金銭の支払義務を負っているが、債権者が金銭の受領を拒否しているような場合、金銭の支払義務を履行することができなくなってしまいます。
このような場合に有用な手段が供託です。
本稿では、供託の種類と方法について、解説いたします。
目次
1 供託とは
「供託」とは、金銭等を法務局(供託所)に提供し、その管理を委ねて、最終的には供託所が金銭等を特定の人物に取得させることにより、法律上の目的を達成するための制度のことをいいます。
供託には、以下の5種類があります。
①弁済供託
「弁済供託」とは、債権者が受領拒否や所在不明などの理由で、債務者が金銭の支払義務を履行できない時に供託することで支払義務を免れることができる制度のことをいいます(民法第494条)。
例えば、Aさんがアパートの一室を月額8万円で賃借していたところ、アパートの大家であるBさんが賃料の増額を求めましたが、Aさんがこれを拒否したところ、Bさんは賃料8万円の受領を拒否したとします。
Aさんは少なくとも賃料8万円を支払う義務を負っていますが、Bさんが賃料の受領を拒否し続ければ、Aさんは賃料の支払義務を履行できないことになってしまします。
このような場合に、Aさんは、弁済供託をすることで、Bさんに対する賃料の支払義務を免れることができます。
弁済供託ができるのは、ⅰ受領拒否、ⅱ受領不能(債権者の所在不明等)、ⅲ債権者不確知(相続等で真の債権者が不明の場合等)のいずれかの要件を満たす場合に限られます。
②担保保証供託
「担保保証供託」とは、取引相手や裁判上の手続の相手方等に生ずる損害等を担保するための供託のことをいいます。
担保保証供託には、以下の3種類があります。
裁判上の担保保証供託
「裁判上の担保保証供託」とは、裁判上の手続の相手方に対する損害を担保するための供託のことをいいます。
例えば、AさんがBさんに100万円を貸したが、返済がなされなかった場合、AさんはBさんに対する貸金返還請求訴訟を提起することができます。
しかし、訴訟手続を行っている間にBさんが自己の預貯金等を費消してしまう可能性がある場合、訴訟提起前にAさんはBさんの預貯金を仮に差し押さえることが可能な場合があります(「仮差押え」といいます)。
仮差押えは、あくまで「仮」の差押えであるため、実際に訴訟で審理をした結果、AさんはBさんに100万円を貸していたのではなく、贈与していたと認定される可能性もあります。
そのような場合、Bさんは、Aさんに100万円を支払う義務はなかったにもかかわらず、預貯金を差し押さえられてしまい、損害が生じている可能性があります。
このようなBさんに生じた損害を担保するために必要となるのが裁判上の担保供託です。
なお、仮差押えについては、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
営業保証供託
「営業保証供託」とは、営業者が取引相手等に対する損害を担保するための供託のことをいいます。
例えば、宅地宅建取引業(不動産業者)や旅行業者のように、取引相手が不特定多数で取引活動も広範に渡る業種の場合、取引相手に損害を与えるおそれのある営業に対して供託が義務付けられています。
税務上の担保供託
「税務上の担保供託」とは、税金の延納を許可したり又は納税を猶予する場合に担保を提供することをいいます。
③執行供託
「執行供託」とは、裁判所から差押命令を受けた第三債務者が差押えの対象となっている財産を供託することをいいます。
例えば、AさんがBさんの給与を差し押さえた場合に、Bさんの勤務先であるCはBの給与を供託することができます。
④没取供託
「没取供託」とは、法の目的を実現するために、金銭等を供託させて一定の事由が生じた場合には供託した金銭等を国が没収する制度のことをいいます。
具体例としては、選挙に立候補した場合の供託金が挙げられます。
⑤保管供託
「保管供託」とは、物の散逸を防止するために、供託物の保管及び保全を目的とした供託のことをいいます。
例えば、銀行や保険会社等の業績が悪化して資産状態が不良となった場合に、監督官庁が銀行や保険会社等の財産の供託を命ずる場合がこれに当たります。
2 供託の手続
供託には、以下の3つの申請手続があります。
①オンラインによる申請
供託は、登記・供託オンライン申請システムの「かんたん登記・供託申請」から行うことができます。
登記・供託オンライン申請システムを利用するには、申請者情報の登録が必要になりますので、利用する場合、まずは申請者情報の登録をしましょう。
オンライン申請の詳細については、法務局のホームページをご確認ください。
郵送による申請
供託書(OCR用紙)に必要事項を記載し、供託所に郵送することで申請をすることができます。
供託書は、最寄りの供託書で取得することもできますし、郵送で取得することも可能です(インターネット等で供託書の用紙をダウンロードすることはできませんので、ご注意ください)。
供託所での申請
直接供託所に赴いて申請を行うこともできます。
供託所に備え付けられている供託書に必要事項を記入し、窓口に提出しましょう。
記入内容に不備がある場合、担当者から補正を指示されますので、指示に従いましょう。
供託所の所在地等は、法務局のホームページで確認することができますので、ご参照ください。
3 供託金の納付方法
供託金の納付には、以下の3つの方法があります。
電子納付
供託の申請の際に電子納付(ペイジー)を希望する旨伝えると、受理決定通知書に電子納付用の番号が記載されますので、金融機関のATM又はインターネットバンキングで供託金を電子納付することができます(いずれもペイジーに対応しているものに限ります)。
電子納付の場合、基本的に手数料は生じません。
振込み
供託の申請の際に振込みを希望する旨伝えると、振込依頼書が交付されますので、金融機関の窓口で納付の手続をします。
振込みによる納付の場合、手数料が生じます。
現金
供託所のうち、法務局、地方法務局本局、東京法務局八王子支局、福岡法務局北九州支局では、現金による納付が可能です。
供託申請後、供託所の窓口で現金を提供しましょう。
現金での納付の場合、手数料は生じません。
上記供託所以外の供託所での申請の場合、日本銀行本支店又は代理店に供託金を納付することも可能ですので、詳細は申請先の供託所にお問い合わせください。
4 まとめ
供託手続は、本人でも対応が可能ですが、手続が複雑な場合もあります。
弁護士に依頼し、供託手続を代行することも可能ですので、ご自身での対応が難しい場合には、弁護士への依頼を検討すると良いでしょう。
当事務所も供託手続の代行業務に対応しておりますので、相談をご希望の方は問い合わせフォームよりご連絡ください。
