株式会社の株式を譲渡することを株式譲渡といいます。
株式譲渡の合意ができた場合には、株式譲渡契約書を作成・締結することが非常に重要です。
本稿では、株式譲渡契約書の記載例と作成方法を解説いたします。
目次
1 株式譲渡契約とは
「株式譲渡契約」とは、株式を所有する者が他者に株式を譲り渡すことをいいます。
株式譲渡契約は口頭でも成立しますが、口頭の場合、合意した内容が記録に残らないことから、後日トラブルが生じることになりかねません。
そこで重要なのが株式譲渡契約書の締結です。
きちんとした株式譲渡契約書を作成・締結することにより、後の紛争を防止することにつながります。
2 株式譲渡契約書の条項
基本合意
まずは、株式譲渡の基本的な合意内容を記載します。
譲渡する株式を発行している会社名、譲渡日、数量、譲渡代金、種類を具体的に明記します。
例:甲は、令和◯◯年◯◯月◯◯日(以下「本譲渡日」という)をもって、乙に対し、甲が所有する株式会社◯◯(本店所在地:◯◯、以下「本会社」という)の発行済普通株式◯◯株(以下「本株式」という)を譲渡し、乙は本株式を譲り受ける。
本株式の譲渡代金は、金◯◯円(1株当たり金◯◯円)とする(以下「本譲渡代金」という)。
代金の支払期限・支払方法
株式譲渡の代金の支払期限と支払方法を記載します。
支払方法は、直接現金で支払う方法や銀行振込などが考えられます。
株券発行会社の場合は、代金の支払と引き換えに株券を売主から買主に交付することを記載するようにしましょう。
株券発行会社の場合、譲渡代金と引き換えに株券を交付しないと株式譲渡が無効になってしまいますので、注意が必要です(会社法第128条1項)。
株券発行会社であるかは、会社の定款又は全部事項証明書(登記簿)により確認することができます。
例:乙は、甲に対し、本譲渡代金を、本譲渡日までに、甲名義の◯◯銀行◯◯支店の普通預金口座(番号◯◯◯◯◯◯◯)に振り込む方法により支払う。振込手数料は乙の負担とする。
甲は、本譲渡代金の支払と同時に、乙に対し、本株式を表章するすべての株券を引き渡す。
譲渡承認手続
日本の中小企業は、株主として望ましくない者に株式が譲渡されることを防止するために、定款において、株式譲渡には株主総会又は取締役会の承認を必要とする条項を設けていることが多いです。このような株式を「譲渡制限株式」といいます(会社法第2条5号、同法第107条1項1号)。
譲渡制限株式を、株主総会又は取締役会の承認を得ず株式譲渡しても、その譲渡は無効となります。
そのため、譲渡制限株式の譲渡を行う場合には、株式譲渡契約書に譲渡承認手続を定めておくと良いでしょう。
譲渡制限が付いているかは、会社の定款又は全部事項証明書(登記簿)により確認することができます。
例:甲は、本譲渡日までに、本株式の譲渡について取締役会の承認を得るものとする。
株主名簿の名義書換
株式譲渡を行った場合、株主名簿を売主から買主に書き換えることを請求することができます(会社法第133条1項)。
株券不発行会社の場合、株主名簿の書換請求は、原則として、買主と売主が共同で行う必要があります(会社法第133条2項)。
株券不発行会社の場合は、株主名簿の書換えについても、株式譲渡契約書に定めておくと良いでしょう。
なお、株券発行会社の場合は、株券の引渡しがなされれば、買主が単独で株主名簿の書換請求をできるため、株主名簿の名義書換について定めることは不要です。
例:甲は、本譲渡代金の支払と引き換えに、乙に対し、乙を本株式の株主とする本会社の株主名簿への記載又は記録を行うために必要な書類(甲の記名押印済みの株主名簿書換請求書を含む)を交付する。
表明保証
株式譲渡契約書には、売主が買主に対して譲渡する株式の保証をする条項を定めることが一般的です。この条項を「表明保証条項」といいます。
表明保証の内容としては、以下の事項を定めることが多いです。
- 株式譲渡契約の締結及び履行が目的の範囲内の行為であり、必要な手続を履行していること
- 株式譲渡契約が適法に締結されていること、適法かつ有効に締結された場合、強制執行が可能な法的拘束力のある義務が生じること
- 株式譲渡契約の締結及び履行のために必要な司法・行政機関その他第三者の許認可等の法令手続を適法に履行していること
- 株式譲渡契約が法令・定款・契約の解除事由等・司法及び行政機関の判断に反するものでないこと
- 譲渡する株式を有効に所有しており、株式に第三者の権利(担保権等)が存在しないこと
例:甲は、乙に対し、本契約締結日及び本譲渡日において、別紙に記載される事項が真実及び正確であることを表明し保証する。
解除事由
売主又は買主に契約違反等があった場合のために解除事由を定めると良いでしょう。
解除事由を定める場合には、どのような事由が生じた場合に契約が解除できるのか、及び、解除した場合の効果について定めることが重要です。
例:1 甲及び乙は、以下の各号のいずれかの事由が生じた場合、本譲渡日の前に限り、本契約を解除することができる。
(1)相手方が本契約に定めた事項のいずれかに違反した場合において、1週間以上の期間を定めて是正を求める催告を行ったにもかかわらず、相手方が当該期間内に是正を行わなかったとき
(2)相手方が本契約中に行った表明及び保証のうち重要な事項において真実又は正確でなかったとき
(3)自らの責めに帰すべき事由によらず、本譲渡日までに、本株式の譲渡が行われなかったとき
(4)相手方又は本会社につき、破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始、特別清算開始その他適用ある法令上の倒産手続の申立てがなされたとき
(5)相手方が解散の決議をしたとき
2 甲及び乙は、本契約の終了により、終了時において既に本契約に基づき生じた責任又は終了前の作為若しくは不作為に基づき終了後に生じた本契約に基づく責任を免除されるものではなく、また、本契約の終了は、本契約終了後も継続することが本契約において意図されている当事者の権利、責任又は義務には一切の影響を及ぼさない。
3 本契約の終了にかかわらず、第◯◯条(損害賠償等)、第◯◯条(秘密保持)、第◯◯条(合意管轄裁判所)の規定は、引き続きその効力を有する。
損害賠償
契約違反等により当事者に損害が生じた場合のために、損害賠償や補償等についても定めておくと良いでしょう。
損害賠償の規定では、賠償範囲の拡大や後の紛争を防止するために、請求期間や賠償額の上限を定めることもあります。
例:甲及び乙は、本契約中に行った表明及び保証が真実又は正確でなかったこと、若しくは、本契約に規定された義務のいずれかに違反したことによって、相手方に損害、損失又は費用等が生じた場合は、相手方に対し、当該損害、損失、費用等を賠償、補填又は補償する。
競業避止義務
売主が対象会社と同一又は類似の事業を行うと、買主に損害が生じるおそれがあります。
そのため、株式譲渡契約書においては、競業避止義務を定めることがあります。
「競業避止義務」とは、一定の期間、一定の地域で売主が同一又は類似の業務を行うことを禁止するものです。
期間は2〜5年程度、地域は対象会社の商圏の範囲に限定する必要があります。無制限に競業避止義務を課してしまうと、公序良俗違反で無効になってしまいます(民法第90条)。
期間をどの程度とすべきか、地域をどの範囲にすべきかは、事案により異なりますので、弁護士に意見を求めることをお勧めします。
例:甲は、本譲渡日から5年間、◯◯県において、本会社が現在行っている事業と同一又は類似する営業を行わず、また、甲の子会社又は関連会社に行わせないものとする。
秘密保持
株式譲渡に関する情報が第三者に口外されることにより、不足の損失やトラブルが生じることがあります。
このような事態を防ぐために、株式譲渡契約書においては、秘密保持条項を定めておきましょう。
なお、秘密保持の期間は2年間とすることが多いです。
例:甲及び乙は、本契約締結日から◯年間、本契約の存在及び内容、交渉経緯並びに本契約に係る取引に関し、相手方から開示を受けた一切の情報を、厳に秘密として保持し、相手方の書面による事前の承諾なしに、第三者に開示、提供、漏洩し、また本契約の履行以外の目的に使用してはならない。ただし、次の各号に掲げる情報は、その限りでない。
(1)開示の時点で既に自己が保有していた情報
(2)秘密情報によらず自己が独自に開発又は取得した情報
(3)開示の時点で公知の情報
(4)開示後に自己の責めに帰すべき事由によらず公知となった情報
(5)正当な権限を有する第三者から適法に取得した情報
合意管轄・準拠法
株式譲渡契約に基づく紛争が訴訟(裁判)に移行した場合に、事前に訴訟を行う裁判所を合意することができます。これを「合意管轄」といいます。
株式譲渡契約書においては、合意管轄を定めておくと良いでしょう。
また、合意管轄と併せて、準拠法についても定めておくと良いでしょう。
例:甲及び乙は、本契約に関連して生じた紛争は、訴額及び類型に応じ、東京地方裁判所又は東京簡易裁判所を専属的合意管轄裁判所とすることに合意する。
本契約の成立、効力、履行及び解釈については日本法に準拠する。
3 株式譲渡契約書の作成方法
株式譲渡契約書の締結方法
株式譲渡契約書は、当事者が上記の条項を記載した書面(電子契約を含む)に署名・押印し、それぞれが原本を1通ずつ保管するようにしましょう。
収入印紙について
原則として、株式譲渡契約書に収入印紙を貼付する必要はありません。
例外的に、株式の譲渡代金が前払いされている場合には、株式譲渡契約書が譲渡代金の領収書又は受領書としての役割を果たすことから、収入印紙を貼付する必要があります。
4 株式譲渡契約書の作成は弁護士法人新静岡駅前法律事務所へ
当事務所には、主に企業法務を取り扱う事務所に所属していた弁護士と、都内大手IT企業において企業内弁護士として勤務していた弁護士が所属しています。
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