養育費について、協議が整わない場合や養育費の支払を拒否されている場合、養育費請求調停の申立てを検討すると良いでしょう。
本稿では、養育費調停の申立方法と手続の流れを解説いたします。
目次
1. 養育費請求調停とは
「養育費」とは、子の監護や教育のために必要な費用のことをいいます。
夫婦が離婚したとしても、親子関係がなくなることはなく、親は子に対して扶養義務を負いますので、子の監護養育をする親は、もう一方の親に対し養育費の請求ができます。
養育費の相場や請求方法については、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
「調停」とは、裁判所を通じた話合いの手続です。
調停においては、裁判官(又は調停官)1名と調停委員2名により構成される調停委員会が話合いを仲介してくれます。
養育費について、当事者間での話合いがまとまらなかったり、話合いができない場合には、養育費請求調停手続の利用を検討しましょう。
養育費請求調停においては、調停委員会が当事者双方から事情を聴取したり、資料を提出してもらうなどして、解決に向けてアドバイスをしたり、解決案を示したりするなどして、合意に向けて話合いを進めてくれますので、紛争解決力の高い手続といえます。
また、調停でも話合いがまとまらず、調停が不成立となった場合には、自動的に「審判」という手続に移行します。
審判手続では、裁判官が当事者の事情や提出された資料をもとに、結論を出してくれますので、養育費に関する紛争の終局な解決を期待することができます。
2. 申立方法
申立人
養育費請求調停の申立人は、子の父又は母です。
離婚後に子を監護している親が子を監護していない親を相手方として申し立てるのが一般的です。
申立先
調停の申立先は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です(当事者間で合意した家庭裁判所がある場合には同裁判所が管轄となります)。
家庭裁判所の所在地等は、裁判所のホームページで確認することができますので、ご参照ください。
必要書類
調停の申立ては、管轄の家庭裁判所に以下の書類を提出することにより行います。
書類の書式は裁判所のホームページに掲載されていますので、ご参照ください。
- 申立書(正本と副本を各1通ずつ)
- 子の戸籍謄本
- 申立人の収入資料(源泉徴収票や確定申告書等)
- 連絡先等の届出書
- 事情説明書
- 進行に関する照会回答書
- (非開示を希望する事項がある場合)非開示の希望に関する申出書
- 収入印紙(子1人につき1200円)
- 郵便切手(裁判所により金額と内訳が異なるので申立先の裁判所に確認しましょう)
3. 調停手続の流れ
①調停申立て
まずは、前述した必要書類を管轄の家庭裁判所に提出しましょう。
提出の方法は、直接裁判所に持参しても良いですし、裁判所に郵送する方法でも可能です。
書類に不備や不足があった場合、裁判所から補正や追完の指示がありますので、裁判所の指示に従いましょう。
②第1回期日の指定・相手方への通知
申立てが完了すると、裁判所から第1回調停期日の日程調整の連絡が入ります。
日程調整が完了すると、裁判所が第1回期日の日時を指定し、相手方に調停が係属したこと及び期日が指定されたことの通知を行います。
相手方への通知は郵送(書面)でなされ、申立書の副本(写し)も併せて送付されます。
③期日への出頭
第1回期日の日を迎えましたら、指定された時間に管轄の家庭裁判所に出頭します。
ほとんどの裁判所では、申立人用の待合室と相手方用の待合室に分かれています。
また、調停での話合いは当事者が交互に調停室に入る形で行われるので、基本的に相手方と顔を合わせることはありません。
また、近年ではウェブ会議や電話会議で期日を行うことも増えてきましたので、希望がある場合には事前に裁判所に伝えましょう(ただし、必ずしも希望どおりにウェブ会議又は電話会議で実施してもらえるとは限りませんので、ご留意ください)。
調停期日では、調停委員会が双方から事情を確認したり、必要な書類の提出を求めたり、双方の主張の整理や仲介を行うなど、合意成立に向けて進行を行います。
1回の期日で調停が成立することはほとんどありませんので、複数回期日を重ねて合意成立を目指していくことになります。
また、「次回期日までに◯◯を提出してください」などと、調停委員会から指示が出されることがありますので、調停の円滑な進行と早期解決のためにも、調停委員会からの指示にはきちんと従うようにしましょう。
調停期日の最後には、次回期日の調整を行います。
次回期日は、概ね1〜2か月後で調整されることが多いですが、ゴールデンウィークや年末年始などの長期休暇を挟む場合には、2か月以上先で調整することもあります。
④調停の成立(不成立)
調停の成立
当事者双方が合意に達すると、調停成立の手続に入ります。
調停委員会が合意した内容をまとめ、双方にその内容(調停条項)を読み上げて最終確認を取ると、調停成立となります。
調停成立後、裁判所が合意した内容を書面にまとめ、当事者双方に送付します(「調停調書」といいます)。
調停調書には執行力という強制執行(給与や預金の差押え)をすることができる効力があります。
養育費は、長期の支払となることが多く、将来の未払(支払われない、支払を拒否されるなど)のリスクがあり、強制執行が必要となる可能性が高い類型といえます。
将来の強制執行の可能性を考慮し、調停調書は大切に保管するようにしましょう。
調停の不成立(審判移行)
他方、話合いがまとまらず、調停委員会が「合意に達する見込みがない」と判断した場合、調停は不成立となり終了します。
上述したとおり、養育費請求調停の場合、調停が不成立となると自動的に審判手続に移行します。
「審判」とは、裁判官が当事者双方の主張や提出された資料等の一切の事情を考慮して、養育費請求を認めるか否か、認めるとして養育費の月額をいくらにするかなどを判断する手続です。
なお、審判の内容に不満がある場合には、高等裁判所に不服申立てをすることができます(「即時抗告」といいます。)。
即時抗告の期限は、当事者双方に審判書が送達された日の翌日から2週間と定められているので、抗告期限には注意しましょう。
4. 調停を有利に進める方法
自身の主張を書面化する
調停期日では、口頭で調停委員と話合いをすることができますので、書面の作成は必須ではありません。
しかし、調停期日の時間は1時間30分〜2時間程度と限られています。
また、口頭では自身の主張が正確に伝わらず、不利な取扱いを受けてしまうおそれがあります。
そこで、調停期日においては、事前に自身の主張内容をまとめた書面を作成した上で、裁判所と相手方に送付することをお勧めします。
自身の主張内容を裏付ける客観的な資料がある場合には、資料を添付して送付すると良いでしょう。
感情的にならない
養育費請求調停の場合、相手方に対する怒りや憎しみ等から、相手方の主張や対応に対して感情的になってしまうことがあるかもしれません。
しかし、感情的になってしまうと、法的かつ正当な主張を展開できなくなってしまったり、逆に不利な事実を摘示してしまい、自身の不利な判断がなされるおそれがあります。
また、感情的になることで、冷静さを失い、話が進まなくなり調停の進行に悪影響を及ぼしたり、調停委員会の心証を害するといったリスクもあります。
相手方の不誠実な対応や気分を害する主張などが出てくることはよくありますが、そのような場合であっても、できる限り冷静に対応することが調停を有利に進めることに繋がります。
弁護士に依頼する
養育費請求調停の手続を弁護士に依頼することも1つの選択肢です。
弁護士に依頼することで、裁判所のやりとり、書面の作成、資料の精査、調停期日への出頭等の対応をしてもらうことができ、自身の負担が大幅に軽減されます。
特に、私がご相談をお受けしている際に多いものとしては、調停委員とのやりとりが精神的に負担であるというものです。
調停委員の中には高圧的な態度を取ったり、こちらの主張をまったく聞いてくれないといった対応をする方も散見されます。
弁護士に依頼することで、調停期日に同席してもらえ、期日において適切なアドバイスをしてもらえるだけではなく、調停委員とのやりとりも代行してもらえるので、弁護士に依頼することで調停期日における精神的負担も軽減できる可能性があります。
また、弁護士は法的知識と経験を有していますので、自身に有利になる主張を展開してもらえたり、有効な証拠や資料を収集・提出してもらえることがあるといったメリットもあります。
養育費請求調停を有利に進めたいという方は、弁護士に依頼することも検討されると良いでしょう。
5. まとめ
養育費は支払が長期になることが多いことから、月額1万円減額されただけで、総額で数百万円の経済的損失を被ることもあります(例:0歳のお子さんの養育費を1万円減額された場合、月額1万円×12か月×20歳まで=240万円)。
このような損失を避けるためにも、養育費請求調停の申立てをお考えの方は、まずは弁護士に相談し、見通しを聞いてみると良いでしょう。
当事務所は、養育費請求を含む離婚案件に注力しており、養育費請求調停の経験と実績も豊富です。
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