「リベンジポルノの被害に遭ってしまい、慰謝料を請求したい」スマートフォンやSNSの普及により、リベンジポルノの被害にあってしまう方も増加傾向にあります。
そこで、本記事では、リベンジポルノの被害にあってしまった方のために、慰謝料の請求方法や相場、慰謝料の増額要素などについて解説します。
目次
1. リベンジポルノを理由に慰謝料請求できる?
リベンジポルノとは、元交際相手に振られた腹いせなどのために、交際時に撮影した性的な写真や動画を、インターネットなどを通じて不特定多数に配布、公開する行為をいいます。
リベンジポルノの公表は、2014年に成立した私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(いわゆるリベンジポルノ防止法)の公表罪(同法第3条1項)や、刑法上の名誉棄損罪(同法第230条)に該当する行為です。
また、刑事罰以外にも民法上の不法行為に該当する行為です。
不法行為とは、他人の権利や法律上保護された利益を侵害する行為のことをいい、侵害された側は、相手に対して損害賠償を請求することができます(民法第709条)。
この損害賠償請求のうち、精神的な損害を慰謝するための金銭を「慰謝料」といいます(民法第710条)。
リベンジポルノの被害にあった場合、名誉権やプライバシー権などの権利を侵害されたこととなり、相手に対して慰謝料を請求することができるのです。
2. リベンジポルノの慰謝料の相場は?
一般に、名誉権やプライバシー権を侵害された場合の慰謝料は10万円~50万円程度であることが多いですが、リベンジポルノの場合には、50万円~100万円程度が相場となります。
これは、性的な画像の公表は、他の名誉権侵害(例えば、名誉を棄損するような内容を掲示板に投稿された場合など)などに加えて、被害を受けた場合の精神的苦痛が大きく、公表されることにより被る不利益が大きいとされているためです。
3. リベンジポルノの慰謝料が相場より高くなる場合とは?
前述のとおり、リベンジポルノの慰謝料の相場は50万円~100万円程度であることが多いですが、慰謝料は精神的苦痛の大きさにより異なるものであり、事例ごとに相場が変動しうるものです。
以下のような場合には、精神的苦痛が大きく相場より高額な慰謝料を獲得できる可能性が高いといえるでしょう。
①画像が過激・露骨である場合
画像が過激なものである・露骨であればあるほど、それを公表されてしまった場合の精神的苦痛は大きいといえるでしょう。
例えば、着衣を一部身に着けている写真より、裸の写真の方がより公表されたくないといえるので、画像の内容は慰謝料の額に影響を与える事情となります。
②撮影の仕方が悪質である場合
行為の悪質性についても、慰謝料の増額要素の一つです。
例えば、撮影自体には同意していた画像や動画を拡散するより、盗撮など勝手に撮影をしていた画像や動画を拡散する方が、行為の悪質性は高いといえ、慰謝料の総額が認められる可能性があるでしょう。
③拡散されている場合
例えば、フォロワーのみなど限られた人のみが閲覧できる場所で公開いる場合と、インターネット上で無制限に多数の人に公開されている場合の方が精神的苦痛は大きくなるといえるでしょう。
他の掲示板やSNSなどにも転載されている、多くの人がリツイート(リポスト)しているなどといった事情があれば、慰謝料はより高額になるといえます。
④被害者に与えた影響が大きい場合
例えば、リベンジポルノの被害によって精神障害(PTSDなど)を発症してしまった場合や、うつ状態となり仕事を休業せざるを得なかった場合など、被害者に与えた影響が大きい場合には、慰謝料が高額になる傾向があります。
なお、リベンジポルノの被害にあってしまったことにより、仕事を休まざるを得なかった場合には、慰謝料に加えて休業損害を請求できる可能性もあります。
4. リベンジポルノの被害に遭った場合の慰謝料請求の方法は?
リベンジポルノの慰謝料請求をする場合に考えられる代表的な方法は、以下のとおりです。
①相手に対して内容証明郵便を送付する
まず考えられる方法として、相手に対して内容証明郵便を送付して慰謝料を請求するという方法があります。
内容証明郵便とは、誰が、いつ、どんな内容の文書を誰に対して送付したのかを、郵便局が証明してくれる制度です。
相手に対していつ慰謝料を請求したかということが明確にできますし、メールや口頭等で請求するより相手もプレッシャーを感じるでしょうから、交渉がしやすくなるというメリットがあります。
また、③で述べる民事訴訟の提起と比べて、手間やコストが抑えられる点もメリットです。
②被害届を提出する・刑事告訴をする
前述のとおり、リベンジポルノは、リベンジポルノ防止法にいう公表罪に該当するなど、刑事罰の対象となる行為です。
そこで、警察へ被害届を提出する・刑事告訴をすることにより、刑事事件となり、警察が捜査を開始してくれる可能性があります。
警察が捜査を開始すると、相手は取り調べを受ける、場合によっては逮捕されることもありえます。
相手としては、示談をすることによって刑事裁判を受けることを防ぎたいという強い動機を持つことになりますので、示談交渉がスムーズに進むことが考えられます。
また、既に刑事事件化している場合、相手は、刑事裁判を避けるために早期に示談をする必要があるため、刑事事件化していない場合と比べて、高額な慰謝料を獲得できることもあります。
なお、示談交渉は、通常は、相手が委任した弁護士より、示談をしたいという申し入れの連絡が来る形で始まります。
警察から、加害者の弁護人に連絡先を教えてよいか?と確認があると思いますので、示談交渉をしてもよいとお考えの場合には、連絡先を教えてよい旨を回答するようにしましょう。
③民事訴訟を提起する
①の方法で内容証明郵便を送付しても、相手が全く交渉に応じない・刑事事件化はしたくないといった場合には、民事訴訟(裁判)を提起し、損害賠償請求をすることを検討しましょう。
民事訴訟は、裁判所に、訴状といってあなたの主張や、なぜあなたが相手に対し損害賠償請求ができるのかといった請求の根拠を記載した書面を提出して行います。
前述のとおり、リベンジポルノは民法上の不法行為に該当しますので、そういった点を訴状に記載するようにしましょう。
また、民事訴訟であなたの請求が認められると、その判決を元に強制執行手続きができるようになります。
強制執行手続きとは、判決で認められたにもかかわらず、相手が任意に判決通りの額を支払わない場合に、裁判所がお金を払わない人(債務者)の財産を差し押えてお金に換え(換価)、債権者に分配する(配当)などして、債権者に債権を回収させる手続です。
5. リベンジポルノで慰謝料請求をする場合に準備すべきこと
リベンジポルノを理由に慰謝料請求をする場合には、証拠が必要となります。
内容証明郵便を送付して相手と交渉をする場合、相手が「自分はそんなことをしていない」という反論をすることが考えられますし、民事訴訟を提起する場合、裁判官にリベンジポルノの被害があったことを認めてもらわなくてはなりません。
警察も、証拠が一切ない状態では捜査を開始できないでしょう。
具体的には、以下のような証拠を保管しておくようにしましょう。
・SNS等に投稿された画面のスクリーンショット(投稿されたURLや日時が分かるもの)
6. リベンジポルノの慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット
リベンジポルノの慰謝料請求をする場合には、弁護士に依頼することを検討しましょう。
弁護士に依頼することのメリットは以下のとおりです。
①交渉を全て一任できる
加害者と直接交渉する場合や、ご自身で民事訴訟を提起する場合などには、どうしてもリベンジポルノの被害を何度も思い出さなければならない機会が増えてしまいます。
そのたびに嫌な記憶を思い出すことは、相当なご負担になってしまうでしょう。
弁護士に依頼すれば、相手との交渉や、交渉・裁判の書類の作成も全て一任できるので、慰謝料請求の際の負担を軽減することができます。
②高額な慰謝料を請求できる可能性が高まる
前述のとおり、慰謝料の相場は精神的苦痛の大きさで決まります。
ただし、相手との交渉で額を決める場合には、相手が合意さえすれば、相場より高額な慰謝料を獲得できることがあります。
弁護士は、交渉のプロともいえますし、示談交渉等の経験も豊富なので、ご自身で交渉するより、高額な慰謝料を獲得できる可能性が高いといえるでしょう。
③警察と連携して対応できる
慰謝料請求をするにあたり、刑事告訴や被害届を提出することにより、相手が交渉に応じやすくなることは既に述べたとおりです。
しかし、被害届を提出しても、警察はすべての場合に捜査を開始してくれるわけではありませんし、刑事告訴は、法律上決められた要件を満たしていないと受け取ってもらえないこともあります。
弁護士に相談をすることで、警察としても被害があったことが確かであると確認しやすくなりますので、被害届や刑事告訴を警察に受領してもらいやすくなり、示談交渉もスムーズにできることがあるでしょう。
7. まとめ
リベンジポルノの被害にあってしまった場合には、相手に対して慰謝料を請求することができます。
慰謝料の請求の際には専門的な知識が必要なこともあります。
また、適切な慰謝料の額を判断できないと、本来は獲得できた慰謝料を獲得できなかったということにもなりかねません。
当事務所にご相談をいただければ、詳細な見通しをお伝えすることも可能ですので、慰謝料請求をお考えの方は、問い合わせフォームより、お気軽にご相談ください。