家事事件(親族、離婚、相続に関する事件)の場合、訴訟とは異なる審判という特殊な手続が設けられています。
本稿では、家事審判の基礎知識と手続の流れについて、解説いたします。
目次
1. 家事審判とは
「家事審判」とは、家事事件手続法別表第1及び別表第2に定められている事項について、裁判所が判断を下す手続です。
訴訟も裁判所が判断を下すという点では審判と同様ですが、以下の点で審判と訴訟は異なります。
| 家事審判 | 訴訟 | |
|---|---|---|
| 審理事項 | 職権探知主義(当事者の申出なく裁判所の裁量で調査等ができる) | 当事者主義(当事者の主張、当事者からの提出された証拠をもとに裁判所が判断する) |
| 手続の公開 | 非公開 | 原則公開 |
| 審理の対象 | 家事事件手続法に規定された事項に限られる | 訴訟要件を満たせば自由に提起することができる |
2. 家事審判の対象となる事件
前述のとおり、家事事件手続法別表第1及び別表第2に定められた事項が家事審判の対象となります。
別表第1事件
別表第1事件は、公益性の高い事件で、当事者間で争いが生じる性質の事件ではないことから、裁判所が後見的な立場から審判を下すべきである事件が対象となっています。
公益に関するものであるため、調停(裁判所を通じた話合いの手続)を経ることなく、初めから家庭裁判所に審判を申し立てることになります。
別表第1事件の具体例は、以下のとおりです。
- 後見人の選任
- 不在者財産管理人の選任
- 失踪宣告
- 氏の変更の許可
- 養子縁組の許可
- 相続放棄
- 相続財産清算人の選任
別表第2事件
別表第2事件は、当事者間に争いのある事件が対象となっています。
そのため、まずは当事者間の話合いによる自主的な解決を図ることを優先すべきという理由から、調停手続も設けられています。
別表第2事件の具体例は、以下のとおりです。
- 財産分与
- 婚姻費用
- 養育費
- 扶養料
- 年金分割
- 子の監護者指定
- 子の引渡し
- 親権者変更
- 面会交流
- 遺産分割
別表第2事件は、最初に審判を申し立てることも可能ですが、前述のとおり、まずは当事者間の話合いによる自主的な解決を図るべきという観点から、審判を申し立てても、裁判所の判断で調停手続に付されることが多いです。
例外的に、実務上、子の監護者指定と子の引渡しについては、審判前の保全処分という緊急性の高い手続を併用することが多いことから、審判から申し立てて、そのまま審理されることがほとんどです。
また、親権者変更も、子に対する虐待がある、親権者が大病に罹患し子の監護が不可能であるなど緊急性が高い場合には、審判を申し立てて、そのまま審理がなされることが多いです。
子の監護者指定・子の引渡しの詳細は、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
また、離婚に伴う年金分割も基本的には請求按分割合が0.5となることから、実務上は、審判手続で行うことが多いです。
年金分割の詳細は、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
3. 審判手続の流れ
別表第1事件
①審判の申立て
別表第1事件は、家庭裁判所に審判の申立書を提出することで開始されます。
申立書のひな形は、裁判所のホームページに掲載されていますので、ご参照ください。
事件ごとに、必要書類(戸籍謄本や住民票等)、印紙代、郵券(切手)代が異なりますので、事前に裁判所のホームページを確認するようにしましょう。
申立書や必要書類に不備がある場合、裁判所から補正や追完の指示がありますので、裁判所の指示に従いましょう。
②審理
家事審判の申立てが完了すると、当事者から提出された書類や裁判所の調査をもとに、裁判所が判断(審判)を下します。
事案によっては、裁判所への呼出しを受けて、審判期日を実施し、裁判官から質問を受けたり(審問といいます)、追加の主張・立証(証拠の提出)を求められることもあります。
③即時抗告
裁判所の判断に不服がある場合には、審判書が送達された日の翌日から2週間以内に即時抗告という上級裁判所(高等裁判所)に不服申立てを行うことができます。
即時抗告の申立てが完了すると、高等裁判所が改めて判断を下します。
別表第2事件
①調停の申立て
前述のとおり、別表第2事件は、審判を申し立てても調停手続に付されることが多いです。
そのため、前述した子の監護者指定等の例外的な場合を除いては、まずは調停を申し立てて、裁判所を通じた話合いによる解決を図ることを目指すのが良いでしょう。
調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申立書を提出することにより申し立てます。
必要書類、印紙代、郵券代については、前述した別表第1事件と同様に、事件によって異なりますので、事前に管轄の裁判所に確認しましょう。
申立書や必要書類に不備がある場合の対応も、前述した前述した別表第1事件と同様です。
なお、申立書のひな形は、裁判所のホームページに掲載されていますので、ご参照ください。
②調停の成立又は不成立
調停の申立てが完了すると、調停手続が開始されます。
調停は、調停委員会(裁判官又は調停官1名と調停委員2名)が話合いを仲介してくれますので、裁判外での話合いより解決力の高い手続になります。
調停で合意ができた場合には、調停成立となり、事件は終了となります。
一方で、調停委員会が合意成立の見込みがないと判断した場合には、調停は不成立となり、自動的に審判手続に移行します。
なお、家事事件手続法別表第2に記載されていない事件の調停(例:離婚調停、遺留分侵害額調停)が不成立となった場合には、審判手続には移行せず、別途訴訟提起が必要となります。
③審判
調停が不成立となり、審判手続に移行すると、前述した別表第1事件の審判手続の流れと同様に、当事者から提出された書類や裁判所の調査をもとに、裁判所が判断(審判)を下します。
また、別表第1事件の場合、審判期日が開かれないことも多いですが、別表第2事件の場合、審判期日が開かれ、審判期日を複数回繰り返すことも少なくありません。
④即時抗告
前述した即時抗告と同様に、裁判所の判断に不服がある場合には、当事者双方に審判書が送達された日の翌日から2週間以内に高等裁判所)に即時抗告をすることができます。
4. その他の審判手続
調停に代わる審判
「調停に代わる審判」とは、調停において、裁判所が相当と認めるときに職権で審判を下す手続です(家事事件手続法第284条)。
もっとも、実務上は、手続的な理由から利用されることが多い制度です。
例えば、離婚調停においては、離婚が身分行為であるため、調停成立の際に離婚意思を直接確認する運用がなされることが多いですが、互いに合意は成立しているものの、一方ないし双方の当事者が海外にいる、仕事で離婚意思を確認することができないといった事情がある場合に、裁判所に調停に代わる審判を出してもらうことがあります。
調停に代わる審判に対しては、審判の告知を受けた日の翌日から2週間以内に異議を申し立てることができます。
異議の申立てがあると、調停に代わる審判は取り消され、家事事件手続法別表第2記載の事件の場合は審判手続に移行し、それ以外の調停の場合は別途訴訟提起が必要となります。
合意に相当する審判
「合意に相当する審判」とは、当事者間では処分のできない公益性の強い身分関係に関する事項において、裁判所が行う審判のことをいいます(家事事件手続法第277条)。
例えば、認知、親子関係不存在などは合意に相当する審判がなされることが多い類型です。
実務上は、当事者が調停において合意が成立している場合になされることが多いです。
前述した調停に代わる審判と同様に、合意に相当する審判に対しては、審判の告知を受けた日の翌日から2週間以内に異議を申し立てることができ、異議の申立てがあると、合意に相当する審判は取り消され、審判移行又は別途訴訟提起が必要となります。
5. まとめ
審判手続に移行している場合、主張・立証の方法を誤ってしまうと、自身が希望する結果を得られないということになりかねません。
審判を申し立てている、又は、調停が不成立となり審判手続に移行しているという方は、上記のようなリスクを避けるために、弁護士に相談することをお勧めします。
当事務所は、離婚及び相続等の家事事件に注力しており、家事審判の経験と実績は豊富です。
当事務所への相談をご希望の方は、問い合わせフォームよりご連絡ください。
