「知人にお金を貸したのに、いつになっても返してもらえない」
このようなお悩みをお持ちの方からのご相談をよくお受けすることがあります。
特に知人同士での金銭の貸し借りの場合、強く請求できないなどの理由でなかなか返してもらえないことも多いです。
そこで、本記事では、貸したお金が返ってこない場合の貸金返還請求の方法について解説します。
目次
1. 貸したお金が返ってこない場合の対処法
①メールや電話等で催促する
まずは、相手に直接連絡を取って返済を促すことが考えられます。
相手との関係性にもよりますが、一番手間やコストがかからない方法といえるでしょう。
また、友人や知人同士の場合、借用書などお金を貸したことの証拠がない場合も多いため、そのような場合には、メールやLINE等の履歴が残る方法で、いつまでにいくら返すのかというのを約束してもらうことができると、裁判等で有利になります。
電話の場合には、録音をしておくこともお勧めします。
なお、「返してくれないと○○するぞ」「返せないのであれば○○しろ」といった発言をしてしまうと、恐喝罪(刑法第249条)や脅迫罪(刑法第222条)、強要罪(刑法第223条)に問われかねないので、注意が必要です。
②内容証明郵便を送る
内容証明郵便とは、誰が・いつ・どのような内容の文書を送ったかを証明してくれる日本郵便のサービスです。
相手に対して返済を求めたことを証拠として残しておくことができ、また、メールや電話よりも相手に対して本気で請求しているということを伝えることもできるでしょう。
内容証明郵便は、郵便局の窓口で送ることができます。
③調停を申し立てる
調停とは、裁判所を介して当事者同士で話し合いをする手続です。
2名の調停委員と1名の裁判官(又は調停官)が当事者の話し合いを仲介し、お互いに合意をすることで紛争の解決を図ります。
①や②の手続きと比べ、公平な立場の第三者を介して話し合いを行うことで、柔軟な解決が期待できる点がメリットです。
ただし、あくまで当事者同士が合意をしないと成立しない手続であるため、相手が話し合いに応じる余地がなさそうな場合には、以降で述べる裁判手続を利用する方がよいでしょう。
④支払督促をする
支払督促とは、貸金返還を含む金銭の支払などを求める場合に利用できる手続です。
書面の審査のみで行われる手続のため、通常の裁判のように裁判所に出頭する必要はありません。
請求に理由があると裁判所が認めた場合、裁判所から相手に対し支払督促が発され、相手が2週間以内に異議申立をしなければ、強制執行(債務者の財産から強制的に回収する手続)をすることができます。
異議申立がされた場合には、通常の訴訟に移行し、以後は通常の民事訴訟の手続(⑥)に従って手続が進むことになります。
支払督促は、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に申立書と申立手数料を提出することで申し立てができます。
申立手数料は、請求する額を基準に決められていますので、裁判所のホームページで額を確認してみるとよいでしょう。
⑤少額訴訟を提起する
少額訴訟は、60万円以下の金銭の支払いを求める場合にのみ利用できる手続です。
1回の期日のみで審理が終わり判決が出る手続なので、通常の訴訟よりも迅速に判断を得られる点にメリットがあります。
ただし、相手が少額訴訟手続で審理をすることに異議を申し立てた場合には、通常の訴訟手続に移行します。
少額訴訟でこちらの言い分を認める判決が出た場合には、その判決は、通常の訴訟で判決を得た場合と同じ効果を持つため、強制執行をすることができるようになります。
少額訴訟も、支払督促と同様、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に対して行います。
申立書ではなく訴状を提出して行うこととなり、訴状の書式は裁判所のホームページで確認できます。
また、借用書などの証拠がある場合には、訴状と共に提出するようにしましょう。
⑥訴訟を提起する
訴訟は、裁判所が当事者の主張や証拠を元に一定の判断を下す手続です。
金銭の返還を求める場合には、(i)返還を約束して(ⅱ)実際に金銭を交付した(渡した)ことを原告である貸した側が主張・立証する必要があるため、借用書などの証拠がない場合には、こちらの言い分が認められない可能性が高くなってしまいます。
訴訟では、といつ、どのような約束で(いつまでに返すか、利息の合意はあるかなど)お金を貸したかや、いつお金を渡したかなどを借用書などの証拠と共に主張していくこととなります。
訴訟を提起する場合、相手方の住所地を管轄する裁判所又は原告(お金を貸した側)の住所地を管轄する裁判所に訴状を提出して行います。
2. 強制執行とは?
支払督促や少額訴訟、通常訴訟で判決を獲得したとしても、相手が任意に支払をしない場合があります。
そのような場合には、強制執行の手続を行うことになります。
強制執行とは、裁判所がお金を返済する義務を負う人(債務者)の財産を差し押えて債権者に分配するなどの方法により、債権者(お金を返してもらう権利を持つ人)に債権を回収させる手続です。
例えば、相手の預金や給与を差し押さえてそこから回収をする債権執行や、相手の所有している不動産を差し押さえて競売し、代金から回収する不動産執行などの手続があります。
強制執行をするには、誰が誰に対しどのような請求権を有しているかを公的に証明する文書である「債務名義」が必要となります。
契約書や借用書にお金を借りたことが記載されていても、それは当事者同士が私的に作成したものなので強制執行はできず、判決や公正証書などの債務名義がなくてはなりません。
そこで、強制執行を行う前提として、上で述べたような支払督促・少額訴訟・通常訴訟を行う必要があるのです。
訴訟などにおいて債務名義を取得することができたら、強制執行の申立てが可能となります。
強制執行は、原則として、債務者の住所地を管轄する地方裁判所に申立てを行います。
申立てに必要な書類は、以下のとおりです(債権執行の場合の例)。
- 申立書
- 債務名義の正本
- 送達証明書
- 資格証明書
- 申立手数料
- 郵券(切手)
①申立書
申立書には、請求する債権や差し押さえる債権、当事者の目録などを記載します。書式は裁判所のホームページで確認することができます
②債務名義の正本
判決や公正証書などの書類です。
債務名義の種類によっては、執行文(強制執行ができる旨の文)を債務名義に付与してもらう必要があります。
執行文の付与は、債務名義を作成した機関に申請して付与してもらうことができます。
③送達証明書
債務名義が債務者に送達(送付)されたことを証明する文書です。
こちらも、債務名義を作成した機関に申請して証明書を発行してもらうことになります。
④資格証明書
債務者や第三債務者が法人の場合に必要となり、法人の商業登記簿謄本か代表者事項証明書を提出します。
⑤申立手数料
債権者と債務者が1人で、債務名義が1通の場合は、手数料は4000円です。
収入印紙にて裁判所に納めます。
⑥郵券(切手)
裁判所から債務者や第三債務者(差し押さえる債権の債務者をいいます)に書類を送付するために、事前に一定額の郵便切手を納めます。
裁判所によって必要な額や種類が異なるため、事前に裁判所に確認するようにしましょう。
申立てが完了すると、裁判所から債権差押命令が第三債務者と債務者に送付されます。
債権差押命令が債務者に送達された日から1週間が経つと、第三債務者に対して取り立てができる(例えば、銀行に対して預金を払い戻すよう請求できる))ことになり、債権の回収が可能となります。
3. まとめ
貸したお金が返ってこない場合には、裁判手続や強制執行を行わなければならない場合も多いです。
裁判手続やその後の強制執行手続は、準備する書類が多かったり、裁判所のルールに従った書面の記載が必要であったりと、ご自身のみでのご対応が難しいこともあるでしょう。
当事務所では、債務名義の取得から強制執行手続まで、一貫してご依頼をお受けすることが可能であり、実際に債権を回収できた実績も多くございますので、ぜひ一度お問い合わせフォームよりお問い合わせください。