他人と共有となっている不動産がある場合に、共有状態から抜けたいと考える方もいらっしゃると思います。
共有状態から抜ける方法の1つとして、共有持分権の放棄という方法があります。
本稿では、共有持分権の放棄の方法と手続を解説します。
目次
1 共有とは
「共有」とは、1つの物を複数人で共同して所有することをいいます。
民法では単独所有(1つの物を1人が所有)が原則であると考えられていますが、相続が生じた場合に法定相続割合に基づき不動産を共有としたり、夫婦が同居するための自宅を購入する場合にペアローンや頭金の金額に応じて共有とすることがあります。
共有物の所有権のことを「共有持分権」といい、有している権利の割合を「共有持分割合」といいます。
2 共有持分権の放棄とは
共有状態を解消したい場合、共有持分権を売却したり、共有物分割を行う方法があります。
しかし、共有物の価値が低かったり、共有持分割合が低く、売却ができなかったり、共有物分割を行う必要性に乏しいケースもあります。
そのような場合に、共有状態を解消する方法として、共有持分権の放棄が考えられます。
「共有持分権の放棄」とは、共有者の1人がその持分を放棄することで、他の共有者にその持分が帰属することをいいます(民法第255条)。
例えば、AさんとBさんとCさんが3分の1ずつの共有持分権を有している場合に、Aさんが共有持分権を放棄すると、Aさんは共有持分権を失い、BさんとCさんが2分の1ずつの共有持分権を有することになります。
なお、共有物分割については、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
3 共有持分権の放棄の方法
共有持分権の放棄は、他の共有者全員に対し、共有持分権を放棄する旨の意思表示をする方法により行います。
意思表示を行うことで共有持分権の効果が生じるので、他の共有者の同意は不要です。
共有物分割は、他の共有者の同意か、裁判所の判決が必要となるので、共有持分権の放棄は簡便な手続といえます。
共有持分権放棄の意思表示は口頭でも可能ですが、後日他の共有者から「意思表示はなかった」と言われるなどのトラブルを防ぐために、書面を内容証明郵便で送付する方法で行うことをお勧めします。
書面には、不動産の情報(所在、地番、地目、地積、家屋番号、種類、構造、床面積等)と共有持分割合を記載した上で、「本書面をもって本件不動産の共有持分権を放棄する意思表示をする」と明記しましょう。
なお、内容証明郵便については、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
4 共有持分権移転登記手続
前述のとおり、共有持分権の放棄は他の共有者の同意なく行うことができます。
しかし、不動産の共有持分権を放棄した場合、共有持分権の放棄を原因とする共有持分権移転登記をする必要があるところ、原則として持分移転登記は他の相続人と共同で申請しなければなりません(不動産登記法第60条)。
つまり、持分移転登記には他の相続人の協力が必要になります。他の相続人が移転登記手続に協力しない場合には、後述する登記引取請求訴訟を提起する必要があります。
5 登記引取請求訴訟
「登記引取請求訴訟」とは、被告(他の共有者)に登記申請手続の意思表示をするよう求める裁判のことで、請求が認容されると登記申請手続の意思表示を行ったとみなされることになります。
前述した共有持分権の放棄の手続が不備なく完了していれば、基本的には登記引取請求を認容する判決がなされるため、他の共有者が持分移転登記手続への協力を拒否している場合でも、持分移転登記手続が可能になります。
なお、登記引取請求は、共有持分権の放棄をした時から5年を経過すると時効により消滅しますので、注意が必要です。
6 共有持分権の放棄を弁護士に依頼するメリット
①共有持分権の放棄の手続を不備なく行うことができる
共有持分権の放棄の手続については、前述したとおりですが、手続に不備があると共有持分権の放棄の意思表示が無効と判断されたり、裁判所に共有持分権の放棄の意思表示があったことが明らかでないと判断されて登記引取請求が認められないおそれがあります。
また、当職の経験上、共有持分権の放棄を希望している場合、不動産の価値が著しく低かったり、売却や活用が難しい不動産であることが多く、他の共有者も共有持分権を放棄したいと考えているケースが多いです。
共有持分権の放棄は、いわゆる「早い者勝ち」であるため、他の共有者が先に共有持分権の放棄の手続を完了させた場合、共有持分権の放棄ができず、固定資産税の負担や不動産の管理等を行う義務を負うリスクがあります。
共有持分権の放棄の手続を行ったが、不備があったという場合、他の共有者に不備のない手続を完了されてしまうリスクが高まることから、不備なく手続を行うことは非常に重要です。
弁護士に依頼することで、共有持分権の放棄の手続を弁護士に一任でき、不備なく手続を完了させることができるメリットがあります。
②登記引取請求訴訟を一任できる
前述のとおり、他の共有者が持分移転登記手続に協力しない場合、登記引取請求訴訟を提起する必要があります。
訴訟手続は複雑で、法的知識や裁判所とのやりとりが必要となるため、ご自身では対応が難しいことが多いです。
弁護士に依頼することで、登記引取請求訴訟の手続を一任することができ、手続をスムーズに進められ、また、訴訟対応の負担を大幅に減らすことができます。
7 まとめ
前述のとおり、共有持分権の放棄は、手続自体は簡便であるものの、手続に不備があった際のリスクが大きく、また、登記引取請求訴訟の対応が必要となる場合があります。
当事務所は、不動産案件に注力しており、共有持分権の放棄の手続と登記引取訴訟に対応しております。
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