相続が発生した場合には、まずは被相続人がどのような財産を有していたかを把握することが必要です。
財産を正しく把握できていないと、相続人同士でどのように財産を分けてよいのかも分からなくなってしまいます。
また、もし被相続人に多額の負債があった場合には、負債を相続しなければならなくなってしまいます。
そこで、本記事では、相続が発生したらまずすべきである相続財産調査の方法を解説します。
1. 相続財産調査の必要性
被相続人が死亡し、相続が発生したとしたら、速やかに相続財産調査を行いましょう。
特に遺言書がない場合には、どのような財産があるかを把握しないと遺産分割協議(どの財産をどの相続人が取得するかを話し合うこと)が開始できません。
また、被相続人が死亡したことを知った日から10か月以内に相続税の申告をしなくてはならないので、早めに財産の調査を進め、遺産分割協議をする必要があります。
また、仮に被相続人に債務(借金)があった場合には、相続放棄を検討することとなりますが、相続放棄は原則として相続開始から3か月以内に行う必要があります。
この観点でも、早めに調査をする必要があるといえるでしょう。
被相続人が財産を有していないと認識していても、実は何十年も前に開設した口座に預金があったり、株式投資をしていたということもあるので、相続財産調査は細かく行う必要があります。
2. 調査が必要な財産の例
一般的に相続の対象としてよくある財産としては、預貯金、不動産、株式、現金、自動車などです。
相続財産調査を行うにあたっても、これらを中心に調査するようにしましょう。
また、マイナスの財産としては、住宅ローンなどの借入金があるか負債を調査する必要があります。
3. 財産調査の方法
①預貯金
代表的な相続財産のひとつが預貯金です。
相続人であれば、必要書類を提出して金融機関に請求することによって、取引履歴や残高証明書を発行してもらえます。
必要書類は金融機関によって違うので、事前に電話で確認しておくとよいですが、一般的には、被相続人が亡くなったたことが確認できる書類(除籍の記載がある戸籍謄本等)・請求者が相続人であることが確認できる書類(被相続人の戸籍謄本等)、被相続人の本人確認書類などです。
なお、最近ではホームページに必要書類が載っていることもあります。
被相続人の通帳やキャッシュカードがある場合には、その銀行に残高証明書の発行を依頼しましょう。
被相続人がどこに口座を持っていたか分からない場合にも、地元の大きな銀行など代表的な銀行には、問い合わせをしてみるということが考えられます。
また、被相続人の家の整理を行う過程で、被相続人が口座を有していたことが推測できるような書類が見つかることがあります。
例えば銀行からの封書や、ATM利用の際の取引明細書などが見つかった場合には、そこの銀行に口座を有している可能性が高いので、確認するといいでしょう。
<調査に必要な書類まとめ>
- 通帳
- 残高証明書
- 取引履歴
②不動産
被相続人宛の固定資産税納税通知書があれば、被相続人が有している不動産を確認できますので、まずは被相続人の自宅にこの書類がないかを確認してみるとよいでしょう。
この書類があれば、被相続人が所有し、固定資産税を払っている不動産を一覧で確認できます。
もし、固定資産税納税通知書は、不動産が所在する市区町村ごとに発行されているため、被相続人が様々な場所に不動産を有している場合、必ずしもすべての不動産を一覧できるわけではないことに注意が必要です。
また、名寄帳や評価証明書などの所有している不動産を一覧にまとめている書類も不動産調査に役立ちます。
こちらは、不動産が所在する市町村役場に請求することで取得できます。
こちらも、あくまでその市町村にある不動産の一覧しかありませんので、被相続人の生前の居住地が複数あったり、被相続人の生家が他にある場合などは、それぞれの市町村のものを取得してみるとよいでしょう。
取得に必要な書類は各市町村役場のホームページで確認できることが多いですが、市町村後との申請用紙、被相続人と相続人の戸籍、申請者の本人確認書類、などが代表的な必要書類です。
<調査に必要な書類まとめ>
- 固定資産税納税通知書
- 名寄帳
- 評価証明書
③株式
被相続人が株式を保有している場合、証券会社などから保有株式数についてのお知らせが定期的に届くことが多いです。
まずは、被相続人の自宅にこういった書類がないかを確認しましょう。
また、株主総会の招集通知などからどの会社の株式を保有しているかが判明する場合もあります。
こういった書類が見つからない場合には、証券保管振替機構(通称:ほふり)へ問い合わせを行いましょう。
ほふりとは、上場株式や投資信託などの電子化された有価証券の振替を担当している機関です。
こちらに問い合わせをすることで、被相続人が口座を開設している証券会社や信託銀行の名称を確認することができます。
必要書類や手続きはほふりのホームページで確認できます。
証券会社が判明したら、該当の証券会社に問い合わせをし、被相続人が死亡した時点で有していた残高証明書や取引履歴を発行してもらいましょう。
<調査に必要な書類まとめ>
- 証券会社からのお知らせ
- 株主総会の招集通知
- 残高証明書
- 取引履歴
④債務(借金)
被相続人がお金を借り入れている場合には、自宅に契約書や借入残高の明細書、返済計画表などがある場合が多いので、まずはこういった書類を確認しましょう。
被相続人の通帳がある場合には、定期的な返済がないかを確認してみることもお勧めです。
また、相続人であれば、借り入れ情報を管理している信用情報機関に対して紹介することで、借り入れ状況が確認できます。
消費者金融の借り入れ情報については、株式会社日本信用情報機構(JICC)に、クレジット会社への借り入れ情報は、CIC(株式会社シー・アイ・シー)に銀行に対する借り入れは、全国銀行協会の全国銀行個人信用情報センターに対し照会を行うことでそれぞれ確認できます。
借入れが確認できた場合、借入先の金融機関から取引履歴を取得しましょう。
なお、これらの機関に照会をした結果、被相続人の債務が、プラスの財産より多い場合には、早めに相続放棄をすることを検討しましょう。
相続放棄をすることにより、被相続人のすべての財産(プラスの財産含め)を承継することがなくなりますので、債務の返済をする必要もなくなります。
相続放棄については、以下のコラムで詳しく解説していますのでご確認ください。
<調査に必要な書類まとめ>
- 契約書
- 借入残高の明細書
- 返済計画書
- 取引履歴
以上が代表的な財産調査の方法ですが、被相続人の自宅を整理する過程で、他の財産に関してのヒントが見つかる場合もあります。
例えば、被相続人が加入していた積立保険の証書が見つかったり、貴金属や絵画などが見つかる場合もあります。
貴金属や絵画などが見つかった場合には、査定を取得するなどして評価額を確認しましょう。
4. まとめ
本記事では、代表的な相続財産の調査方法について解説しました。
前述の手順を踏むことにより、相続財産調査をご自身で行うことは可能ですが、一つ一つ確認することが必要であり、どうしても手間がかかってしまいます。
必要書類を集めるだけでも相当時間がかかる場合もありますので、ご自身で対応することが難しそうな場合には、弁護士に依頼することを検討してみるとよいでしょう。