土地の境界線について争いがある場合、境界確定訴訟という裁判手続を利用することが考えられます。
目次
本稿では、境界確定訴訟の特徴と手続の流れについて、解説いたします。
1 境界確定とは
「境界確定」とは、自身の土地と隣の土地の筆界(境目)を確定させることをいいます。
一般的には、「境界」のことを「きょうかい」と読みますが、法律用語では「けいかい」と読みます。
2 境界確定訴訟の特徴
隣人との間で境界について合意ができれば良いですが、合意ができない場合には、境界確定訴訟(裁判)の提起を検討することになります。
境界確定訴訟を提起すると、裁判所が当事者の主張や提出された証拠をもとに、境界を決定します。
境界確定訴訟は、通常の民事訴訟と異なり、形式的形成訴訟であると解釈されています。
「形式的形成訴訟」とは、法律上の定めはないものの、権利や法律関係を変動させる裁判のことをいいます。
境界確定訴訟も、法律に定められていませんが、土地の境界という当事者の権利・法律関係を変動させる裁判であることから、形式的形成訴訟であるとされています。
形式的形成訴訟の特徴は、以下のとおりです。
- 弁論主義(裁判所は当事者の主張に対する判断しかできないルール)の適用がないことから、裁判所は当事者の主張に拘束されず、職権で判断することができる(裁判所は当事者が主張している境界と違う境界を定めることができる)
- 裁判所が請求を棄却することはできない(必ず境界を定めなければならない)
- 和解や調停(話合いにより合意する手続)ができない(実務上は、所有権確認訴訟などに訴えを変更した上で和解・調停を成立させることはあります)。
3 筆界特定制度との違い
境界確定訴訟と類似する制度として、筆界特定制度があります。
「筆界特定制度」とは、境界が争点となっている当事者一方の申請により、法務局が境界の調査と特定を行う手続のことです。
筆界特定の申請を行うと、筆界調査委員が土地の境界を調査し、境界の特定を行います。
境界確定訴訟は、時間と手間がかかるなど負担の大きい手続ですが、筆界特定制度は、手続が比較的簡易で負担が少ないというメリットがあります。
一方、境界確定訴訟と異なり、筆界調査委員の判断に法的拘束力はないことから、当事者の一方又は双方が筆界特定の内容に納得がいかない場合には、境界確定訴訟を提起する必要があります。
筆界確定制度の詳細は、法務局のホームページ(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji104.html)をご参照ください。
4 境界確定訴訟の方法
管轄裁判所
境界確定訴訟の提起は、訴状等の必要書類を管轄裁判所に提出することにより行います。
管轄裁判所は、相手方の住所地を管轄する裁判所、又は、境界が問題となっている土地の所在地を管轄する裁判所です。
通常、訴訟物の価額が140万円以下の場合には、簡易裁判所が管轄裁判所になりますが、不動産に関する訴えは、140万円以下の場合であっても、地方裁判所に訴えを提起することが可能です。
境界確定訴訟も不動産に関する訴えですので、地方裁判所に訴えを提起することができます。
必要書類
境界確定訴訟を提起するための必要書類は、以下のとおりです。
- 訴状(正本(裁判所用)と副本(被告用)それぞれ1通ずつ)
- 境界が問題となっている土地の全部事項証明書(登記簿)
- 境界が問題となっている土地の固定資産税評価証明書
- (証拠がある場合)証拠説明書と証拠の写し各2部ずつ(地積測量図、公図、杭の写真、塀やフェンスの写真、境界の写真など)
- 収入印紙(金額は境界が問題となっている土地の固定資産税評価額により決まるので、固定資産税評価証明書と裁判所のホームページを確認しましょう)
- 郵券(各裁判所により金額と内訳が異なるので、事前に申立先の裁判所に確認しましょう)
5 訴訟の流れ
必要書類の提出
前述した必要書類を管轄裁判所に提出します。直接持参して提出する必要はなく、郵送で提出することも可能です。
また、現在、民事訴訟はオンラインによる訴訟提起が可能になりました(代理人弁護士が訴訟提起する場合にはオンラインによる訴訟提起が原則義務化されました)。詳細は裁判所のホームページをご参照ください。
必要書類を提出すると、裁判所が訴状の内容と必要書類を審査します。
訴状の内容や提出書類に不備がある場合には、裁判所から訂正や追完の指示がありますので、裁判所の指示に従いましょう。
第1回期日の指定
訴状審査が完了すると、裁判所から第1回口頭弁論期日の日程調整の連絡があり、調整が完了すると、第1回期日が指定されます。
第1回期日が指定されたら、裁判所に期日請書を提出します。
「期日請書」とは、「第1回口頭弁論期日が◯年◯月◯日と指定されたので、同日時に出頭いたします」という内容の、裁判所から指定された期日に出頭することを記載した書面のことです。
訴状の送達
第1回期日が指定されると、裁判所から相手方に訴状が送達されます。
送達の完了により、訴訟が開始したという取扱いになります(「訴訟係属」といいます)。
口頭弁論期日・弁論準備手続期日
訴状の送達が完了したら、第1回期日(口頭弁論期日)に出頭します。
第1回期日までに、相手方(被告)から答弁書という訴状に対する反論書面が提出されます。
答弁書が請求内容を争う内容であれば、第2回期日以降、互いに相手の主張に対する反論を繰り返すことになります。
なお、第2回期日以降は、争点整理手続として、弁論準備手続という争点を整理する非公開の手続に付されることが多いです。
検証
互いの主張が出尽くした段階で、裁判所が現場を検証することがあります。
検証においては、土地家屋調査士による測量を行うのが一般的です。
検証の結果は、裁判の証拠とされます。
測量の費用は概ね30万〜80万円です。測量の費用は当事者間で折半するのが一般的です。
和解協議
検証が終了し、裁判所が境界について、一定の心証(結論)を得ると、和解協議を行うことがあります。
前述のとおり、境界確定訴訟は和解ができない手続ですが、当事者間で合意ができそうな場合には、所有権確認の訴えなどに訴えを変更するなどして、和解をすることもあります。
判決
和解の見込みがない場合には、裁判所が判決を下します。
判決書が双方に送達されてから2週間以内に双方から控訴の提起がなければ、判決は確定し、訴訟は終了となります。
控訴審
判決後に当事者の一方又は双方が控訴提起をした場合には、高等裁判所で審理がなされます。
控訴審では、控訴した側(控訴人)が控訴状と控訴理由書を、控訴された側(被控訴人)が控訴答弁書を提出し、弁論を終結し(主張と立証を終了させる)、判決となることがほとんどですので、第1審より時間はかかりません。
なお、控訴審判決に対する上告をすることも可能ですが、上告は、憲法違反や判例違反、法律に定められた重大な訴訟手続の違反等の事由がないと認められないので、境界確定訴訟において、上告が認められるケースはほとんどありません。
控訴については、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
6 境界確定訴訟の相談は新静岡駅前法律事務所へ
前述のとおり、境界確定訴訟は、形式的形成訴訟という特殊な種類の裁判手続です。
検証を行うなど、他の民事訴訟の異なる手続もありますので、ご自身で対応することは難しい場合があります。
ご自身での対応が難しい場合には、弁護士に依頼することを検討すると良いでしょう。
当事務所は、不動産案件に注力しており、境界確定訴訟にも対応しております。
当事務所への相談をご希望の方は、問い合わせフォームよりご連絡ください。
