2026年5月21日に改正民事訴訟法が施行されました。
これまでは訴訟(裁判)を提起するのには、必ず紙の訴状を裁判所に提出する必要がありましたが、改正民事訴訟法の施行により、オンラインで裁判を起こすことができるようになりました。
そこで、本記事では、民事訴訟手続きのデジタル化について解説します。
目次
1 民事訴訟手続きのデジタル化
民事訴訟手続きのデジタル化により、これまで行っていた手続きがオンラインで完結することになります。大きく変わったのは、以下の点です。
オンライン申立て
これまでは、裁判を起こす場合には、紙の訴状を作成し、裁判所に持参するか、郵送で提出する必要がありました。
現在は、mints(民事裁判書類電子提出システム)というシステムを利用することにより、訴えの提起をオンラインでできるようになりました(民事訴訟法第132条の10第1項)。
訴状だけでなく、準備書面や証拠についてもオンラインで提出できるようになります。また、訴え提起手数料についてもmintsから電子納付することが可能です。これまでのように、印紙代と郵券(切手)代を計算し、郵便局で購入して納付する必要もなくなりました。
インターネットによる送達・送付(直送)
さらに、インターネットによる送達(民事訴訟法第109条の2)や直送(民事訴訟規則第47条の2)も可能となりました。
訴状等をインターネット経由で提出すると、裁判所書記官によりアップロードがされ、その旨が相手方当事者に通知されます。相手方当事者による閲覧、ダウンロード又は通知から1週間が経過すると、送達の効力が生じます(民事訴訟法第109条の3各号)。
また、準備書面や証拠なども、インターネットによる直送(相手方に直接書類を送付することをいいます)ができるようになりました。
今までは相手方用の書類は、別途副本を作って裁判所に提出したり、直接FAXや郵送する必要があったため、手続きが簡略化されました。
ただし、インターネットによる送達・送付ができるのは、裁判所のシステムを利用してオンラインで送達を受ける旨の届出がされている場合のみです。
ウェブ会議で参加できる期日の拡大
改正前の民事訴訟法では、口頭弁論期日(公開の法廷で実施される裁判の期日)については、ウェブ会議で参加することはできませんでした。口頭弁論期日は、5分程度で終了することも多く、口頭弁論期日のために裁判所に出向く負担が問題となっていました。
民事訴訟法の改正により、裁判所が相当と認めるときは、口頭弁論期日についてもウェブ会議で参加することができるようになりました(民事訴訟法第87条の2第1項)。
訴訟記録の電子化
これまでは、裁判所で保管される訴訟記録も紙で保管されていたため、記録の閲覧をしたい場合には、裁判所に出向き、紙の記録を謄写(コピー)するなどして対応する必要がありました。対象の記録が膨大な場合には、謄写に時間がかかったり、費用が高額になってしまうといった課題がありました。
改正法により、訴訟記録(提出書面や判決書、調書など)が電子データで管理されるため、オンラインで閲覧・保存が可能となりました(民事訴訟法第91条の2第1項)。
2 電子申立ての方法
既に述べたとおり、電子申立てをするにはmintsというシステムを利用します。システムの利用には利用者登録(アカウント登録)を行う必要がありますので、裁判の電子申立てをお考えの方は、事前に利用登録を済ませておくようにしましょう。
詳細は、裁判所のホームページで確認できます。
なお、弁護士等が代理人となる民亊訴訟については、原則としてオンライン申立てが義務付けられますが(民事訴訟法第132条の11第1項)、そうでない場合には、従前どおり紙で訴状を提出することも可能ですので、オンライン申立てが難しい場合には、紙での提出を検討するとよいでしょう。
mintsの利用登録が完了すれば、ログインのうえで必要事項の入力や、訴状データのアップロードをすることにより訴訟提起が可能です。
上で述べた裁判所のホームページにおいて、詳しいマニュアルを確認できるので、確認しながら手続きを進めると良いでしょう。
3 対象となる事件・ならない事件
民事訴訟法の改正によりオンライン申立てが利用可能となったのは、民亊訴訟手続きが中心です。例えば民事執行(差押えなど)や倒産、労働審判、家事事件や人事訴訟は、オンライン申立ての対象外です。すべての手続きがオンラインでできるわけではない点には、注意が必要です。
4 オンラインの場合の手数料
オンラインで訴訟を提起する場合、手数料早見表記載のとおり、紙の場合に比べて1100円手数料が安くなります。
オンラインを活用することで、訴訟費用の負担も減らすことができるので、オンラインを利用することを検討すると良いでしょう。なお、オンラインの手続きに不安がある場合、
弁護士によるシステムの操作や書面のデータ化などの本人サポートを受けることができます(本人サポート業務)。
詳細については、日弁連会のホームページで確認しましょう。ただし、あくまで手続きのサポートであり、書面の内容についての法律相談は対象外である点には注意が必要です。
5 まとめ
mintsの登場により、以前よりも訴訟提起のハードルが下がり、ご自身のみで裁判を行うことを検討されている方もいらっしゃるでしょう。しかしながら、裁判を行う場合、法的知識はやはり不可欠であり、気づかないうちに不利な主張をしてしまったり、有利な主張をしそびれてしまい、本来勝訴できるはずだった訴訟に負けてしまうといったことになりかねません。当事務所では、分野を問わず数多くの訴訟業務を経験しており、その実績も豊富です。裁判をご検討中の方は、問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。
