最近、女優の永野芽郁さんと俳優の田中圭さんの不倫疑惑が報道されています。
本稿では、今後、永野さんが負う可能性のある法的責任について、弁護士が解説いたします。
目次
1. 永野さんが負う可能性のある法的責任の内容
婚姻関係にある者が配偶者以外の者と肉体関係を持つことを「不貞行為」といいます。
不貞行為は、民法上の不法行為に該当しますので、不貞行為を行った当事者双方は配偶者に対し、慰謝料を支払う義務が生じます(民法第709条、同第710条)。
田中さんは既婚者ですので、妻ではない永野さんと肉体関係を持った場合、原則として、田中さんと永野さんは、田中さんの妻に対する慰謝料を支払う責任が生じることになります。
2. 争点と見通し
不貞行為の有無
報道によると、永野さん側も田中さん側も不倫の事実を否定していることから、不貞行為があったと認められるか否かが争点となります。
裁判実務において、不貞行為の有無は証拠により判断されます。
では、報道されている証拠は、不貞行為の事実を認定できる程度のものといえるでしょうか。
以下、詳述いたします。
永野さんの自宅に宿泊したことが分かる証拠
報道によると、田中さんが永野さんの自宅に宿泊したとされています。
また、田中さん側も永野さんの自宅を訪問し、お酒を飲みすぎてしまったので介抱してもらったという限度では認めています。
裁判において、相手の自宅に泊まったことはあるが、肉体関係はなかったという反論がなされることは少なくありません。
しかし、裁判所は、一方の自宅に宿泊した事実が証拠上認定できる場合、不貞行為があったと判断することが多いです。
永野さんと田中さんのケースも、例えば、永野さんと田中さんが永野さんの自宅に一緒に入って行き、その翌日に出てくる写真等がある場合には、不貞行為の事実が認定される可能性が高いでしょう。
例外的に、不貞行為がなかったことを証明できる有効な反証ができた場合、不貞行為の事実が認定されないこともありますが、このような反証が成功するケースは稀です(例えば、一晩中第三者とオンライン通話をしており、かつ、その内容が録画されていた場合など)。
永野さんと田中さんのLINEのやりとり
よく「LINEのやりとりだけでは不貞の証拠にならないと聞いた」とおっしゃる相談者様がいらっしゃいますが、LINEも内容によっては不貞行為の証拠になります。
例えば、肉体関係があったことを仄めかす内容や自宅又はホテルに一緒に宿泊ないし長時間滞在したことが分かる内容が含まれている場合には、不貞行為が認定される可能性が高いです。
永野さんと田中さんのLINEのやりとりが報道されていますが、その中には田中さんが永野さんの自宅を訪れたことを前提とするやりとりが含まれているため、報道の内容が事実であれば、不貞行為があったことを推認させる証拠になると思われます。
一方で、「相思相愛」や「好き」などといったやりとりもあったと報道されていますが、これらの内容のみでは不貞行為の証明としては不十分です。
また、報道されている永野さんと田中さんのLINEのやりとりは、テキストのみであり、客観的資料は公開されておらず、また、永野さん側も田中さん側も報道されているLINEのやりとりの事実を否定していることから、客観的な証拠(例えば、スクリーンショット等)がなければ、当然不貞行為の証拠とはなり得ません。
なお、不貞行為の有力な証拠については、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
慰謝料の金額
仮に不貞行為の事実が認定された場合、慰謝料の金額が争点となります。
不貞行為を理由とする慰謝料額の相場は、50万〜300万円程度と幅がありますが、金額を決定する大きな要素は、婚姻関係の破綻の程度です。
離婚も別居もせず婚姻関係を継続する場合には50万〜100万円程度、離婚するには至っていないが不貞行為を理由に別居するに至っている場合には150万円程度、離婚するに至っている場合には200万円程度が相場といわれています。
これに加え、様々な考慮要素を加味することで不貞慰謝料の金額が決まることになります。
永野さんと田中さんのケースの場合、離婚や別居の有無は不明ですが、現時点でおおよそ確定できる慰謝料の増額事由と減額事由は以下のとおりです。
増額事由
- 田中さんの婚姻期間が約14年と長期間に渡る
- 2人の子がいる
- (報道されているLINEのやりとりが真実である場合)永野さんと田中さんの交際期間が約7か月と比較的長期間に渡る
- (不貞行為の事実が認定されることを前提に)不合理な弁解を行い反省の態度が見られない
減額事由
- 不倫疑惑を報道された結果、多くのバッシングを受け、番組の降板を余儀なくされるなどの社会的制裁を受けている
これらの増額事由と減額事由を考慮すると、私個人の見解としては、既に大きな社会的制裁を受けているという事情は慰謝料額の算定に大きく影響すると予想され、田中さん夫婦が婚姻関係を継続する場合には70万〜80万円程度、別居するに至っている場合には120万〜150万円程度、離婚するに至っている場合には180万〜200万円程度になると思われます。
ただし、上記金額はあくまで訴訟(裁判)で判決がなされた場合に予想される金額であり、訴訟に移行する前の協議段階では、芸能人であるがゆえに大事にしたくないという心理が働くでしょうから、上記金額よりも高額な和解金で解決する可能性が高いと思われます。
なお、不貞慰謝料の相場については、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
3. 最後に
本稿は、あくまで報道の内容を前提に私個人の見解を述べたものであり、裁判においては重要となる、実際にどのような証拠があるか、証拠の収集方法が違法で裁判では証拠として採用されない可能性があるかなどの詳細な証拠方法は考慮しておりません。
また、裁判では当事者らが法廷で直接供述ないし証言をする場合もあるところ(当事者尋問・証人尋問といいます)、当事者らの直接の供述や証言は、不貞行為の事実認定に重要な影響を及ぼすものになりますが、本稿はそのような手続を踏んでいない段階で作成しているものになります。
したがって、あくまで不貞行為を理由とする慰謝料請求の一般論を、永野さんと田中さんの事例(報道内容)を参考に解説したものとご理解いただければと存じます。