風俗を利用した際にお店や女性とトラブルになってしまい、困っているという相談は少なくありません。
風俗トラブルは、大きな法的リスクを負っていることが多く、対応を誤ってしまうと、最悪の場合、刑事罰を受けたり高額な慰謝料の支払義務を負うおそれもあります。
本稿では、風俗トラブルの法的リスクと対処法を解説いたします。
目次
1. 風俗トラブルの類型
本番行為
デリヘル、メンズエステ、ピンサロなどの風俗店での本番行為(挿入行為)は禁止されています。
本番行為を認めてしまうと、風俗店が売春禁止法で摘発されるおそれがあるためです。
本番行為を行ってしまうと、風俗店との間で契約違反になるので、本番行為に対する違約金が定められているような場合には、高額な違約金を請求される可能性があります。
また、女性の同意なく本番行為をしてしまうと、不同意性交等罪(刑法第177条)に該当し、刑事事件化するリスクがあります。
さらに、不同意性交は民法上の不法行為(民法第709条)にも該当しますので、高額な慰謝料を請求されるおそれがあります。
本番トラブルで争点になることが多いのは同意の有無です。
「女性が同意していたので、問題ないですよね?」というご相談を受けることもありますが、「女性の同意があったから法的リスクはない」という判断は非常に危険です。
例えば、男性側が「挿れて良い?」と言ったのに対して、女性が首を縦に振ったというケースでは、女性側が怖くて首を縦に振らざるを得ず、真摯な同意はしていなかった可能性が考えられます。
また、仮に刑事事件化した場合、女性の証言も証拠になり得ることから、検察官や裁判所が女性の証言に信用性があると判断した場合には、起訴され刑事罰を受けるおそれがあります。
そのため、女性が同意していたと認識している場合であっても、トラブルを放置したり、お店や女性と真っ向から対立することは控えた方が良いです。
なお、不同意性交の詳細については、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
同意のないプレイ
上記本番行為の場合と同様ですが、女性が同意していないプレイを行ってしまうと、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪(刑法第176条)に該当するおそれがあります。
同意のないプレイで女性に怪我を負わせてしまうと、不同意性交等致傷罪や不同意わいせつ等致傷罪(刑法第181条)や傷害罪(刑法第204条)に該当する可能性があります。
また、民法上の不法行為に該当し、慰謝料の支払義務を負う可能性もあります。
なお、不同意わいせつの詳細については、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
盗撮
女性とのプレイの様子を盗撮した場合、性的姿態撮影等処罰法(「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」、いわゆる「撮影罪」)や各都道府県の迷惑防止条例違反に該当します。
民法上の不法行為にも該当しますので、慰謝料の支払義務が生じることがあります。
なお、撮影罪の詳細については、以下のコラムで解説しておりますので、ご参照ください。
盗聴
女性とのプレイ中の音声を盗聴した場合、盗聴行為自体に対する刑事罰は存在しません。
しかし、盗聴目的で風俗店に入店した場合には建造物侵入罪(刑法第130条前段)に当たる可能性があります。
また、お店の業務を妨害したものとして、偽計業務妨害罪(刑法第233条)に該当する可能性もあります。
民法上は、プライバシー権の侵害に該当するので、不法行為に該当し、慰謝料の支払義務が生じる可能性があります。
2. 対処法
前述のとおり、風俗トラブルが生じた場合、刑事上及び民事上のリスクを負っていることになります。
風俗トラブルにおける法的リスクを回避するためには、早期に示談を成立させることが重要です。
示談に際しては、宥恕文言(刑事処罰を求めないという文言)を含めるようにしましょう。
検察官は示談成立と被害者の処罰を望んでいないことを考慮し、不起訴とすることが多いです。
また、既に被害届が提出されている場合には、被害届の取下げに同意してもらえるとベストです。
また、示談に際しては、清算条項(互いに債権債務がないことを確認する)という互いに示談金以外の金銭の請求をしないことを確認する条項も含めるようにしましょう。
清算条項がないと、例えば、お店が「示談の後、女の子が店を辞めてしまったから、営業損害を賠償しろ」と言ってきたり、女性が「示談の後、精神的苦痛から店を辞めてしまい収入がなくなってしまったから、休業損害を賠償しろ」と言ってくるなど、名目を変えて金銭請求をしてくるおそれがあります。
3. 示談金の相場
示談金の相場は、トラブルの内容、当事者の主張内容、証拠の内容、お店の営業損害額、女性の休業損害額等により変わってきますが、私の経験上は、極めて悪質なケースを除くと、概ね30万〜100万円で示談が成立しているケースが多いです。
ただし、上記金額は、早期解決の観点から、当事者の合意が成立した金額に過ぎず、裁判手続に移行した場合には、上記金額よりも高額になるケースは多いと思われます。
4. 注意点
お店のみと示談してもリスクは消滅しない
風俗トラブルの場合、直接の被害者はお店のスタッフである女性であることがほとんどです。
しかし、風俗トラブルの示談交渉においては、お店側が間に入って交渉を行うことが多いです。
このような場合に、お店のみと示談が成立しても、直接の被害者である女性との示談は成立していないので、後ほど女性から被害届を提出されたり、金銭を請求された場合、示談の効力が及びません。
お店のみと示談が成立した場合に、示談金はすべてお店が受領してしまい、女性は示談金を一切受け取っていない、又は、そもそも女性は示談の話すら聞いていないというケースも散見されます。
このような場合、女性から「私は示談金を受け取っていないので、支払って欲しい。
支払ってもらえないなら、警察に被害届を出す」などと言われてしまうおそれがあります。
したがって、示談をする場合には、お店を通してでも良いので、女性とも示談を成立させる必要があります。
口頭での示談は危険
示談が成立した場合には、必ず示談の内容を書面化するようにしましょう。
口頭のみで示談をしてしまうと、示談が成立したことを証明できず、後日、「示談は成立していない」、「先日支払ってもらった金銭は妊娠検査の費用であり、示談金ではない」などと言われてしまう可能性があります。
また、前述した宥恕文言や清算条項を書面で定めることもできず、刑事上及び民事上のリスクをなくすこともできなくなってしまいます。
源氏名での署名
示談をする場合、示談が成立した当事者を特定する必要があります。
通常の示談では、住所、氏名、押印などにより当事者を特定することが通常ですが、風俗トラブルの場合、女性が住所や氏名を記載してくれることはほとんどなく、仮に署名してもらえるとしても、源氏名での署名を希望することが多いです。
源氏名での署名の場合、当事者の特定が不十分であり、また、お店側が女性の代わりに署名してしまうおそれもあります。
源氏名での署名であっても、本人の意思で本人が署名していれば問題ありませんが、それを証明することが難しく、後の紛争を招来しかねません。
女性の住所や氏名を記載してもらい、当事者を特定した上で示談を成立させたいという場合には、示談交渉を弁護士に依頼することをお勧めいたします。
弁護士に依頼すると、弁護士が女性に対し、「弁護士には守秘義務があるので、住所と氏名は弁護士限りで提示してもらい、依頼者を含む第三者に漏れることはない」と説明することで、住所と氏名を記載してもらえることは多いです(住所と氏名が虚偽でないことを確認するために身分証を確認させてもらえることもあります)。
家族や親族に知られるおそれがある
風俗トラブルの場合、早期に示談交渉を開始しないと、お店や女性から、警察に被害届を出されたり、刑事告訴されるなどして、家族や親族に知られてしまうおそれがあります。
また、風俗店によっては、利用前に身分証の写しを取っていたり、住所と氏名を記載してもらっていることがあります。
私の経験上、風俗店の従業員が自宅に押しかけてきたという相談を受けたこともあり、自宅に押しかけられた結果、家族や親族に知られてしまったということもありました。
風俗トラブルのことを絶対に家族や親族に知られたくないという場合には、すぐに弁護士に相談の上、示談交渉を開始することをお勧めします。
弁護士には守秘義務がありますので、弁護士に示談交渉を依頼することで、家族や親族に知られることなく、示談交渉を進めることができます。
5. まとめ
これまで述べてきたとおり、風俗トラブルは、法的リスクが高く、示談交渉も困難を極めることが多いです。
また、家族や親族に知られてしまうおそれがあることからも、風俗トラブルが生じた場合には、早急に弁護士に相談した方が良いでしょう。
当事務所は、風俗トラブルを含む男女トラブルに注力しております。
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