相手に対して慰謝料や売掛金の請求をするときなど、法的な請求をする場合には、内容証明郵便を活用すると良い場合があります。
そこで、本記事では、内容証明郵便の書き方や送付方法、内容証明郵便を活用した方が良いケースなど、内容証明郵便について解説します。
目次
1. 内容証明郵便とは
内容証明郵便とは、いつ、誰が、誰に対し、どのような内容の文書を送付したかを、郵便局(日本郵便)が証明してくれるサービスです。
内容証明郵便を送付すると、通常の郵便とは異なり、送付した文書の謄本(写し)が郵便局に保存されることになります。
送付した文書の内容などを、裁判で証拠としても活用することができます。
例えば、相手に対して契約解除を主張する書面を送付したとして、通常の郵便で送ってしまうと、後から相手に「そのような手紙は受け取っていない」などと主張されてしまう可能性があります。
内容証明郵便には、別途料金を払うことで、配達証明というサービスを付加できます。
配達証明とはその名の通り、郵便を配達したという事実を証明してくれるサービスですので、このような主張を防ぐことができます。
相手に対して何らかの意思表示をする場合など、相手が受け取った事実が重要となる郵便の場合には、配達証明も付けるようにしましょう。
2. 内容証明郵便の送付方法
内容証明郵便は、郵便局に送付したい文書を持っていくことで送付できますが、郵便局によっては、対応していない郵便局もありますので、事前に郵便局のホームページや電話等で、内容証明郵便に対応しているか確認するとよいでしょう。
内容証明郵便を送付するときは、以下の書類を郵便局へ持参します。
- 送付したい文書
- 送付したい文書の謄本(写し):計2通
- 宛名と差出人を記載した封筒
送付したい文書
送付したい文書は、写しと併せて合計で3通を郵便局へ持っていきます。
このうち1通が相手に送付されるもの、1通が郵便局で保管されるもの、1通が自分の保管用となります。
用紙の大きさには制限はありませんが、A4サイズが利用されることが一般的です。
文書が2ページ以上になる場合には、ホッチキス止めをして割り印を押します。
また、字数・行数、使用できる文字には制限があります。
使用できる文字は、仮名、漢字、数字、英字、括弧、句読点、一般的な記号と決まっています。
また、行数・文字数は以下のとおり決まっています。
・縦書きの場合:
1行20文字以内、1枚26行以内
・横書きの場合:以下のいずれか
①1行20文字以内、1枚26行以内
②1行13文字以内、1枚40行以内
③1行26文字以内、1枚20行以内
字数や行数制限をオーバーしてしまっていたり、使用できない文字が記載されていると、郵便局に持って行っても受け付けてもらえないので、詳細なルールは郵便局のホームページでよく確認するようにしましょう。
宛名と差出人を記載した封筒
封筒には、宛名と差出人を記載して持参します。
この封筒に、相手へ送付する1通を入れて、内容証明郵便が発送されます。
文書内に宛先や差出人を記載している場合、封筒の記載も全く同じように記載をする必要があります。
例えば、文書には「○○株式会社××様」と記載しているのに、封筒に「○○株式会社御中」とだけ記載して送付することはできません。
差出方法
必要な書類が全て準備できたら、郵便局の窓口で内容証明郵便にて送付したい旨を伝えます。
局員による形式のチェックを経て、料金を支払えば、発送手続きが完了します。
内容証明郵便を送付する場合、必ず書留の方法で送る必要があるので、相手に届いたかどうかは、追跡番号で追跡ができます。
料金
内容証明の料金は、1枚につき480円です。
これに、通常の郵便の配達料金(定形:110円、定形外:140円など)が加算されます。
また、内容証明は書留で送付されますので、書留料金(480円)も必要です。
配達証明を就ける場合には、250円がかかります。
例えば、A4サイズ2ページの内容証明を送付し、配達証明をつける場合の料金は、以下のとおりです。
480円(内容証明郵便の加算料金)×2+140円(郵便料金)+480円(書留料金)+350円=1930円
電子内容証明
上記郵便局へ差し出す方法の他に、電子内容証明(e内容証明)という方法があります。
これは、Wordファイルで作成した内容証明文書をインターネット上にアップロードすることで、24時間内容証明郵便を発送できる方法です。
詳細は、郵便局のホームページをご参照ください。
3. 内容証明郵便の書き方
次に、内容証明の基本的な書き方を説明します。
形式面
まず基本的な形式としては、宛名や送付先の住所、作成日付、差出人を記載します。
厳格な決まりがあるものではありませんが、中心に表題(通知書などと記載することが一般的です)を記載し、その下部右側に作成日付、続いて左側に送付先の住所と氏名(又は会社名)・差出人の住所と氏名を記載するのが一般的です。
記載内容
必要事項を記載したら、具体的な通知内容を記載します。
相手に対して何を求めるのか・どのような法的根拠により請求するのかを、端的かつ明確に記載するようにしましょう。
債権回収の場合の記載例
例えば相手に対し、未払いの貸金を返すように請求する場合には、いつどのような約定(条件)で、いくらを貸したのか、いつまでに返済するよう求めるのかを記載します。
記載例:
通知人は、貴殿に対し、令和○年○月○日に、返済日を令和○年○月○日と定め、金100万円を貸し付けました。
しかしながら、貴殿は、既に返済日が到来しているにも関わらず、貸金全額につき、未だ支払いをしていません。
そこで、通知人は、貴殿に対し、貸金100万円を、本書到達後2週間以内に支払うよう求めます。
不貞慰謝料を請求する場合の記載例
次に、不貞行為による慰謝料請求をする場合の記載例は、以下のとおりです。
不貞行為を特定したうえで、請求根拠と金額を記載します。
記載例:
貴殿は、令和○年○月○日から、令和○年○月○日の間、通知人の夫○○と、夫○○が既婚者であることを知りながら、性交渉を行うなど不貞行為を行いました。
これにより、通知人は多大なる精神的苦痛を被りました。
よって、民法第709条、同710条に基づき、不法行為に基づく損害賠償として、金○円を、本書到達後2週間以内に支払うよう求めます。
4. 内容証明を利用した方が良いケース
①契約解除など、意思表示を伝える場合
意思表示とは、一定の法律効果の発生を欲するという意思を外部に表示することをいいます。
例えば、契約を解除する場合にも、「契約を解除します」という相手方への意思表示をもってすることとなります。
民法では、意思表示は相手方に到達したときに効果が生じるとされているので(民法第97条第1項)、相手に対して意思表示をしたことを証明できる配達証明付内容証明郵便で送付するとよいでしょう。
②相手に対して強く請求をしたい場合
内容証明郵便は、通常の郵便とは異なる形で相手に送付されます。
受け取った相手としても、正式な文書であると理解されるでしょうし、一定の心理的プレッシャーを与える効果もありますので、相手に対し口頭や電話等で請求をしても無視が続いているような場合に内容証明郵便を送ることで、相手が無視をやめる・慌てて連絡してくるといったことも期待できます。
③時効が近づいている債権を請求したいとき
民法には、消滅事項という制度があり、一定の期間内に権利を行使しないと、権利が消滅してしまいます。
例えば、不貞の慰謝料は、不倫の事実及び不倫の相手を知ったときから3年以内に請求しないと消滅時効が完成し、相手に対し慰謝料請求ができなくなってしまいます。
内容証明郵便での請求は、民法上の「催告」に該当し、催告をしたときから6か月の間、時効の完成が猶予される(=消滅時効とならない)という効果があります(民法第150条1項)ので、時効が近づいてしまっているものの、すぐに裁判をすることが難しい場合には、まずは内容証明郵便を送付して、6か月の間に裁判の準備をすることができます。
5. まとめ
内容証明郵便の送付は、弁護士でなくても郵便局に行けば誰でも送付することができますが、記載事項が足りていなかったり、説得力に欠けてしまっていると、効果が十分に得られないこともあるでしょう。
記載内容が正確か不安な場合や、既に自身で一度内容証明を送付したにもかかわらず無視されてしまっているような場合には、弁護士に相談することをお勧めします。
当事務所では、慰謝料などの不法行為による損害賠償請求、貸金や売掛金などの債権回収、トラブルとなってしまっている相手方への警告など、様々な内容での内容証明郵便の送付に対応しておりますので、お気軽に問い合わせフォームよりお問い合わせください。