「経営している店舗のGoogleマップに従業員を中傷する口コミが書かれている」「経営している病院の口コミに事実と異なる口コミが記載されている」
近年、利用者がどの店舗に行くかを決定するにあたってGoogleマップの口コミを重視することが多くなっており、悪質な口コミが与える影響も大きくなっています。
そこで、本記事では、Googleマップの口コミの削除方法について解説します。
目次
1. Googleマップの口コミは削除できる?
Googleマップに記載された口コミは、店舗の運営者側が自身で削除することはできないため、Googleに削除依頼をして削除をしてもらう必要があります。
ただし、Googleマップの口コミは、ユーザーが自由な感想を記載することができる場であるため、好ましくない口コミであれば全て削除してもらえるものではありません。
削除をしてもらうには、Googleが掲げているポリシーに違反した口コミである必要があります。
Googleのポリシーに違反する口コミ
以下が、主要なポリシー違反の口コミです。
- 虚偽の口コミ:実体験に基づいていない口コミなど
- ハラスメントととれる口コミ:お店の従業員を晒す内容の口コミなど
- ヘイトスピーチにあたる口コミ:特定の個人や集団を侮辱する内容など
- 個人情報が含まれている口コミ:同意なく第三者の個人情報が記載されているなど
- わいせつな内容の口コミ:露骨な性的描写がされているなど
- 関連性のない口コミ:店舗とは無関係の内容が記載されているなど
- 宣伝にあたる口コミ:営利目的で商品を紹介する口コミなど
- 利害関係者による口コミ:競合店による意図的な低評価の口コミなど
削除してもらいやすい口コミ
上記のポリシーを参考にすると、以下のような口コミは削除してもらいやすいといえるでしょう。
- 行ったことのない店舗に対して、「不衛生で店主の態度も悪く、行く価値のない最低のお店だ」などと記載する
- 「○○病院の医者は医師免許を持っていない、詐欺師だ」などと記載する
このように、実体験に基づかない口コミであったり、特定の個人を事実と異なる形で攻撃する内容の口コミは、削除してもらえる可能性が高いといえるでしょう。
ただし、事実と異なることを理由に削除をしてもらう場合、こちらが虚偽であるという根拠を提出する必要があるので、注意が必要です。
削除が難しいと考えられる口コミ
他方で、以下のような口コミは、ポリシー違反に該当しないとして、削除をしてもらえない可能性があります。
- 「味がおいしくなかった」など個人の感想を記載したのみの口コミ
- 「雰囲気が自分には合わなかった」などと抽象的に述べただけの口コミ
2. Googleマップの口コミ削除依頼の方法
Googleのビジネスプロフィールから削除依頼を行う
Googleビジネスプロフィールに登録している場合には、以下の方法で口コミの削除依頼を行うことができます。
- Googleビジネスプロフィールのアカウントにログイン
- 「口コミ」を押し、口コミ一覧を表示
- 削除依頼をしたい口コミを選択し、「不適切な口コミとして報告」を押す
- どの項目に違反しているかを選択
なお、Googleビジネスプロフィールに登録をしていない場合でも、ログイン状態で該当の口コミを選択→レビューを報告することで削除依頼を行うことができます。
この方法で削除依頼をした場合には、違反理由の選択のみで、理由やこちらが削除すべきと考える理由は記載できません。
詳細にこちらの主張を記載した場合には、次で解説する、リクエストフォームからの削除依頼を行うか検討しましょう。
削除リクエストフォームから削除依頼を行う
Googleには、「法的削除に関連する問題を報告する」という専用のフォームが用意されています。
ここから、削除依頼をする人の情報(居住国や氏名)、該当のコンテンツのURL、該当のコンテンツが違法と考える理由を記載することにより、削除依頼ができます。
このフォームから削除依頼を行うには、Googleに対し、該当の口コミがなぜ違法なものか(どのような権利を侵害しているのか)を説得的に説明する必要があります。
権利侵害となる法的根拠を詳細に記載できるように準備しましょう。
一般社団法人テレコムサービス協会が作成したガイドラインに基づいて削除請求をする
一般社団法人テレコムサービス協会は、インターネットサービスのプロバイダ等が所属している団体です。
同団体が公開している削除請求の書式に必要事項を記載することにより削除が請求でき、請求を受けたサイトは、投稿者の意見も聞いたうえで口コミの削除をするか否かを決定します。
裁判所を通じて削除を請求する
上記の方法を試しても口コミが削除されない場合には、裁判手続を利用することを検討しましょう。
裁判所を通じた削除依頼の手続は、仮処分命令申立という方法で行うのが一般的です。
仮処分とは、争いのある権利関係について、暫定的な措置をすることを認める手続です。
インターネット上の投稿により権利侵害を受けた人が裁判所に申し立て、裁判所が必要性を認めた場合、裁判所から投稿を削除せよという仮処分命令が発令されます。
通常の民事訴訟において削除請求をすることもできますが、仮処分の方が簡易・迅速に判断をしてもらえるため、投稿を放置しておくことにより被害が拡大してしまう削除請求の場面では、仮処分命令の申立てをするとよいでしょう。
仮処分の申し立ては、申立書を管轄の裁判所(サイト運営者の所在地のを管轄する裁判所)に提出することで行います。
詳しい手続は、以下のコラムで解説していますので、ご確認ください。
3. 削除依頼をする際の注意点
評価だけ(星だけ)の口コミは削除が難しい
コメントの記載がなく、評価(星だけ)だけの口コミの場合、Google側で違法・ポリシーに違反しているかが判断できないことから、削除してもらうことは難しいので、注意が必要です。
削除までには時間がかかる場合がある
特に、削除リクエストフォームからの削除の場合、削除までに数か月を要したケースもあります。
また、仮処分命令の申立てをした場合、Google側が削除すべきでないと争ってきた場合には、半年以上から1年以上かかってしまうケースもあります。
すぐに削除してもらえるわけではないことに注意が必要です。
削除依頼をする前に証拠を保存しておく
投稿者に対して、損害賠償などの法的措置を取ることを検討している場合には、必ず削除依頼前に証拠を保存しておくようにしましょう。
削除がされてしまうと、投稿者の特定に必要な情報が足りずに、投稿者の特定やその後の損害賠償請求が難しくなってしまう可能性があります。
投稿者の特定については、以下のコラムで解説していますので、ご参照ください。
4. 投稿の削除ができない場合
上記のいずれの方法を試しても投稿の削除ができない場合でも、口コミに対して丁寧に返信することで、少しでも悪印象を減らすことができる可能性があります。
また、良い口コミを増やすよう心掛けることで、一つの悪い口コミが目立たないという効果も期待できます。
積極的に口コミを投稿してもらえるような方策(店舗に案内文を置く、投稿フォームを案内するなど)も検討してみるとよいでしょう。
ただし、インセンティブを提供(口コミを投稿してくらたら商品をプレゼント等)して口コミを依頼してしまうと、Googleのポリシーに違反してしまうので注意が必要です。
5. まとめ
Googleマップを利用してどのお店に行くかを検討するユーザーが増えてきており、口コミは運営者にとって非常に重要なものとなっています。
その分、悪質な口コミがビジネスに与える影響も大きくなっているといえるでしょう。
口コミの削除については、どのような方法ですべきか、どういった法的根拠を示すかによって結果が大きく異なることもあるため、法的見解を整理したうえで対応することがお勧めです。
当事務所には、都内大手IT企業にて企業内弁護士として勤務した経験のある弁護士が所属しており、インターネットトラブルについての経験も豊富ですので、一度お気軽にお問い合わせください。
