不貞相手の配偶者から、家族や職場に言う、と言われているがどうすれば良いか?というご相談を受けることがあります。
不貞行為をしてしまっていて、それが相手の配偶者にばれてしまっている場合、相手の配偶者からこのようなことを言われ、不安に感じている方もいらっしゃるでしょう。
本記事では、そういった場合の対策についてご紹介します。
目次
1. 職場に言うといわれている場合でも、まずは落ち着いて対応しましょう
自分の配偶者が不貞行為をしていることを知った場合に「職場に言う」などと連絡をしてくる方は、一定数以上いらっしゃいます。
特に、配偶者と不貞相手が同じ職場であったりすると「職場に伝えて処分してもらおう」と考える人が多いようです。
しかし、実際に職場や家族にばらされてしまった、というケースはそこまで多くありません。
なぜなら、冷静に考えれば、相手から見れば、職場や家族に言うことにメリットはないからです。
多くの会社の就業規則には、会社の名誉・信用を毀損したときには懲戒処分を行うといった定めが置かれていますが、会社が懲戒処分を行うのは、あくまで会社業務との関係で社員に非行があった場合です。
不貞行為という、会社の業務に直接関連しない私生活上の事柄について、会社が処分を行うことは基本的にはありません(例外的に、例えば取引先の会社の従業員と不貞行為をしていて、それが問題となり、取引の継続に影響を与えた場合など、会社の業務にも影響が出た場合などは、懲戒処分がされることもありえます)。
また、仮にばらしてしまった場合には、自身が名誉棄損であるとして、損害賠償請求や刑事告訴をされてしまうおそれがあります。
名誉棄損とは、事実を述べることによって、その人のその人の社会的評価を低下させることにより成立します。
不貞をしていたという事実を職場に伝えることにより、その人の社会的評価は通常低下するといえるため、基本的には名誉棄損が成立することが多いです。
このように、会社に不貞行為を行っていることを伝えたところで、望むような効果がない一方、自身へのデメリットがあることから、相手にそれを正しく伝えることによって、思いとどまってくれる場合も多いです。
一方、不貞行為を会社に言われる、と伝えられた場合、そのようなことは、何としても避けたいと考えるでしょうから、そう言われて慌てて相手の言いなりになってしまう、不貞行為があったことを認めてしまうなどの対応を取ってしまうことがあります。
しかし、慌てて相手の言うことを受け入れてしまうことは避けましょう。
相手としても職場に言うということを交渉のカードの一つとして考えている場合もありえますので、職場に言わないでほしいのであれば高額な慰謝料を支払うべきだ、などと主張してくることも想定されるからです。
もちろん、既婚者と知ったうえで不貞行為をしてしまったのであれば、一定額の慰謝料を支払う必要があることが通常です。
ただし、相手のいいなりになって不必要に高額な慰謝料を支払う必要はありませんから、慌てて慰謝料を支払うことを合意することは避けましょう。
一度合意してしまうと、あとからその金額を減額してしまうことは、非常に難しくなるためです。
「脅迫されたので、合意は無効ですよね?」というご相談をよく受けますが、民法上の「強迫」を理由とする取消し(民法第96条1項)が認められるためには、強迫があったことをこちらが証明しなければならず(「立証責任」といいます)、立証は困難を極めるケースが多いので、やはり合意してしまうのは非常に法的リスクの高い行為になります。
2. 具体的な対応
上記のとおり、不貞相手の配偶者には、職場にばらすことはデメリットしかないということを分かってもらう必要があります。
ただし、相手からみれば、こちらが加害者で、自分が被害者という中で、「ばらすとこんなデメリットがありますよ」と口頭で伝えても、反省していないように受け取られ、逆に相手を怒らせてしまうことが考えられますので、注意が必要です。
当事者同士のやり取りでは、お互いに冷静になれないことも多いですし、相手とすれば、「自分は被害者で、相手は加害者なのに、反省せずに開き直っている」という印象を持ってしまうことがあります。
そのため、直接のやり取りは避けたほうが良い場合が多く、弁護士に依頼をしたうえで対応することをお勧めします。
弁護士に依頼をすることにより、こちらの主張を書面で明確に伝えることができます。
相手が職場にもし不貞行為をばらすことを交渉のカードに利用しようとしている場合には、弁護士が代理人となったことを伝えることにより、そのような主張が難しくなったことを相手に把握させることができます。
また、職場にばらすようなことがあれば、名誉棄損であるとして法的措置を取らざるを得ないことを伝えることにより、相手にもデメリットがある行為であることを理解してもらうことにもつながります。
実際に、相手から職場に言うと脅されているというご相談をいただいた件では、弁護士名で書面を送ることで、相手も冷静になり、あとは適正額での慰謝料額の支払いなど建設的な交渉のみを行って、速やかに解決できた、ということが多いです。
なお、法律上不法行為に当たるとして、慰謝料の支払いが必要な不貞行為とは、「配偶者がいるにも関わらず、他の異性と性的関係にいたること」をいいます。
単にデートをしただけ、キスをしただけということであれば、そもそも不貞行為に当たりませんので、そういった場合には、こちらが不貞行為をしていないことをきちんと主張する必要があります。
3. 家族に言うといわれている場合
家族に言うといわれている場合であっても、基本的には落ち着いて対応することが1番です。
相手が「家に来て家族に言う。言われたくなければ慰謝料を●円支払え」などと言っている場合には、場合によっては、強要罪(刑法第222条1項)にもなりえますので、実際に家の前まで相手が来ている場合などは、警察に通報し、対応を依頼することも考えましょう。
相手の行為の態様にもよりますが、弁護士にご相談をいただければ、事前に警察と連携しておくことも可能となります。
また、不貞行為をしてしまった場合に、慰謝料を支払わなければならないのは、不貞行為をした両名となります。
そのため、不貞相手も、あなたの配偶者に対して慰謝料を支払う義務があることとなります。
不貞相手の配偶者としては、せっかく慰謝料をもらっても、自分の配偶者も慰謝料を支払うことにより、家計で見るとプラスマイナスゼロであったということもあり得ることになりますから、家族に不貞相手をばらすことは、不貞相手の配偶者から見ても、デメリットとなります。
そのような観点からも、相手に冷静にさえなってもらえれば、家族に言うことを止めることができる場合があります。
4. 弁護士が介入した際の具体的な対応方法
まず、弁護士から相手方に「受任通知」という書面を送付します。
受任通知の内容は、①弁護士が介入したので依頼者には今後一切連絡及び接触をしないこと、②家族や職場に連絡及び接触することも厳に慎むこと、③万が一、依頼者本人、その家族又は職場に連絡ないし接触をした場合には、訴訟提起や刑事告訴等の法的措置を講ずる所存であることになります。
受任通知の送付後は、一切相手方と連絡を取る必要がなくなります(むしろ連絡を取らないようにしていただきます。
せっかく弁護士が介入したにもかかわらず、連絡を取ってしまうと、相手方は「本人に直接連絡をすれば、まだ連絡が取れる」と期待してしまうためです)。
送付方法は、内容証明郵便で送付するという方法もありますが、緊急性の高い案件の場合には、受任通知のデータをLINEで転送する方法、弁護士が直接電話をかけて介入する方法を取ることもあります。
特にLINE転送の方法はよく使用します。
内容証明郵便は、郵送のため相手方に到達するまでにタイムラグが生じる、相手方が受け取らない可能性があるなどのデメリットがあります。
一方で、LINE転送は、ご依頼後、すぐに送付することができますし、相手方がすぐに受任通知を読む可能性が高いためです。
相手方の住所や電話番号が不明という場合も有効な手段になります。
弁護士介入後は、すべて弁護士が窓口になり、相手方と交渉を行います。
相手方が受任通知の内容を無視して直接依頼者本人に連絡や接触をしてきた場合には、警察に通報した上で、弁護士と警察が連携して相手方に警告することもあります。
弁護士介入後に直接連絡又は接触してくる相手方は少ないですが、弁護士に加え、警察まで介入すると、直接連絡又は接触を継続してくる相手方はほとんどいません。
また、弁護士に相談する前に警察に相談したが、相手にしてもらえなかったという方もいらっしゃるでしょう。
弁護士が介入することで警察が協力してくれるようになることも多いです。
5. まとめ
以上のように、不貞相手の配偶者から職場や家族に言うと脅されている場合には、相手と冷静に交渉することで止められる場合が多いです。
しかし、ご自身で交渉することは、精神的にも辛いことが多いでしょうし、相手としても冷静になれないことから、返って相手との関係がこじれてしまうということもよくあります。
弁護士が第三者の立場から客観的にこちらの主張を伝えることで、建設的な交渉につながりますし、ご自身も直接やり取りをしなくてよくなり、ストレスやご不安な気持ちを和らげることができます。
特に、本件のような場合は、一度職場や家族にばらされてしまうと取り返しがつかないことから、速やかに対応をする必要があります。
当事務所では、迅速丁寧な対応を心がけていますので、相手へすぐに連絡することも可能です。
もし悩まれている方がいらっしゃれば、ぜひ一度お気軽にご相談ください。