酔った勢いで相手にキスをしてしまったり、抱きついてしまった場合、不同意わいせつ罪に該当してしまう可能性があります。
犯罪にあたる行為をしないためにも、どういった行為が不同意わいせつに該当するのか、詳しく知っておくことが大切です。
そこで、本記事では、不同意わいせつ罪として処罰対象になる行為や刑罰について解説します。
目次
1. 不同意わいせつ罪とは
不同意わいせつ罪とは、相手が「同意しない意思を形成し、表明し、若しくは全うすることが困難な状態にさせ、又はその状態に乗じて」でわいせつな行為を行った場合に成立します(刑法第176条1項)。
つまり、相手が同意していないのに、拒否することが困難な状況を作りだしたり、その困難な状況を利用して、わいせつな行為をした場合に成立します。
拒否することが困難な状況を作りだすとは、刑法第176条1項に定められており、以下のような行為を行った場合に該当します。
- 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
- 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
- アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
- 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
- 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
- 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
- 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
- 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
上記のとおり、暴行や脅迫をした場合だけでなく、アルコールにより酩酊状態にさせた場合や、相手の意識がはっきりしていないときにわいせつな行為をした場合にも成立します。
なお、不同意わいせつ罪は、以前は「強制わいせつ罪」という名前であり、暴行や脅迫をしたうえでわいせつな行為をした場合にのみ成立していましたが、令和5年の刑法改正により、暴行や脅迫がなくても不同意わいせつ罪が成立するように改正されました。
わいせつな行為とは、判例上、「いたずらに性欲を興奮又は刺激せしめ、且つ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する」行為をいうとされています(昭和26年5月10日判決)。
簡単にいうと、一般の人が通常持つ性的羞恥心(性的に恥じらいを感じる感覚)を害するような場合、わいせつな行為に該当します。
典型意的には、臀部や性器を触る、胸を揉むといった行為です。
2. キスやハグで不同意わいせつ罪が成立する?
ハグの場合
諸外国では挨拶の代わりにハグをする文化がある国も多いため、ハグだけではわいせつな行為には成立しないのでは?とお考えの方もいるでしょう。
しかしながら、日本ではそういった文化はなく、交際相手など以外とは、通常ハグをする関係ではないといえるでしょう。
ハグをされた側からみれば、性的な恥ずかしさや不快感を感じることもあるので、その行為の日時・場所・態様、当事者間の関係、行為に至る経緯・状況その他の諸事情を総合的に考慮してわいせつな行為に該当すると判断される可能性はあります。
キスの場合
キスについても、同様に挨拶で行う文化の国もありますが、日本では性的意味を含む行為である方がむしろ一般的といえるでしょう。
裁判例でも、キスをわいせつな行為と認めた例があります。
ただし、前述のとおり諸事情を総合的に考慮して判断されるため、キスをした時間帯や部位、相手との関係性、キスの仕方等を考慮して、わいせつな行為に該当しないとされる可能性もあります(例えば、手のひらに1回のみキスをした場合には、わいせつな行為と判断されづらいでしょう)。
3. 不同意わいせつの法定刑(刑罰)
不同意わいせつ罪の法定刑は6か月以上10年以下の拘禁刑と定められており、罰金刑は規定されていません。
そのため、仮に有罪となった場合には執行猶予が付かない限り刑務所に収容されるという点で厳しい罰則が定められているといえます。
なお、「拘禁刑」とは、これまでの懲役刑と禁錮刑を一本化したもので、2022年6月17日公布の刑法改正により規定されたものです。
4. 同意があるかないかの判断基準
不同意わいせつの事件では、「同意があった」「同意があると思っていた」という主張をする方は多いです。
同意の有無については、直接的な証拠がないことが多いため、被害者が「同意がなかった」と言った場合、その証言に信用性があれば、同意がなかったとして有罪となってしまうケースもあります。
自身は同意があったと考えていたとしても、裁判で有罪となってしまった場合には、前述のとおり厳しい罰則を受けてしまう可能性があるので、どのように対応するかは慎重に判断した方が良いでしょう(もちろん、真に同意があるのにも関わらず罪を認めるべきというものではありません)。
5. 不同意わいせつで被害届を出された時の対処法
不同意わいせつであるとして被害届を出されてしまった場合や、被害届を出すと言われている場合には、相手と示談をすることが非常に重要です。
刑事事件の被害者と示談をする際には、加害者に対して刑事処分を求めない旨の文言(「宥恕文言」といいます)を入れて示談します。
また、被害届が出されている場合には、被害届の取下げを約束してもらうこともあります。
被害届の取り下げや宥恕事項のある示談書を提出することにより、検察官も、被害者が宥恕の意思を有していることを重視して、不起訴処分を選択する可能性が高まります。
不起訴処分となれば前科はつきませんので、示談が出来ているか否かは非常に重要です。
また、被害届が出される前であれば、刑事事件になる前に解決できる可能性もあります。
なお、不同意わいせつの示談金の相場は、概ね数十万~100万円程度です。
ただし、事件の性質上、被害者の方が強い処罰感情を持っていることも多いため、被害者の感情に配慮した示談交渉を行うことが非常に重要です。
なお、不同意わいせつで慰謝料請求をされている場合、及び、不同意わいせつで被害届を出すと言われている場合の対処法は、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
6. 不同意わいせつでお困りの方は弁護士に相談を
不同意わいせつで警察から取り調べを受けている・被害届を出すと言われている場合には、早期の示談が非常に重要です。
示談をするのが遅くなればなるほど、刑事事件の手続が進行してしまい、起訴される・刑事裁判が実施される可能性が高まってしまいます。
また、示談をするには被害者と連絡を取る必要がありますが、警察が加害者に被害者の連絡先を教えてくれることはまずありませんし、もし連絡先を知っていたとしても、加害者と被害者が当事者同士で示談交渉をすることは非常にハードルが高く、より問題がこじれてしまうことになりかねません。
弁護士に依頼すれば、警察や検察とやり取りして(被害者の同意を得たうえで)被害者の連絡先を確認し、被害者と示談交渉をすることができます。
また、示談ができた場合には、宥恕文言付の示談書の作成や、検察へ示談が成立しており不起訴とすべきであるという旨の意見書(不起訴意見書といいます)を提出する等の一連の手続も全て行ってくれます。
当事務所でも、不同意わいせつに関するご相談を数多くお受けしておりますので、お困りの方は、一度お気軽にお問い合わせください。
