「父母が亡くなり、相続手続きをしようとしたら異母(異父)兄弟がいることが発覚した」相続の場面では、このように、相続手続きを開始して初めて異母兄弟がいることが発覚したというご相談も少なくありません。
亡くなった方(被相続人)の前妻(前夫)との間に子がいた場合、その子も相続人に該当するため、遺産分割をするためにはその子も含めて協議を行わなくてはなりません。
そこで、本記事では異母兄弟がいることが発覚した場合の遺産分割協議の進め方について解説します。
目次
1. 前妻の子と相続
被相続人に子がいる場合、子は常に法定相続人になります(民法第887条1項)。
法律上、両親が離婚したとしても子どもとの親子関係は失われないことから、前妻との子であっても相続権があることは変わりありません。
また、現在の配偶者の子と前妻の子の相続割合にも変わりはありません。
遺産分割協議は、相続人全員で行う必要があり、1人でも欠けていた場合には遺産分割協議自体が無効となってしまうので、前配偶者との間に子がいることが発覚した場合には、必ずその子も含めて遺産分割協議を行うようにしましょう。
2. 前妻の子と連絡を取る方法
①連絡先を調べる
前妻の子がいた場合には、まずは連絡先を調べ、遺産分割協議をしたい旨を伝える必要があります。
一度も連絡を取ったことがなく、連絡先も分からない場合には、戸籍の附票を取得して相手の住所を調べるとよいでしょう。
戸籍の附票とは、戸籍が作られてから移行の住民票の移り変わりを記録した書類です。
相手の本籍地宛の市区町村役場に請求することで取得ができます。
被相続人の戸籍には、相手の本籍地も記載されていることから、被相続人の戸籍を見れば相手の本籍地も確認できます。
戸籍の附票などの書類は、本人や代理人のみしか取得できないのが原則ですが、自己の権利を行使し、または自己の義務を履行するために必要がある場合など、正当な理由がある場合には第三者でも取得することができます。
第三者取得する場合の必要書類は、市区町村によって異なることがありますので、事前に電話等で相続人に連絡を取りたい旨を伝え、必要書類を確認するのがよいでしょう。
②相続が開始したこと等を手紙で知らせる
戸籍の附票を確認でき、相手の住所が判明したら、被相続人が亡くなったことや、遺産分割協議をしたいことを書面に記載して送付しましょう。
この際、把握している被相続人の財産を根拠資料と共に開示するとスムーズです。
相手が遺産の取得を希望しない可能性もあるため、遺産取得の希望の有無を尋ねるとよいでしょう。
また、詳細は直接協議したいという方は、相続が開始したことや、直接協議したいので電話して欲しい・協議の日程を調整させてほしい等の連絡をすることも考えられます。
書面は、相手が受け取ったことが分かるよう、書留や特定記録、レターパック等の追跡が可能な方法で送ることをお勧めします。
3. 連絡が取れない場合の対処法
何度か連絡を取ることを試みても返事が来ない場合には、以下の方法を取ることを検討しましょう。
遺産分割調停を申し立てる
相手の住所は判明したものの、連絡が全く返ってこない等で話が進まない場合には、遺産分割調停の申立てを検討しましょう。
調停を申し立てれば、裁判所から調停に出頭するよう呼出状(期日通知書)が届きます。
また、出頭しない相手には出頭勧告といって、調停期日への出頭を命じる書面を送付してくれることもあります。
調停が開始できれば、1名の裁判官又は調停官と2名の調停委員で構成される調停委員会が話し合いの仲介をしてくれるため、直接協議をするよりスムーズに遺産分割協議が進むことも期待できます。
遺産分割調停の申立て方法は、こちらのコラムで解説しています。
不在者財産管理人の選任
相手方の戸籍の附票を取得しても、相手が住民票を移していない等の理由で、相手に連絡書面が送付できないこともあります(このような場合、郵便は「宛所不明」という理由で返送されてきてしまうことが一般的です)。
このような場合には、不在者財産管理人の選任を申し立てることで、遺産分割協議を進めることができます。
不在者財産管理人とは、従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない人の財産を管理するために、利害関係人又は検察官の申し出により家庭裁判所が選任する人のことをいいます。
判明している最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、申立書や戸籍謄本等の必要書類を提出することにより申立てができます。
申立書の書式は、家庭裁判所のホームページで確認することができます。
なお、不在者財産管理人は、民法第103条に定められた権限しか保有しておらず、遺産分割協議はこの権限に含まれていないため、不在者に代わって遺産分割協議を行うためには、「権限外行為許可」という特別の許可が必要となるので、注意が必要です。
失踪宣告の申立てを検討する
相手方の所在が長期間不明な場合には、失踪宣告の申立てをすることも考えられます。
失踪宣告とは、不在者(従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者)につき、その生死が7年間明らかでないとき等に、家庭裁判所が失踪宣告をすることで、不在者を法律上死亡したものとみなす手続きです(民法第30条1項)。
失踪宣告が認められると、その人は相続人には含まれないこととなり、その人を除いて遺産分割協議を進めることができます。
失踪宣告についても、判明している最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、申立書や戸籍謄本等の必要書類を提出することにより申立てができます。
申立書の書式についても同じく裁判所のホームページで確認できます。
ただし、失踪宣告の申立ては、裁判所が定めた期間内(最低3か月以上)に生存の届出をするよう官報等で公告する期間が必要となる等、認められるまでには相当程度の期間がかかる点には注意が必要です。
4. 遺言書がある場合は連絡をしなくてもよい?
被相続人が遺言書を作成していて、前妻の子については何の財産も相続させないという内容となっている場合、遺産分割協議を行う必要がないため、連絡を取る必要がないと考える方もいらっしゃるでしょう。
しかし、子どもには遺留分(法律上認められる最低限の取得分)があることから、連絡をせずに進めてしまうと、相続手続き後相当期間経ってから遺留分の請求をされてしまうリスクが残ってしまいます。
遺留分の請求は、被相続人の死亡と遺留分が侵害されていることを知ってから1年とされています(民法第1048条)。
被相続人の死亡を相当後に知った相手から後に遺留分を請求されることを防ぐためにも、死亡したことや遺言の内容は知らせておくことが考えられます。
なお、遺留分侵害額請求権は、相続が開始したときから10年経過した場合も、権利が消滅します。
この場合には、相続が開始されたことを知らなかった場合でも、権利が消滅しますので、その制度を踏まえて検討するとよいでしょう。
5. まとめ
これまで説明してきたとおり、相続に際し前配偶者との間に子がいたことが発覚した場合、その相手と遺産分割協議を行う必要があります。
ただし、一度も会ったことがないなどの場合には、連絡先を調べるだけでも多くの手間がかかりますし、スムーズに協議を進めることが難しい場合も多いでしょう。
このような場合には、弁護士に依頼をすることで、連絡先の調査や、連絡書面の作成、調停の申立てなど全ての手続きを一任できますので、弁護士へ相談することをお勧めします。
当事務所では、これまでに多くの相続に関するご相談をお受けしておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
