自身が所有する土地を第三者が不法に占有している場合、土地を占有する第三者に対し、土地明渡請求を行うことができます。
本稿では、土地明渡請求の類型・具体例・請求方法・弁護士に依頼するメリットを弁護士が解説いたします。
目次
1. 土地明渡請求とは
土地明渡請求とは、自身の所有する土地を占有している第三者に対し、土地を明け渡すよう求めることをいいます。
例えば、土地の所有者の許可なく資材置き場にして土地を占有しているような場合、土地の所有者は、占有者に対し、土地を明け渡すよう請求することができます。
もっとも、実務上は、他人名義の土地に勝手に物を置いて占有するというケースは稀です。
多くのケースでは、土地を賃貸していたが、賃借人(土地の借主)が賃料を滞納するなどして賃貸借契約が解除された場合に土地の明渡しを求める、すなわち、賃貸借契約の終了に伴う土地明渡請求がなされることが多いです。
賃貸借契約の終了については、「4」において詳述します。
2. 建物収去土地明渡請求とは
建物収去土地明渡請求とは、自身の所有する土地上に第三者が建物を建てて土地を占有している場合に、建物を収去(解体)して土地を明け渡すよう求めることをいいます。
「1」で述べた土地明渡請求と同様に、他人名義の土地に勝手に建物を建てるというケースは少なく、賃貸借契約の終了に伴う建物収去土地明渡請求のケースが多いです。
また、相続により所有者が代わり、建物収去土地明渡請求が行われるケースも多いです。
例えば、A名義の土地上にAの長男であるB名義の建物が建っていたが(AB間でBに無償で土地を利用することを認める使用貸借契約が成立)、Bが亡くなりBの配偶者であるCが建物の所有権を相続した場合に、AがCに建物収去土地明渡請求を行うということがあります。
これは使用貸借契約の終了に伴う土地明渡請求の類型に該当します。
使用貸借契約の終了については、「4」において詳述します。
3. 建物退去土地明渡請求とは
建物退去土地明渡請求とは、自身の所有する土地上に第三者名義の建物が建てられており、その建物に建物所有者以外の者が居住するなど建物と土地を占有している場合に、居住者に対し、建物を退去し土地を明け渡すよう求めることをいいます。
建物の所有者以外の者が建物に居住している場合には、建物の所有者に対し建物収去土地明渡請求を行うのと並行して、居住者に対する建物退去土地明渡請求も行わなければなりません。
4. 土地明渡請求の条件
①土地の所有又は占有権限
土地明渡請求を行うことができるのは、土地を所有している者、又は、土地を占有する権限を有している者(例えば、土地所有者から土地を賃借している者)です。
②土地の占有
土地明渡請求を行う相手方は、土地を占有している者です。
③土地の占有権限がないこと
土地の占有者が土地を占有する正当な権利(「占有権限」といいます)を有する場合、明渡請求を行うことはできません。
以下、占有権限を有さない主なケースを紹介します。
不法占有者
土地所有者の許可なく土地を占有している場合には、土地の占有権限を有しないことから、このような相手方に対しては、土地明渡請求ができます。
もっとも、前述のとおり、実務ではこのような不法占有のケースは稀です。
賃貸借契約の終了
土地を第三者に賃貸したが、賃料の滞納が続いているなど重大な契約違反がある場合、賃貸借契約を解除することができます。
賃貸借契約の解除に伴い、賃貸人(土地の貸主)は、賃借人(土地の借主)に対し、土地明渡請求を行うことができます。
賃貸借契約の解除に伴う土地明渡請求の注意点としては、単に賃貸借契約の内容に違反する行為があったからといって、賃貸借契約が解除できるわけではないということです。
賃貸借契約を解除できるのは、以下のような重大な契約違反(信頼関係を破壊したといえるほどの債務不履行)があることが必要です。
- 3か月以上連続して賃料の支払を怠った場合
- 無断転貸、無断譲渡(賃借人が土地を他者に転貸又は賃借権を譲渡すること)
- 無断での大規模な増改築
- 重大な用法違反(居住用建物の建築を目的に賃貸したにもかかわらず駐車場として利用した場合など)
- 禁止条項違反(暴力団が利用しないことを約束していたにもかかわらず暴力団事務所を建築した場合など)
使用貸借契約の終了
使用貸借契約とは、貸主が借主に無償で土地の使用を認める契約のことをいいます。
土地の使用貸借契約については、親族間で成立しているケースが多いです。
使用貸借契約が終了すると、土地明渡請求が可能になります。
使用貸借契約の終了原因は、民法で定められています(民法第597条、同第598条)。
- 使用貸借の期間を定めた場合は期間の満了により終了する(民法第597条1項)
- 使用貸借の目的を定めた場合は目的に従った使用収益が終了した時(民法第597条2項)
- 借主が死亡した時(民法第597条3項)
- 使用貸借の目的を定めた場合、使用収益に足りる期間(相当期間)が経過した後は解除することができる(民法第598条1項)
- 使用貸借の期間及び目的を定めなかったときは、いつでも解除することができる(民法第598条2項)
また、前述した賃貸借契約の終了の場合と同様に、使用貸借契約の内容に重大な違反があった場合にも、解除により使用貸借契約が終了します。
5土地明渡請求の方法
①裁判外での協議
土地の明渡しを求める場合、まずは裁判外で相手方と協議を行いましょう。
賃貸借契約や使用貸借契約の解除に伴う土地明渡請求の場合、相手方に解除の意思表示を行うことが必要となるので、土地の明渡しを求めると共に、賃貸借契約又は使用貸借契約を解除する旨の意思表示を記録に残る方法(内容証明郵便等)で行うと良いでしょう。
②訴訟提起(裁判上の請求)
裁判外での協議が決裂した場合、土地明渡請求訴訟を提起することを検討しましょう。
土地明渡請求訴訟では、土地明渡しのほかに、土地が明け渡されるまでの賃料相当額の不当利得返還請求又は損害賠償請求を併せて行うのが一般的です。
また、賃貸借契約に基づく未払賃料等の賃借人に対する他の法的請求がある場合には、併せて請求を行うことができます。
③強制執行
土地明渡請求を認める判決がなされたにもかかわらず、相手方が土地を明け渡さない場合には、強制執行を行うことになります。
強制執行とは、判決などの債務名義を取得した者の相手方に対する請求権を裁判所が強制的に実現する手続です。
土地明渡請求の強制執行の場合、裁判所の執行官という特別な権限を有している者が土地上の動産や建物を収去し、土地の明渡しを実現させます。
なお、強制執行は、判決などの債務名義を取得したら、自動的に行われるというものではないので、別途裁判所に強制執行の申立てが必要になります。
6. 建物明渡請求を弁護士に依頼するメリット
交渉の窓口になってもらえる
土地を占有している相手方と直接交渉を行うことは精神的に負担となることも少なくありません。
特に、土地明渡請求の場合、相手方が高圧的な態度で接してきたり、何かと理由を付けて明渡しを拒否してくるケースも少なくありません。
弁護士に依頼することで、弁護士が交渉の窓口となるため、相手方と直接やりとりをする必要がなくなり、精神的負担を軽減することができます。
書面の作成・送付を代行してもらえる
前述したとおり、相手方に土地の明渡しを求める場合、書面を内容証明郵便で送付することが必要となる場合があります。
弁護士に依頼することで、書面の作成と送付手続を代行してもらえるので、負担を軽減することができます。
訴訟・強制執行の対応をしてもらえる
土地明渡請求訴訟や強制執行の申立ては、書類の作成や裁判手続において、専門的な知識と経験が必要になります。
ご自身で書類の作成を行った場合、法的知識が不足していることにより、本来であれば勝訴できた裁判で敗訴してしまうおそれがあります。
また、裁判手続は、手続自体が非常に複雑で、裁判所とのやりとりも必要になるので、手続に関し専門的な知識と経験を有する弁護士に依頼した方が手続を的確かつ速やかに進めることができます。
さらに、弁護士に依頼すると、裁判所への出頭を弁護士に代行してもらえるので、特にお仕事等で時間が取りにくいという方は、裁判手続にかける時間と手間を大幅に軽減することができます。
7. まとめ
当事務所は、土地明渡請求を含む不動産案件に注力しており、不動産案件の経験と実績は豊富です。
特に、土地明渡請求は事案や手続が複雑であることが多く、一般的にご自身で解決することが難しい類型といえます。
当事務所は初回のご相談を無料としておりますので、土地明渡請求を検討されている方は、お気軽にお問い合わせください。