遺産分割や遺留分侵害額請求、相続放棄などの相続手続を行う際に、最初に行う必要があるのが相続人の範囲の確定です。
本稿では相続人の範囲の確定方法を解説いたします。
目次
1 法定相続人の順位と相続割合
被相続人(亡くなった方)の配偶者は必ず法定相続人になります(民法第890条)。
配偶者以外の相続人の順位は、第1順位が子、第2順位が直系尊属(両親や祖父母等)、第3順位が兄弟姉妹になります。
相続割合は、以下のとおりです。
配偶者と子が相続人の場合
- 配偶者:2分の1
- 子:2分の1
※同順位の相続人が複数いる場合は相続分を均等で割る
配偶者と直系尊属が相続人の場合
- 配偶者:3分の2
- 直系尊属:3分の1
配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合
- 配偶者:4分の3
- 兄弟姉妹:4分の1
配偶者がいない場合
配偶者がいない場合、相続順位(子→直系尊属→兄弟姉妹の順番)に従い、法定相続人が定められ、法定相続分は同順位の相続人の数に応じて均等割することになります。
法定相続人の順位と相続割合の詳細は、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
2 相続人の範囲の確定方法
①被相続人の戸籍謄本
相続人の範囲を確定するために、まずは被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(全部事項証明書)、除籍謄本、改製原戸籍を取得しましょう。
戸籍謄本とは現在の戸籍が記録されている謄本、除籍謄本とは婚姻・離婚・死亡・転籍によりその戸籍から除籍されたことが記録されている謄本、改製原戸籍とは戸籍が改製されたときの古い戸籍謄本のことをいいます。
以前は、戸籍謄本等の本籍地の市区町村役場でしか取得ができませんでしたが、2024年3月からは全国の市区町村役場で取得が可能になりました。
手数料は、戸籍謄本1通ごとに450円、除籍謄本と改製原戸籍はそれぞれ1通ごと750円です。
戸籍謄本は、市区町村役場の窓口でも取得できますし、郵送で取得することも可能です。郵送の場合は、小為替を同封して手数料を納めることになります。小為替は郵便局で購入が可能ですが、購入に際し200円の手数料が生じます。
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を取得することにより、今まで認識していなかった親族を発見することがあります。
例えば、前妻との間の子、認知した子、養子縁組した者などが考えられます。
②法定相続人の戸籍謄本
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を取得したら、法定相続人を確定させます。
前述した相続順位(子→直系尊属→兄弟姉妹)の順番で、親族の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得します。
例えば、被相続人の子が亡くなっている場合でも、被相続人の子の子(被相続人の孫)がいれば、被相続人の孫が代襲相続又は相続により法定相続人となることから、被相続人の子が亡くなっている場合で子以外の直系卑属がいる場合には直系卑属の戸籍謄本は必ず取得するようにしましょう。
なお、代襲相続については、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
また、数次相続が生じている場合や異母兄弟がいる場合の相続については、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
被相続人の子とその直系卑属がいない場合には直系尊属の戸籍謄本を、直系尊属もいない場合には兄弟姉妹の戸籍謄本を取得し、相続人の範囲を確定させます。
3 早期の確定が必要な相続手続
相続放棄
相続放棄の手続は、相続の開始があったこと(被相続人が亡くなったこと)を知った時から3か月以内に行う必要があります(民法第915条、同第921条2項)。
相続放棄手続の詳細については、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
相続税の申告
相続税の申告は、相続開始から10か月以内に行う必要があります。
相続税の申告を遅滞すると、延滞税や加算税が課されることがありますので、注意が必要です。
相続税の詳細については、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
相続登記
相続登記は、相続開始から3年以内に行う必要があります。
上記期限を過ぎると、過料の制裁が科されることがあるので、注意が必要です。
相続登記の詳細については、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
遺留分侵害額請求
遺留分侵害額請求権は、相続が開始したことと遺留分を侵害されたことを知ってから1年以内に行う必要があります(民法第1048条)。
相続人の範囲の確定ができていない場合には、遺留分を侵害している者に対し、「遺留分として相当額を請求する」という内容の内容証明郵便を送付することで、消滅時効の成立を防ぐことはできますが、遺留分侵害額請求権の有無の確認及び遺留分の計算のために早期に相続人の範囲を確定しておくことがお勧めです。
4 相続人の範囲の確定後の流れ
遺産分割の場合、相続人の範囲が確定したら、遺産の範囲の確定→遺産の評価→分割方法の決定という流れで進めることになります。
遺産分割協議の流れは、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
遺留分侵害額請求の場合、相続人の範囲が確定したら、遺産の範囲の確定→遺産の評価→遺留分の計算という流れで進めることになります。
遺留分侵害額請求の流れは、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
5 まとめ
相続手続に必要な戸籍謄本はご自身で収集することが難しい場合があります。
また、戸籍謄本のうち古いものは手書きで書かれているものもあり、読み方が非常に難解な戸籍もあります。
戸籍謄本の取得は、弁護士等の専門家が代理で取得することも可能ですので(「職務上請求」といいます)、ご自身での収集が難しいという方は、相続人調査を弁護士に依頼することを検討されると良いでしょう。
当事務所は相続案件に注力しており、相続人の範囲の確定の代理業務の経験と実績は豊富です。
当事務所への相談をご希望の方は問い合わせフォームよりご連絡ください。
