配偶者が不倫をしていることに気づいた場合、相手に対して不倫を認めさせたい、謝罪させたいといったお気持ちから、不倫相手との話し合いの場を設けようと考える方もいらっしゃるでしょう。
しかし、話し合いで感情的になってしまったり、不利な発言をしてしまうことにより、後の慰謝料請求に影響を及ぼしてしまうリスクもあります。
そこで本記事では、不倫相手と直接話し合うことのリスクや注意点を解説します。
目次
1. 不貞行為と慰謝料
配偶者がいるにも関わらず、他の異性と性交渉をすることを「不貞行為」といいます。
不貞行為は、民法上の不法行為に該当するため、不貞行為を行った当事者双方に配偶者への慰謝料の支払義務が生じます(民法第709条、同第710条)。
2. 不倫相手と話し合いをする際に注意すべきこと3選
前述のとおり、不貞行為があった場合には不倫相手と配偶者に対して慰謝料を請求することができます。
この慰謝料について話し合いをしたい、不倫を辞めるよう求めるなどといった目的から、不倫相手と話し合いの場を持とうとする場合には、以下の点に注意して慎重に進めるようにしましょう。
①不貞行為の証拠を整理したうえで話し合う
例えばLINEで「好き」「愛してる」といった疑わしいやり取りはあるものの、不貞行為あるかどうかが不明な場合に、相手と話し合い、不貞行為を認めさせようと考える方もいるでしょう。
しかし、これは大きなリスクを伴う行為です。
自身にとって不利な内容となることですから、不倫相手が素直に本当のことを話してくれるとは限りませんし、不倫相手に真っ向から否定されてしまった場合、その場でそれ以上の追及が難しくなってしまうでしょう。
また、一度不倫相手に疑わしいと思っていることが知られてしまうと、不倫相手も以後警戒するでしょうから、その後に証拠を集めようとしても、難しい可能性も高いです。
以上のことから、証拠がない状態で直接追及するのは避けた方がよいです。
不倫の証拠については、こちらの記事で解説していますので、なるべく証拠を集めてから協議しましょう。
②感情的にならない
不倫相手と直接協議をする場合、許せないという気持ちが多く、つい感情的になってしまう方もいらっしゃるでしょう。
しかし、感情的になってしまいつい不倫相手を侮辱するような言動をとってしまった場合、侮辱罪(刑法第231条)が成立してしまう可能性があります。
また「不倫を認めないと周囲にばらす」といった言動は、強要罪(刑法第223条1項)、脅迫罪(刑法第222条1項)に該当する可能性もあります。
あくまで冷静に、話し合うべきことのみを話し合うようにしましょう。
③事前に準備をしっかりしておく
不倫相手と話し合う場合、事前の準備も重要です。
例えば、相手が話した内容を後から確認したり、必要に応じて裁判にて証拠として提出できるようにするため、事前に協議の内容を録音できるように機器を準備しておくことが考えられます。
また、話し合いにおいて決まったことをスムーズに書面化できるよう、事前に書面を準備しておくこともよいでしょう。
その場で一から書面を作成することは難しいでしょうから、記載できる箇所は事前に記載しておき、不倫相手の話を聞かなくては記載できない箇所については、その場で埋めるといった方法が考えられます。
不倫の示談書については、こちらのコラムで詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
3. 不倫相手との話し合いでするべきこと
不貞行為の期間や回数を確認する
不倫相手と話し合いをする場合、まずは不貞行為の期間や回数、態様を確認しましょう。
不貞行為の期間や回数は、慰謝料の額の算定にあたり考慮される要素なので、なるべく細かく確認することをお勧めします。
事前に配偶者との間で事実を確認できている場合には、双方の主張に齟齬がないかも確認するとよいでしょう。
また、不倫相手が配偶者のことを既婚者と知って不貞行為をしていたかについても確認するようにしましょう。
既婚者であると認識していたという事実の確認は、後から「確かに性交渉はしたけど、既婚者とは知らなかったので慰謝料の支払い義務はない」などと主張されるのを避けるために重要です。
慰謝料の額や支払い期日を決める
不倫相手が不貞行為を認め、慰謝料の支払いをする意思がある場合には、いくら支払ってもらうのか、いつまでに支払ってもらうのかを確認しましょう。
この際、事前に準備しておいた示談書に、支払額や支払期日を記載して、不倫相手にサインをしてもらうといいでしょう。
なお、相場とかけ離れた高額な慰謝料を支払わせる内容の示談書にサインをさせたり、「サインするまで帰さない」などと発言してしまったりすると、示談書が無効となってしまう可能性がありますので注意しましょう。
不倫相手に守ってほしいことを決める
例えば、二度と配偶者と連絡を取ったり、会ったりしないよう求める、不倫の事実を他の人に口外しないよう求めるなど、不倫相手に守ってほしいことがある場合には、その条件についても話し合いましょう。
合意ができた内容は、慰謝料の支払い条件と同様、示談書に記載しておくことが重要です。
不倫相手の連絡先や住所を確認する
不倫相手との話し合いが決裂してしまった場合や、その場で全て決められずに再度話し合いをする場合に備えて、相手の連絡先や住所を確認できるとよいでしょう。
不倫相手の住所を把握しておくことにより、内容証明郵便の送付や訴訟(裁判)の提起もスムーズに行えます。
4. 不倫相手の話し合いはどこでするとよい?
不倫相手と話し合いをする場所は、なるべく密室ではなくファミリーレストランなどの人目がある場所を選ぶとよいでしょう。
人目がある場所で話し合いをすることにより、例えば不倫相手から危害を加えられてしまうなど、不測のトラブルを避けることにつながります。
5. 事前に弁護士に相談を
不倫相手とご自身で協議をする場合、相手が予想外に開き直って協議ができない、うまく言い訳されてしまう、慰謝料について額が決まらないなど、様々なリスクを伴います。
一度協議が決裂してしまうと、その後に再度協議の場を設けることすら難しくなってしまうこともあるでしょう。
まずはご自身のみで協議をする前に、弁護士に相談することをお勧めします。
事前に弁護士に相談することで、より詳細に注意点やアドバイスをもらうことができるでしょう。
また、弁護士を通じて協議をすることで、不倫相手との協議がスムーズにできたり、法的に有効な示談書を作成してもらえるなど、不倫相手との協議を弁護士に依頼するメリットは大きいです。
当事務所では、不貞慰謝料に関するご相談を数多くお受けしており、解決実績も豊富ですので、問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。