SNSに画像を投稿するケースは多くみられますが、他人の著作物を無断で公開してしまうと、著作権侵害に該当してしまい、損害賠償請求や差止請求を受けてしまう可能性があります。
そこで、本記事では、著作権侵害に該当するケースや、損害賠償請求されてしまった場合の対処法を解説します。
目次
1著作権侵害とは
無断転載が違法となるのは、その行為が著作権侵害に該当するケースです。
著作権侵害とは、簡単にいうと、他人の著作物(写真やイラスト、画像等)を著作者の許諾を得ずに利用する行為です。
なお、著作物は、法律上、思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものと定められています(著作権法2条1項1号)。
ごく短い文章や単なるアイデアは、創作性がないとして著作物に該当しないと考えられますが、画像や写真、イラスト、動画等は、基本的には全て著作物に該当すると考えられるでしょう。
他人の著作物を無断で公表する行為のほか、複製や変更する行為についても著作権侵害に該当します。
2. 無断転載が違法とならないケース
上記のとおり、他人の著作物を無断で利用することは、著作権侵害に該当するのが原則ですが、著作権法上、例外的に著作権侵害に該当せずに違法とならないケースがあります。
その代表的な例が「引用」に該当する場合です。
著作権法第32条には、引用について、以下のように定められています。
公表された著作物は、引用して利用することができる。
この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
つまり、①公表された著作物については②公正な慣行の範囲内で③報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内であれば利用することが可能です。
これは、他人の著作物を許諾を得ずに利用することが一切できないとなると、報道や研究に支障をきたしてしまうという観点から認められたものです。
条文のみではどういった場合に正当な引用であるかが分かりづらいですが、正当な引用であると認められるためには、以下の要件を満たす必要があると考えられています。
- 公表された著作物であること
- 引用した部分とその他の箇所が明瞭に区別できること
- 質及び量的に引用部分が主であり引用される部分が従であるという主従性があること
- 出所(出展)の明示があること
- 改変を行わないこと
これらの要件を満たしている場合には、著作者に無断で著作物を利用しても、著作権侵害には該当しません。
3. 著作権侵害をしてしまった場合に起こりうること
差止請求(削除請求)がされる
画像を無断転載している相手に対しては、著作者は、著作権侵害行為を停止するよう請求することができます(著作権法第112条1項)。
これを「差止請求」といいます。
無断転載をしている場合には、投稿を削除するよう求められることが考えられます。
損害賠償請求がされる
著作権侵害行為によって著作権者が損害を被った場合には、その損害について不法行為を理由に損害賠償請求することができます(民法第709条・710条)。
例えば、著作物の使用料相当額を支払うよう求められたり、画像を改変したりしてしまった場合には、慰謝料を請求されるといったことが考えられます。
発信者情報開示請求がされる
著作権者が差止請求や損害賠償請求をするにあたってこちらの身元が分からない場合には、相手方が、発信者(投稿者)の情報を開示するよう求める発信者情報開示請求を行う場合があります。
この場合には、自宅にプロバイダより意見照会書が届き、相手の情報開示請求に同意するか否かの意見を聞かれることとなります。
発信者情報開示請求と意見照会については、こちらのコラムで詳しく解説していますので、意見照会書が届いた場合には、参考にしてみてください。
名誉回復措置をするよう請求される
著作者人格権(著作者の人格的利益を保護するための権利で、著作物を無断で改変されない権利(同一性保持権)や著作物の公表にあたり著作者として氏名を表示する権利(氏名表示件)等)を侵害された著作者は、侵害者に対して、名誉回復措置(謝罪や訂正広告等を掲出するよう求めること等)を請求することができます(著作権法第115条)。
例えば、無断転載をしてしまったことを謝罪する旨の投稿をするよう請求されることが考えられます。
被害届を提出される・刑事告訴される
著作権侵害行為は、刑事罰の対象となる行為です(著作権法第119条1項)ので、著作権者により被害届を提出されたり、刑事告訴されたりすることも考えられます。
罰則は、十年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金(又はこれの併科)という非常に重いものとなっていますので、注意が必要です。
4. 著作者から請求を受けている場合の対処法
自身の行為が著作権侵害にあたるか確認する
著作権者から著作権侵害を理由に差止めや損害賠償の請求を受けてしまっている場合には、まずは自分の行為が著作権侵害行為に該当するのかを確認するようにしましょう。
著作物を利用していても、既に述べた引用に該当する場合以外にも、著作権法上著作権侵害とならない場合として定められている場合(私的使用のための複製等)が複数ありますので、著作権侵害が成立するかを判断する必要があります。
ただし、上記のとおり著作権侵害は刑事罰も規定されている行為です。
引用の要件は抽象的な面もあるため、安易に「引用だから大丈夫」と判断しないようにしましょう。
投稿を削除する
自身の行為が著作権侵害に該当する場合には、速やかに投稿の削除をしましょう。
著作権者に対しても速やかに削除したことを報告し謝罪することで、その後の示談交渉も進めやすくなることが期待できます。
示談交渉する
著作権者から損害賠償請求をされている場合には、相手方の主張する損害額を確認したうえで、一定額を支払い、示談(和解)をすることを検討しましょう。
この際にポイントとなるのは、損害額はいくらが適切となるのか慎重に判断することです。
著作権法には、損害額の推定に関する規定が設けられており、無断転載の場合には、著作物の使用料相当額(ライセンス料)を損害とみるのが一般的です(著作権法第114条3項)。
つまり、無断転載した行為について、許諾を得て利用した場合に相手に支払うライセンス料が損害額となるという考え方です。
相手方の主張する額の根拠が不明な場合には、どういった根拠で算定したのかや、ライセンス料についての定めがあるのかを確認して交渉するようにしましょう。
なお、示談をする場合には、必ず清算条項(お互いに追加の請求をせず、また追加の請求をされない旨を確認する条項)を入れるようにしましょう。
清算条項を入れることで、紛争の蒸し返しを防ぐことができます。
また、上で述べたとおり、著作権侵害行為は刑事罰の対象になりますので、示談をする場合には、宥恕条項(相手方が刑事処罰を望まない旨の条項)を定めるようにすると良いです。
5. まとめ
著作権侵害を理由に何らかの請求をされている場合には、対応について慎重な判断が求められます。
著作権侵害が成立するのか、するとして損害額はいくらになるのかは、法的知識がないと判断が難しい場合も多いでしょう。
弁護士に確認することで、今後の見通しや適切な対応方法を知ることができますので、お気軽にお問い合わせフォームよりご連絡ください。
