SNSや掲示板で誹謗中傷されている場合や、悪質な書き込みをされている場合、まずはその相手を特定する必要があります。
書きこんだ人を特定するには、発信者情報開示請求という手続を利用します。
そこで、本記事では、発信者情報の開示請求を行う場合の費用について解説します。
目次
1. 発信者情報の開示手続
発信者情報の開示の請求は、サイト管理者に対するものと、プロバイダに対するものを、計2回申し立てることが必要です。
まずサイト管理者に対し、投稿の際のIPアドレスの開示を請求し、次にプロバイダに対し、そのIPアドレスの契約者の開示を求めるという流れです。
詳しい手続きの流れは、以下のコラムをご確認ください。
それぞれの手続きにかかる費用は、以下のとおりです。
サイト管理者への請求
サイト管理者に対するIPアドレスの開示は、仮処分(民事保全法という法律で定められた手続きで、争いのある権利関係について、暫定的な措置をすることを認めるもの)命令の申立て又は発信者情報開示命令の申立てを行うのが一般的です。
仮処分命令申立てにかかる費用 | |
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申立費用(印紙代) | 2000円 |
送達用郵券(切手) | 3000円程度(裁判所により異なる) |
担保金 | 10~30万円程度 |
開示命令申立てにかかる費用 | |
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申立費用(印紙代) | 1000円 |
送達用郵券(切手) | 3000円程度(裁判所により異なる) |
2つの手続きで大きく異なるのは、担保金の要否です。
仮処分については、暫定的な措置を認める手続きのため、後に開示すべきではないことが判明した場合など、相手方に損害が生じた際に、その損害を担保するために納めることが必要となります。
経験上、ほとんどのケースでは後に担保金の還付が請求できるものの、一時的に担保金の納付が必要となる点で、開示命令の方が金銭的な負担は少ないです。
他方で、仮処分の方が迅速にIPアドレスの開示を受けられることが多いため、迅速に開示を求めたい場合には仮処分の手続きを選択することもあります。
どちらの手続きを利用しても、得られる効果(IPアドレスが開示される)は同様ですが、ログの保存期間や書き込みがされた媒体により適した手続きがあるので、どちらの手続きを選択したらよいか分からない場合は、弁護士に相談することをお勧めします。
プロバイダへの請求
IPアドレスの開示を受けられたら、次はプロバイダに対して契約者情報の開示を請求し、ます。
プロバイダへの請求は、発信者情報開示命令の申立てを行うのが一般的です。
2022年10月1日に改正プロバイダ責任制限法(民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律)が施行される以前は、発信者情報開示請求訴訟をすることが一般的でしたが、以下のとおり開示命令の方が費用が安いこと、手続が簡便で迅速であることから、今ではほとんど発信者情報開示命令の申立てを選択します。
開示命令申立てにかかる費用 | |
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申立費用(印紙代) | 1000円 ※消去禁止命令の申立ても行うときは、+1000円 |
送達用郵券(切手) | 3000円程度(裁判所により異なる) |
発信者情報開示請求にかかる費用 | |
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印紙代 | 1万3000円 |
送達用郵券(切手) | 6000円 |
開示命令の申立ては、サイト管理者に対する場合と同様1000円の印紙代がかかりますが、通常は、「消去禁止命令」という、プロバイダに対してログを削除しないよう求める申し立ても同時に行いますので、合計で2000円分の印紙が必要です。
これにより、プロバイダ側でログが消えてしまい、投稿者が特定できなくなってしまうことを防ぐことができます。
2. 発信者情報の開示を弁護士に依頼する場合の費用相場
発信者情報の開示手続きを弁護士に依頼する場合、以下のような費用が生じることが多いです。
着手金
「着手金」とは、弁護士が事件に着手する際に生じる費用です。
弁護士は、この着手金が支払われてから事件の処理を開始します。
開示請求の場合、着手金の相場は以下のとおりです。
投稿の数やサイトの数が多い場合には、着手金が相場より高額になることもあります。
着手金 | 20万〜30万円程度 |
報酬金
「報酬金」とは、ある一定の条件を満たした場合に生じる費用のことです。
開示請求の場合には、開示が成功した場合(相手が特定できた場合)に生じることが一般的です。
報酬金 | 20万円程度 |
日当や実費について
「日当」とは、弁護士が調停や訴訟の期日に出頭するなど事件処理のために事務所外で活動をした際に生じる費用です。
発信者情報開示請求の場合、期日はウェブで実施されることがほとんどであり、ウェブでの期日の場合には、日当は生じないとしている事務所もあります。
また、前述した裁判所へ納める費用とは別に、郵便代や会社の履歴事項全部証明書(いわゆる登記簿謄本)など、事件の処理にあたって必要な費用(実費)は依頼者の負担としている事務所が多いです。
3. 弁護士に依頼する場合の注意点
発信者情報開示請求を弁護士に依頼する場合には、まずは相場より高額な費用ではないかをよく確認すると良いでしょう。
また、実費や日当などが思ったより費用がかさんでしまったということにならないよう、事前に総額どの程度の費用がかかるかの見通しを聞いておくことをお勧めします。
さらに、開示請求の場合には、契約者情報は開示されたものの、集合住宅のオーナーがまとめてインターネットの契約をしており、投稿者の特定には至らなかったというようなケースも想定されます。
報酬金の発生する条件や、その条件が委任契約書(弁護士に依頼する場合に作成する契約書)に記載されているかも、しっかり確認しましょう。
4. まとめ
発信者情報の開示の手続きは、複雑な点も多く、またどの手続きを選択するかも事前によく検討する必要がある一方で、ログの保存期間が限られていることから、ご自身で対応が難しく、弁護士に依頼をした方が良い場合も多いでしょう。
依頼の際に弁護士費用をきちんと確認しておくことで、その後の弁護士とのやり取りもスムーズにできます。
当事務所では、ご相談の際に分かりやすく、明確に弁護士費用をご説明するよう心がけておりますので、開示請求をご検討の方は、お気軽にお問い合わせフォームよりご連絡ください。