日本では三審制が取られており、訴訟(裁判)において、第1審判決及び第2審判決に不服がある場合には、上級裁判所(高等裁判所、最高裁判所等)に上訴することができます。
本稿では、民事事件及び家事事件の訴訟における控訴と上告について、解説いたします。
目次
1. 上訴とは?
「上訴」とは、裁判の判決が確定する前に、上級裁判所に対し、判決を取り消して内容を変更するよう求める不服申立ての手続のことです。
日本では、三審制が取られており、第1審は原則として簡易裁判所又は地方裁判所(離婚事件等の特定の家事事件の場合には家庭裁判所)に訴訟を提起することになります。
第1審判決に不服がある場合には、第2審である高等裁判所(第1審が簡易裁判所の場合には地方裁判所)に不服申立てを行うことになります。
これを「控訴」といいます。
第2審判決に不服がある場合には、第3審である最高裁判所(第2審が地方裁判所の場合には高等裁判所)に不服申立てを行うことになります。
これを「上告」といいます。
| 第1審 | 地方裁判所 | 家庭裁判所 | 簡易裁判所 |
| 第2審(控訴審) | 高等裁判所 | 高等裁判所 | 地方裁判所 |
| 第3審(上告審) | 最高裁判所 | 最高裁判所 | 高等裁判所 |
2. 控訴
控訴の効果
第1審で自己に不利益な判決がなされ、判決に不服がある場合には、判決確定前(判決書が双方に送達された日の翌日から2週間以内)に、高等裁判所に控訴提起することができます(民事訴訟法第285条)。
控訴を提起することで、判決の確定は遮断され(確定遮断効)、高等裁判所で審理が継続されることになります。
控訴提起は、自身に不利益な判決がなされた場合にのみ可能ですので、原告(訴訟を提起した側)が全部認容判決(訴えのすべてを認める判決)を獲得した場合や、被告(訴訟を提起された側)が棄却判決(訴えのすべてを認めない判決)を獲得した場合、控訴をすることはできません。
また、一部認容判決(訴えの一部を認める判決)がなされた場合は、双方が控訴することができますが、相手方のみが控訴した場合、控訴審でこちらに有利な判決が出ることはないので、注意が必要です(「不利益変更禁止の原則」といいます。
民法第304条)。
控訴の手続
控訴提起は、原審(第1審)の裁判所に控訴状を提出することにより行います。
控訴状の提出先は、高等裁判所(第2審の裁判所)ではなく、原審になるので、注意が必要です。
控訴状は正本(裁判所提出用)と副本(相手方への送達用)を提出します。
また、控訴提起に当たっては、収入印紙と郵券(郵便切手)を納める必要があります。
収入印紙の金額は、控訴審で求める金額や内容により決まります。
具体的な収入印紙の金額は、裁判所のホームページに掲載されていますので、ご参照ください。
郵券の金額は6000円で、内訳は500円×8枚、110円×10枚、100円×5枚、50円×5枚、20円×5枚、10円×5枚とするのが一般的です。
控訴提起が完了したら、控訴の受付がなされた翌日から50日以内に控訴理由書を提出する必要があります(民事訴訟法規則第182条)。
控訴理由書には、原審判決が不当であること及びその理由等を具体的に記載します。
控訴理由書が提出されると、相手方より控訴答弁書が提出されます。
控訴審の流れ
控訴提起がなされると、第1回口頭弁論期日の日程調整が行われ、調整が完了すると、第1回口頭弁論期日が指定されます。
第1回口頭弁論期日までに、控訴理由書と控訴答弁書が提出されるのが原則です。
また、民事事件ないし家事事件の控訴審では、第1回口頭弁論期日で弁論終結(主張書面と証拠の提出が終了)となり、判決期日が指定されることがほとんどです。
弁論終結後、控訴審判決がなされるまでの間に、和解協議がなされることが多く、後述のとおり、民事事件ないし家事事件においては、控訴審が事実上の最終審であることから、控訴審で和解が成立するケースは多いです。
和解が成立しない場合には、控訴審の判決がなされます。
3. 上告
第2審(控訴審)判決に不服がある場合、上告(最高裁判所での審理)という方法があります。
上告の方法としては、上告提起と上告受理の申立てがあります。
もっとも、上告の提起は、「判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があること」(民事訴訟法第312条1項)、又は、絶対的上告理由(法律に定められた訴訟手続に関して重大な違反があることを理由とする場合。
同条2項)がある場合に限られます(なお、高等裁判所にする上告は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることを理由とするときもすることができます(同法3項))。
また、上告受理の申立ても、「原判決に最高裁判所の判例(これがない場合にあっては、大審院又は上告裁判所若しくは控訴裁判所である高等裁判所の判例)と相反する判断がある事件その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件」であり、かつ、最高裁判所が上告を受理することが相当であると認めた場合に限りすることができます(民事訴訟法第318条1項)。
このように、上告には非常に厳しい要件が定められているため、実務上、民事事件及び家事事件において、上告が認められることはほとんどありません。
したがって、民事事件及び家事事件においては、前述した控訴審が事実上の最終審と考えた方が良いでしょう。
上告提起が認められた、又は、上告が受理された場合には、上告提起通知書が送達された日の翌日から50日担いに、最高裁判所に上告理由書を提出することが必要です(民事訴訟法第318条5項、民事訴訟法規則194条)。
控訴理由書と異なり、上告理由書の提出期限を過ぎた場合、上告は却下されるので、注意が必要です。
4. 抗告
上訴には、控訴と上告以外に、抗告という種類があります。
「抗告」とは、判決以外の裁判所の決定や命令に対する不服申立ての手続です。
抗告には、通常抗告と即時抗告があります。
通常抗告には期間の制限はありませんが、即時抗告の場合、家事審判の場合は審判の告知がなされた(審判書が双方に送達された)日の翌日から2週間以内(家事事件手続法第86条)、民事訴訟の決定の場合には原則として裁判の告知がなされた(決定書が双方に送達された)日の翌日から1週間以内に行う必要があるので(民事訴訟法第332条)、注意が必要です。
抗告審の決定に不服がある場合には、特別抗告という手続がありますが、憲法違反(憲法解釈の誤りを含む)がある場合に限られますので(民事訴訟法第336条)、実務上はほとんど利用されていない手続になります。
特別抗告の申立ては、高等裁判所の決定の告知がなされた日から5日以内に行う必要があります。
5. まとめ
上訴の手続は複雑で、期間制限もあることから、ご自身で対応することが難しい場合があります。
また、前述のとおり、控訴審は事実上の最終審といえることから、控訴理由書において、説得的な主張及び立証(証拠による証明)を行うことが重要になります。
そのため、上訴を検討している方や上訴を見据えている方は、弁護士に依頼することを検討されると良いでしょう。
当事務所は、上訴を含む裁判手続を多く経験しており、その実績は豊富です。
当事務所への相談をご希望の方は問い合わせフォームよりご連絡ください。
