「夫や妻の不倫相手に対して慰謝料を請求したいけど、不倫相手の名前や住所が分からない」といったお悩みをお持ちの方のために、本記事では、不倫相手の氏名や住所を調べる方法を解説します。
目次
1. 慰謝料を請求するためには何が必要？
不倫相手に慰謝料を請求する方法は様々考えられますが、内容証明郵便を送付して慰謝料を請求する方法が一般的です。
内容証明郵便にて慰謝料請求することを通知することで、いつどのような内容の請求をしたかを証拠として残すことができますし、慰謝料請求権が時効により消滅してしまうことを防ぐこともできるためです。
内容証明郵便を送付する場合には、相手の氏名（苗字だけでなく、名前も必要となります）や住所が分からなくては送付することができません。
住所が分からない場合に、例えば当初は電話などで交渉することも考えられますが、交渉が決裂して裁判をしなければならない場合には、相手の氏名や住所が分からなくては手続ができないため、慰謝料請求をする場合にはやはり氏名や住所といった情報は必須とお考えいただいた方が良いでしょう。
2. 不倫相手の氏名や住所を調べる方法はある？
では、不倫相手の氏名や住所を調べる方法はあるのでしょうか。
以下で考えられる方法を解説します。
①不倫相手や配偶者に聞く
まずは、不倫相手やご自身の配偶者に聞いてみるという方法が考えられます。
不倫相手としても、住所を隠すことのデメリットがある（勤務先に慰謝料請求の書類が送付されてしまうなど）ことを理解していることも多く、教えてくれる場合も多いです。
また、ご自身の配偶者が不倫をしたことを認めている場合には、配偶者に対して聞いてみることも考えられます。
ただし、不倫相手をかばおうとして教えてくれない場合も多々あります。
また、こちらが不倫相手の氏名や住所を把握できていないことを配偶者に知られてしまうので、配偶者に「自分が教えなければ慰謝料請求はできないだろう」と思わせてしまう可能性がある点には注意が必要です。
②弁護士会照会を利用する
弁護士に依頼をすることにより、弁護士会照会という制度を利用できます。
弁護士会照会とは、弁護士法で定められた法律上の制度であり、弁護士が依頼を受けた事件についての証拠や資料を収集したり、事実を調査したりするために設けられたものです。
この制度を利用すると、弁護士は、所属している弁護士会を通じて、企業や団体に必要な事項の照会をすることができます。
そこで、以下では具体的に考えられる弁護士会照会の方法について解説します。
②-1不倫相手の携帯電話番号が分かっている場合
不倫相手の携帯電話番号が分かっている場合には、不倫相手が利用している携帯電話会社（ドコモ・ソフトバンク・auなど）宛に弁護士会照会をすることができます。
携帯電話会社は、該当の番号を利用している人の氏名や住所などの契約情報を持っていますので、氏名や住所を確認することができます。
②-2不倫相手の車のナンバーが分かっている場合
例えば不倫相手の車で二人がドライブに行っている写真があり、車のナンバーが把握できているといった場合には、運輸局に対して該当の車のナンバーを所有している人の情報（氏名や住所など）を照会することができます。
ただし、車のナンバーは、数字部分だけでなく、登録場所（品川●●）やひらがなの部分などすべて分かっている必要がある点には注意が必要です。
②-3不倫相手のLINE IDが分かっている場合
不倫相手のLINE IDが分かっている場合には、LINEヤフー株式会社に対してLINEに登録されている電話番号を照会することができます。
電話番号が分かれば、その後は②-1のとおり、携帯電話会社に照会をして氏名や住所を確認できます。
ただし、LINEを利用した照会の場合には、LINE IDが分からなければなりません。
例えばトーク画面の写真には、アカウント名のみしか表示されておらず、LINE IDは表示されていません。
アカウント名のみしか分からない場合、照会をしてもLINEヤフー社から回答を得ることはできないため、注意が必要です。
②-4不倫相手のメールアドレスが分かっている場合
不倫相手のメールアドレスが分かっている場合には、弁護士会照会を利用できる場合と、そうでない場合があります。
例えば、携帯電話会社のメールアドレス（キャリアメールアドレス）であれば、そのメールアドレスを利用している人の携帯電話番号の情報を携帯電話会社が保有しているため、携帯電話番号を入手することができます。
他方で、フリーメール（gmailなど）の場合には、照会先の会社（サービスを提供している会社）が携帯電話番号や住所などの情報を持っていない場合も多く、照会をすることが難しくなります。
以上のように、不倫相手の一部の情報のみしか分からない場合でも、弁護士会照会を利用することで、不倫相手の氏名や住所を調べることができることがあります。
ただし、弁護士会照会という制度を利用したとしても、照会先企業が回答を拒否する場合があることには注意が必要です。
また、弁護士会照会は、弁護士が受任した事件のためにのみ利用できる方法です。
そのため、慰謝料請求は自分でやるが、氏名や住所の調査のみ弁護士に依頼するということはできず、慰謝料請求を含めて弁護士に依頼をする必要があります。
③不倫相手の自宅の場所のみが分かっている場合
例えば、探偵による浮気調査をした場合などは、不倫相手の自宅の場所のみが分かっているということもあるでしょう。
このような場合には、住宅の登記を取得することが考えられます。
登記には物件の所有者が記載されているので、登記から不倫相手の氏名が分かる場合があります。
また、所有者が不倫相手本人ではない場合でも、住所が分かっている場合には、弁護士が「職務上請求」という方法で住民票を取得できます。
職務上請求とは、弁護士や司法書士などが、その職務遂行に必要な範囲で、第三者の住民票や戸籍謄本等を取得できる制度です。
住民票には、同居している家族の氏名がすべて記載されていますので、不倫相手の氏名が分かる場合があります。
ただし、不倫相手の自宅がマンション等の場合には、部屋番号まで分かっている必要がある点には注意が必要です。
3. 不倫相手の住所や氏名を調べる場合に注意すべきこと
①自分で調べる場合
上で述べたような方法が使えない場合には、不倫相手を尾行して自分で調べるということが考えられます。
しかし、尾行になれていない一般の方が尾行をしたとしても、うまくいくことはあまりありません。
相手を見失ってしまうだけであれば良いですが、相手にばれてしまいストーカーの疑いをかけられてしまったり、相手の自宅の敷地に侵入したなどとして刑事事件に発展してしまったりと、大きなリスクを伴う可能性がありますので、あまりお勧めはできない方法です。
②探偵に依頼する場合
探偵に依頼することにより、氏名や住所調査に加えて、不倫の確実な証拠を押さえられることもあります。
ただし、探偵に依頼する場合には、探偵費用が高額になりすぎてしまい、不倫相手から受け取ることのできる慰謝料の額を超えてしまわないように注意が必要です。
探偵は、配偶者が不倫相手と会うであろう日を予測して尾行するという方法を取ることから、その予測が外れてしまうと、何度も調査が必要になり、調査費用が高額になりかねません。
探偵費用も不倫相手に請求できるのでは、と考えている方もいらっしゃいますが、不倫相手がよほど巧妙に隠ぺい工作をしていたなどの一部の例外的な場合を除いて、探偵費用を不倫相手に請求することはできないので、費用対効果をよく考える必要があるでしょう。
4. 不倫相手の勤務先のみが判明している場合
どうしても不倫相手の連絡先などが分からないけれど、勤務先は判明しているという場合もあるでしょう。
このような場合に、勤務先に連絡をしたり、慰謝料を請求する書類を送ったりすることはできないか、というご相談を受けることがあります。
まず前提として、職場に対して不倫をしていることをばらしてしまった場合には、名誉棄損であるとして、刑事事件に発展してしまったり、民事であっても損害賠償請求を受けたりしてしまう可能性がある点に注意が必要です。
このような場合には、相手もあなたに慰謝料を請求する可能性があり、結果としてあなたが受け取れる慰謝料の額も減ってしまうおそれがあります。
ただし、そうはいっても、どうしても相手の勤務先しか分からないという場合もあるでしょう。
このような場合には、勤務先に対して内容証明郵便を送ることも一応考えられます。
特に、調査を尽くしても住所が判明しなかった場合には、妥当な方法であったといえることもあるでしょう。
ただし、前述のようなリスクがあるため、安易に送ることは避け、内容証明郵便を送ったとしても問題ない場合であるかを必ず弁護士に確認してから送付するようにしましょう。
また、送付する場合でも、本人のみしか内容を確認できないように、本人限定受取の方法としたり、中身が分からないような封書で送るなどの工夫が必要であるかも確認が必要です。
5. 不倫相手のSNSのみしか分からない場合
不倫相手のX（Twitter）やFacebookのアカウントのみが分かっている場合、フリーメールアドレスの場合と同様に、そもそも照会先がアカウント保有者の氏名や住所などの情報を保有していないことが考えられます。
また、SNSサービスを外国の会社が運営している場合には、照会先が外国企業となると考えられますが、外国企業は弁護士会照会に応じることはありませんので、SNSのアカウントしか分からない場合には、弁護士会照会をすることは基本的には難しいでしょう。
ただし、このような場合であっても、例えばプロフィールや投稿内容から勤務先や氏名が判明することはありますので、まずは投稿内容を確認すると良いでしょう。
6. まとめ
不倫相手の氏名や住所が分からない場合に、ご自身のみで調べることはハードルが高いといえます。
当事務所にご依頼をいただいた場合、判明している情報に応じて、取り得る方法を具体的にアドバイスいたしますので、お困りの場合は、一度お気軽にご相談ください。
