能性もあります。
4. まとめ
悪質な口コミは、放置してしまうとそれが事実のように受け取られ、事業に大きな影響を及ぼす事態になりかねません。
当事務所にご相談をいただければ、どのような口コミであれば削除がなしうるのかや、損害賠償をどの程度受けられる可能性があるのかといった詳細な見通しをお伝えすることができますので、まずはお問い合わせフォームよりお問い合わせください。