新静岡駅前法律事務所

妊娠詐欺への対応方法を弁護士が解説

赤ちゃんと養育費
2024-01-23
刑事 男女トラブル

「マッチングアプリで出会った女性と関係を持ったら後日妊娠したと連絡があった」、「交際相手に別れを告げたところ妊娠しているかもと言われた」など、近年は妊娠に関する相談が増えています。

相談の中には、「性交渉は1回だけで避妊具もしていたのに」、「今まで妊娠の話が出たことはなかったのに別れ話をしたらいきなり妊娠しているかもと言われた」など、いわゆる「妊娠詐欺」の相談もあります。

妊娠の可能性を言及された際に、対応方法を誤ると、大きな損害を被ったり、法的リスクを負うおそれがあります。

本稿では、妊娠詐欺が疑われる場合にどのように対応すべきかを解説いたします。

目次

妊娠詐欺とは

妊娠していないにもかかわらず、妊娠したと嘘をついて、お金を騙し取ることです。

金銭の名目は、中絶費用、治療費、検査代、慰謝料、休業損害(妊娠して会社を休んだ給与分の損害賠償)など様々です。

慰謝料に関しては、女性の夫と名乗る人物が出てきて、「妻と不倫して、しかも、妊娠までさせた」などと言って、高額な慰謝料を請求してくることもあります(いわゆる「美人局」)。

マッチングアプリや出会い系サイト等で出会った女性と関係を持った場合に被害に遭うケースが多いですが、交際相手に別れを切り出した際に交際相手が交際解消を防ぐためや復讐のために妊娠しているかもしれないと嘘をついて、直接会うことを要求してくるというケースもあります。

妊娠詐欺は、欺罔行為により金銭の交付を受けるもので、刑法上の詐欺罪(刑法第246条)に該当します。

また、金銭を要求する過程で「金を払わないと痛い目に合わせるぞ」などの脅迫行為があった場合には、恐喝罪に該当することになります(刑法第249条)。

民法上は、詐欺又は強迫による意思表示として取消しの対象となり(民法第96条1項)、交付した金銭の返還請求が認められます。

絶対にしてはいけない対応

①お金を支払ってしまう

女性から、「検査代1万円を支払ってくれれば大丈夫」などと言われ、「1万円なら」とお金を支払って解決しようとする方がいらっしゃいますが、これは絶対にやってはいけない行為の1つです。

仮にお金を支払うのであれば、書面等の記録に残る方法で清算条項(「当事者間に何らの債権債務がないことを相互に確認する」というこれ以上の金銭請求はできないことを確認する条項)を定めることが必須ですが、妊娠詐欺の場合、このような条項を定めてくれる相手方はほとんどいません。

清算条項を定めずにお金を支払ってしまうと、「カモ」扱いされてしまい、多くのケースでは、名目を変えて次の金銭請求をしてきます。

例えば、「検査したら子宮外妊娠であることが分かり、中絶費用として50万円かかる」、「妊娠で体調を崩して会社を休まなければならなくなった。生活ができないから、生活費を支払って欲しい」など、追加で金銭を要求してくるようになります。

この時点でおかしいと思い、支払を拒否する方がいますが、すると、女性は「警察に被害届を出す」、「裁判を起こす」、「職場に連絡する」、「追加で慰謝料を請求する」などと脅迫やプレッシャーをかけてくることがあります。

また、「せっかく授かった生命だから、産もうかどうか悩んでいる」と、出産を仄めかして揺さぶってくる場合もあります。

脅迫等に耐えられず、金員を支払ってしまうと、再び名目を変えて金銭を請求してくるというこの繰り返しとなるおそれがあります。

したがって、「早く終わらせたいから」といってお金を支払ってしまうことは絶対にやめましょう

②無視する

「怪しいからきっと詐欺だろう」と決めつけて連絡を無視することは非常に危険です。

万が一、女性が本当に妊娠していた場合には、きちんと対応しないことで中絶が可能な期間が過ぎてしまい(中絶が可能な期間は22週未満、初期中絶が可能な期間は12週未満)、選択肢が出産しかなくなってしまうということがあります。

出産に伴うリスクは下記のとおりです。

  • 強制認知される(認知されたことが戸籍に記載される)
  • 養育費の支払義務を負う
  • 生まれた子に相続権が発生する

生まれた子があなたの子である場合、これらの義務から逃れることができず、大きな法的リスクと言えます。

また、妊娠した女性の身体的・精神的負担を軽減するための対応を取らなかったということで、高額な慰謝料請求が認められるリスクもあります(最後まで妊娠した女性を無視し続けたために200万円の慰謝料請求が認められた例もあります)。

さらに、連絡を無視した結果、女性が自宅や職場に押しかけてきたというケースも散見されます。

出会い系サイトやマッチングアプリで出会った面識のない女性であっても、お風呂やトイレの間に身分証等を見られていて、個人情報を把握されていることがあります。

加えて、女性に携帯電話番号を知られている場合には、携帯電話番号から弁護士会照会という制度を利用することで氏名や自宅住所(社用携帯の場合は職場)を特定され、突然、弁護士から書面が届くという可能性も否定できません。

以上の理由から、安易に妊娠詐欺であると決めつけて連絡を無視することは絶対にやめましょう

対応方法

①妊娠の有無を確認する

まずは、女性に対し、妊娠の有無を確認しましょう。

妊娠したことの証拠として、陽性判定の妊娠検査薬やエコー写真を示してくることが多いですが、これらはインターネットから拾ってきたり、業者から購入した画像であることがほとんどですので、妊娠検査薬やエコー写真のみで妊娠していると確定することは危険です。

信用度の高い資料としては、妊娠証明書や診断書が挙げられますが、これらも偽造である可能性は否定できませんので、産婦人科に同行するなどして妊娠の有無をきちんと確認すべきです。

②金銭を支払って解決する場合

妊娠の事実が確認でき、女性に検査代や中絶費用等の負担が生じた場合、これらの費用に対し、男性側も一定の割合を負担すべきであると判断されることが多いです。

負担割合は妊娠に至る経緯や金額等の事情を総合的に考慮して決められますが、協議段階では互いに2分の1ずつを負担する、又は、妊娠や中絶に伴う女性の身体的・精神的負担を考慮し、男性側が全額を負担することで解決するケースがほとんどです。

金銭を支払う場合には、必ず女性の負担額が分かる客観的資料(領収書や振込明細等)を確認しましょう。

また、前述のとおり、清算条項を定めないまま金銭を支払ってしまうと、名目を変えて追加の請求がなされるおそれがあるため、必ず合意内容を書面等の記録に残した後に支払うようにしましょう。

③警察に相談する

妊娠したことが分かる資料等の提示を求めても、女性がこれに応じず、金銭請求が止まないような場合には、警察に相談するという選択肢もあります。

警察が詐欺事件や恐喝事件として立件(刑事事件化)すれば、捜査が開始されるので、女性の妊娠の有無を確認することができますし、女性が逮捕されたり刑事罰を受ける可能性があります。

警察に相談に行かれる際には、女性とのやりとりや女性が提示してきた資料(妊娠検査薬やエコー写真等)があれば、プリントアウトして資料として持参するようにしましょう。

有力な証拠が多ければ多いほど、警察が立件してくれる可能性が高まります

もっとも、警察に相談した場合、警察から頻繁に連絡が入ったり、事情聴取や証人尋問のために会社を抜けたりしなければならないなど、日常生活に支障が出る可能性があり、特に同居の家族がいらっしゃる方は家族に気付かれてしまうおそれもあるので、警察に相談するか否かは慎重に検討すべきです。

また、警察に相談しても、事件性がないと判断されれば、警察は動いてくれませんので、警察に相談にすれば必ず解決できるわけではないという点には注意が必要です。

加えて、仮に詐欺事件として立件されたとしても、警察がお金を取り戻してくれることはありませんので(「民事不介入」といいます)、その点にも注意が必要です。

詐欺を理由に金銭の返還請求をするためには、別途民事訴訟を提起する必要があります。

④弁護士に介入してもらう

警察が動いてくれない場合や警察沙汰にはせず穏便に解決したいという方は、弁護士に間に入ってもらい、女性と交渉してもらう方法があります。

弁護士には守秘義務がありますので、情報が外部に漏れることはありませんし、交渉の窓口となって、連絡が必要な場合はすべて直接やり取りをしてくれるので、女性とご自身でやりとりをする必要はなくなります

また、妊娠の事実を確認するため、又は、中絶をする場合には本当に中絶手術が完了したかを確認するために、弁護士が病院に同行することもあります(弁護士に病院への同行を依頼する場合、日当や交通費が生じることがあります)。

さらに、女性が妊娠証明書や診断書を提示してきた場合、弁護士であれば、これらが偽造でないかを確認するために、弁護士会照会という制度を利用して、病院に妊娠証明書や診断書が偽造でないかを確認できることがあります。

その他、弁護士に依頼するメリットとしては、既に金銭を支払ってしまっている場合には女性に対する返還請求も行ってもらえる、弁護士会照会制度を利用して女性の氏名や住所等の情報を取得してもらえる可能性がある、女性が詐欺罪や恐喝罪等の刑事責任を免れたいと考え金銭請求を取り下げる可能性が高まる、弁護士が介入したことで警察が立件して捜査を開始する可能性が高まる、金銭を支払って解決する場合には法的に有効な合意書を作成してもらえるなどがあります。

まとめ

関係を持った女性から、突然、妊娠の事実を告げられると、冷静な判断ができずに誤った対応をしてしまうおそれがあります。

誤った対応をしてしまうと、これまで述べてきたような非常に大きな法的リスクを負うことになりますので、妊娠トラブルに遭ってしまった場合には、1人で抱え込まず、まずは弁護士に妊娠詐欺の可能性や対応方法を相談してみると良いでしょう。

著者

弁護士 長谷川達紀

弁護士
長谷川達紀

静岡県弁護士会所属

家事事件と男女トラブルを中心に月100件を超える相談に対応。

趣味はグルメ巡りとテニス。

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