ご自身の送ったLINEをSNS等で晒されてしまったという経験のある方もいらっしゃるでしょう。
LINEの晒し行為は、態様によっては、刑法上・民法上の責任を問える場合があります。
そこで、本記事では、LINEを晒されてしまった場合の対処法を解説します。
目次
1. LINEの晒し行為は犯罪に該当する?
LINEをSNS等で晒す行為は、以下の犯罪が成立する可能性があります。
①名誉棄損罪
名誉棄損とは、公然と、事実を適示(=挙げて)して、他者の社会的評価を低下させた場合に成立する犯罪です(刑法第230条)。
例えば、不倫(不貞行為)をしている旨のLINE上の会話をSNS等にアップロードした場合、その人に対して「不倫をするような人だ」という社会的評価が生じ、その人に対する周囲の評価が下がったとして、名誉棄損が成立する可能性があるでしょう。
②侮辱罪
侮辱罪は事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した場合に成立します(刑法第231条)。
名誉棄損罪との違いは、事実を適示しているかどうかです。
例えば、LINEのスクリーンショットと共に「こいつは馬鹿だ」などと投稿した場合には、具体的な事実を適示しているわけではないので名誉棄損罪は成立しませんが、侮辱罪が成立する可能性があります。
③リベンジポルノ防止法違反
リベンジポルノとは、元交際相手に振られた腹いせなどのために、交際時に撮影した性的な写真や動画を、インターネットなどを通じて不特定多数に配布、公開する行為をいいます。
この行為は、2014年に成立した私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(いわゆるリベンジポルノ防止法)の公表罪(同法第3条1項)に該当する可能性があります。
2. LINEの晒し行為の民法上の評価は?
LINEの晒し行為について、刑法上の犯罪に該当しない場合でも、以下のような民法上の不法行為に該当する可能性があります(民法第709条)。
①名誉権侵害
名誉とは、判例上、「人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価」と定義されています(最大判昭和61年6月11日)。
つまり、投稿により人の社会的評価を低下させた場合に名誉権侵害が成立します。
刑法上の名誉棄損とよく似ており、名誉棄損罪が成立する場合には、名誉権侵害も成立する可能性が高いです。
また、民法上の名誉権侵害は、事実の摘示なしに意見や論評を述べた場合でも、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したときには成立します。
②名誉感情侵害
社会通念上許される限度を超えた侮辱行為については、その人の名誉感情(人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価)を侵害するとして民法上も不法行為に該当します。
刑法上の侮辱罪が成立する場合、民法上は名誉感情侵害が成立する可能性が高いでしょう。
③肖像権侵害
肖像権とは、人がみだりに他人から写真を撮影されたり、撮影された写真をみだりに公表・利用されない権利です。
晒したLINEの中に、人の写真が含まれている場合には、肖像権侵害が成立しうるでしょう。
④プライバシー権侵害
プライバシー権とは、一般に「自己の私生活上の事柄をみだりに公開されない権利」と解釈されています。
晒したLINEの中に個人情報が含まれている場合等には、プライバシー権侵害が成立する可能性があるでしょう。
3. LINEを晒されてしまった場合の対処法
①本人への削除依頼をする
投稿した人が判明している場合、本人に削除依頼をしてみることが考えられます。
犯罪に該当しうる行為であるとの自覚がない場合もありますので、そういったことを伝えつつ削除依頼をしてみると削除に応じてもらえる可能性があるでしょう。
②SNSの運営会社に削除依頼をする
主要なSNS(X(旧Twitter)、Instagram、爆サイ等)には、削除依頼用のフォームがあります。
サイトの利用規約に反している場合には、運営の判断によって投稿を削除してもらえることがありますので、フォームから削除依頼をしてみるとよいでしょう。
投稿がどういった権利を侵害しているのか詳細に説明することで、削除に応じてもらいやすくなるため、権利侵害の内容を具体的に記載して依頼することをお勧めします。
なお、一度投稿が削除されてしまうと、その後に証拠を保存することは難しいため、削除依頼の前に必ず証拠として投稿のスクリーンショット等を保存しておくようにしましょう。
証拠保存のポイントは、投稿のURL、内容、日時が分かる形で保存しておくことです。
③裁判所を通じた削除依頼
相手や運営会社に対して削除依頼をしても投稿が削除されない場合には、「仮処分」という裁判所を通じた手続きで投稿の削除をすることを検討しましょう。
仮処分が認められると、裁判所から運営会社に対して、投稿を削除するよう命令を出してもらえます。
仮処分の申立て方法については、以下のコラムで詳しく解説しています。
④被害届の提出や刑事告訴をする
晒し行為が刑事罰に該当する場合には、警察に被害届を提出したり、刑事告訴をすることを検討しましょう。
警察が捜査を開始してくれれば、相手方より示談の申し入れがされる可能性が高いです。
示談交渉の中で、投稿の削除や慰謝料の請求をすることもできます。
⑤損害賠償請求をする
晒し行為が犯罪には該当しない場合や刑事事件にすることは避けたい場合には、相手に対して民事上の損害賠償請求をすることも考えられます。
損害賠償請求をするためには、相手の名前や住所を把握する必要があります。
これらの情報が分からない場合には、まずは投稿者を特定する必要があります。
特定には、発信者情報開示命令の申立てをするのが有効です。
以下のコラムで申立て方法を詳しく解説していますので、ご確認ください。
4. 損害賠償請求の方法
LINEを晒した相手に対して損害賠償請求をする場合、以下の方法が考えられます。
①内容証明郵便を送る
内容証明郵便とは、誰が・いつ・どのような内容の文書を送ったかを証明してくれる日本郵便のサービスです。
相手に対して損害賠償請求をしたことを証拠として残しておくことができますし、通常の郵便よりも相手に対してプレッシャーを与えることができますので、直接相手に対して請求する場合にはお勧めの方法です。
②調停を申し立てる
調停とは、裁判所を介して当事者同士で話し合いをする手続です。
2名の調停委員と1名の裁判官(又は調停官)が当事者の話し合いを仲介し、お互いに合意をすることで紛争の解決を図ります。
第三者を介して話し合いをすることで、柔軟な解決が期待できますが、相手が合意しない限り調停が成立しないため、相手が話し合いに応じる余地がなさそうな場合には、③の訴訟手続きを利用する方がよいでしょう。
③訴訟を提起する
訴訟は、裁判所が当事者の主張や証拠を元に一定の判断を下す手続です。
訴訟は、裁判所に対して訴状を提出することで提起できます。
訴状には、相手がどのような権利を侵害し、それによってどういった損害が発生したのかを証拠と共に記載する必要があります。
5. まとめ
LINEを晒されてしまった場合、早急に削除依頼をしないと情報がどんどん拡散してしまうこともあります。
また、投稿者の特定を裁判所を通じてする場合、複雑な手続きも必要となりご自身のみでは対応が難しい場合もあるでしょう。
当事務所では、都内大手IT企業にて企業内弁護士として勤務していた経験のある弁護士が所属しており、開示命令の申立てから相手への損害賠償請求まで、一貫して対応することが可能です。
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