相手方親が面会交流に応じない、希望する面会交流の内容が実現しないというような場合には、面会交流調停を申し立てることが考えられます。
本稿では、面会交流調停の流れや調停を有利に進める方法について、解説します。
目次
面会交流とは
夫婦が離婚又は別居した場合に、子の親権者でない又は子を監護していない親(非監護親)が子と直接会ったり、面会以外の方法(電話、手紙、メール等)で意思疎通を図ることを面会交流といいます。
裁判実務では、明らかに子の福祉(利益)を害さない限り面会交流(直接交流)は認められるべきであると考えられています。
面会交流の頻度は月1回とされることが多いです。
また、長期休暇には宿泊を伴う面会交流を実施する場合もあります。
面会交流の実施に当たっては、家庭裁判所が「面会交流のしおり」というものを発行していますので、参考にすると良いでしょう。
また、面会交流の実施をサポートしてくれる第三者機関もありますので、参考にしてみてください。
面会交流調停の流れ
面会交流調停の申立て
必要書類
- 申立書(原本と写し各1通)
- 送達場所の届出書
- 事情説明書
- 進行に関する照会回答書
- 子の戸籍謄本(3か月以内に発行されたもの)
- 非開示の希望に関する申出書(必要に応じて提出)
申立費用
- 収入印紙1200円(子1人につき)
- 郵券(郵便切手)約1000円(詳細な金額と切手の種類は裁判所毎に異なりますので、直接裁判所にお問い合わせください)
申立てに不備があった場合
申立ての手続に不備があった場合、裁判所から訂正や追加の提出を求められますので、裁判所の指示に従いましょう。
申立先
相手方親の住所地を管轄する家庭裁判所
第1回期日の調整
申立てが完了すると、裁判所から連絡があり、第1回期日の日程調整を行います。
調停期日の日時は裁判所毎に異なりますが、平日の午前10時から午後5時までの時間帯で実施されることがほとんどです。
また、管轄の裁判所が遠方の場合等特段の事情がある場合には、電話会議で参加させてくれる場合もあるので、電話会議を希望の場合には、裁判所にその旨伝えましょう。
第1回期日
第1回期日の日程調整が完了しましたら、その日時に裁判所に出頭しましょう。
第1回調停の日程は、申立人と裁判所のみで調整し、相手方とは調整しないので、相手方の都合がつかない場合、相手方は欠席となることもあります。
裁判所に到着したら、待合室で待機します。
調停期日
調停では、調停委員会が当事者の話合いを仲介してくれます。
調停委員会は、裁判官(調停官)1名と調停委員2名の合計3名で構成されます。
裁判官は、他の調停を掛け持ちしているため、主に調停の進行を担うのは調停委員2名になります。
調停は、調停室で行われ、当事者が交互に調停室に入り、調停委員を介して話合いを進めていきます。
交互に入ることから、基本的に相手方と顔を合わせることはありませんが、初めに調停の一般的な説明をする場合や調停の成立又は不成立の場面では、同席を求められることもあります。
調査官調査
家庭裁判所には、家事事件について調査を行う「調査官」がいます。
面会交流について、折り合いがつかない場合には、調査官による調査が実施されることがあります。
具体的には、当事者双方との面談、子の意向・心情調査、交流場面観察(非監護親と子が面会交流をする場面を調査官が観察し内容をまとめる調査)などです。
調停の成立
話合いがまとまると、調停成立の手続を行います。
調停委員会が合意した内容を調停条項としてまとめてくれます。
裁判官が調停条項を当事者に読み上げ、最終確認が完了すると、調停成立となります。
後日、裁判所が調停条項を調書という書面にまとめてくれますので、調書が自宅に届くと(直接裁判所に取りに行くこともできます)、すべての手続が終了となります。
調停の不成立
話合いがまとまらず、調停委員会が調停成立の見込みがないと判断すると、調停は不成立となり終了します。
調停が不成立となると、自動的に審判という手続に移行します。
審判とは、裁判官が当事者の主張や資料を精査した上で決定を下す手続となります。
調停不成立の手続が終了した後、第1回審判期日の日程調整を行うことになりますので、日程調整が完了しましたら、その日時に裁判所に出頭しましょう。
調停を有利に進める方法
面会交流を拒否する原因を解決する・代替案を示す
相手方親が面会交流を拒否している場合、拒否することに何らかの原因があるはずです。
その原因が解決可能なものであれば、原因を解決する方法を提案することで、面会交流を実現できることがあります。
また、解決できないものであっても、代替案を示すことで、面会交流実現の方向に向かっていくこともあります。
【具体例】
- 直接顔を合わせたくない→親族に立会ってもらう、第三者機関を使う
- 連れ去りが怖い→相手方親が立ち会う、周りに人が多くて出入口が1つしかない施設内で行う(例:児童館、ファミリーレストラン)
- 子が直接会うのを嫌がっている→プレゼントや手紙等の間接交流から始めて慣らしていく
- 習い事や学校行事で忙しい→習い事や学校行事の見学をお願いする
- 初めての面会交流なので不安→調査官立会いのもと裁判所の一室で行う(これを「試行的面会交流」といいます)
- 引渡しの時に不満や悪口を言われないか不安→夫婦間の紛争に関する話は一切しないことを約束する書面を交わす
夫婦間の紛争を持ち込まない
面会交流調停を申し立てる段階に入っている夫婦は、離婚又は別居するに至っていることがほとんどなので、同居中の相手方親の言動に不満を持っていることが多いです。
面会交流調停は、あくまで非監護親と子の面会交流の内容を話し合う場ですので、相手方親との婚姻関係に関する紛争を持ち出してしまうと、相手方の感情を逆撫でしてしまい、円滑な進行の妨げになるだけでなく、面会交流の実施が難しくなる場合があります。
したがいまして、調停においては、相手方親に対する不満を述べるなど夫婦間の紛争を持ち出すことは控えた方が良いです。
強引に進めようとしない
自分の希望する条件を相手方親に押し付けるような進め方をしてしまうと、相手方親が引いてしまい、面会交流の実施が難しくなる場合があります。
面会交流は、双方の親が協力して行うものですので、譲れるところはできる限り譲る姿勢を見せることで、相手方親も面会交流の実施に協力的になってくれやすくなります。
【具体例】
- 育児と仕事で忙しくて時間が取れない→日程を合わせてあげる
- 今月は学校行事が多く面会交流ができない→今月は控えて来月に2回実施してもらう
- 面会交流中に子が帰りたがった→相手方親に連絡・報告した上で早めに帰らせてあげる
面会交流調停を弁護士に依頼するメリット
様々な選択肢を示してもらえる
前述のとおり、面会交流の実現可能性を高めるためには、面会交流を拒否する原因を解決する、代替案を示すという点が非常に重要になってきます。
弁護士は、面会交流に関するノウハウを持っていますので、色々な選択肢を示してもらうことができるメリットがあります。
調停・面会交流に同席してもらえる
弁護士が調停に同席してくれますので、こちらに不利な主張を展開してしまうなどのミスを防ぐことができます(緊急の要件等で調停に出頭することが難しい場合には弁護士が代理で出頭してくれます)。
また、必要に応じて、弁護士が面会交流に立ち会ってくれますので、その点もメリットになります。
書面を作成してもらえる
調停では、調停委員会から書面や資料の提出を求められる場合があります。
弁護士に依頼することで、説得的な書面を作成してもらえますし、また、資料を精査した上でこちらに有利な資料を提出してもらえます。
まとめ
面会交流調停の申立てをお考えの方や面会交流の調停がうまく進まないという方は、一度弁護士に相談し話を聞いてみると良いでしょう。