近年、競馬詐欺の被害に遭ったという相談が増えています。
競馬詐欺の特徴は、その手口が巧妙で、被害金額が高額であることが多い点が挙げられます。
本稿では、競馬詐欺の被害に遭ってしまった場合の対処法を解説いたします。
目次
1. 競馬詐欺とは
「競馬詐欺」とは、一般的に、事前にレースの結果が分かっている(いわゆる「出来レース」)などと謳い、高額な情報料を請求することをいいます。
競馬詐欺の手口は、以下のようなものです。
- 最初に自身の夢や目標をまとめさせて夢や目標を実現するためにお金が必要であるという実感を持たせる
- 事前に相手方の運営する会社のホームページのURLを伝えておき、信頼できる会社であると誤信させる(実際は架空の会社で、会社自体が存在しなかったり、ホームページに掲載されている住所は地番が抜けているなど)
- 相手方は、「◯◯さんの夢や目標にとても感銘を受けました。
ぜひ応援したいので、特別会員限定のレースに招待します。」などと述べて、出来レースの話を持ち出す
- 過去のレースの映像をあたかも今から実施されるレースのように見せかけて、レース結果を的中させたと誤信させる
- 次に実施される出来レースを指定され、情報料や会費と称して高額な金銭を要求する
- 振込先の口座の名義は外国人や知らない会社の名義で、複数回振込みが必要な場合は、毎回別の口座を指定される
- 金銭を受領すると、レース結果の情報が伝えられるが、出来レースなど存在しないので、外れてしまう
- 相手方は、「馬は動物なので、事前に決まっていた内容どおりの結果にならないこともある」などと説明し、代替レースを紹介し、更に情報料や会費と称して高額な金銭を要求する
- 被害者が不審感を持ち始めた時点で徐々に連絡頻度を減らし、最終的には音信不通になる
- その他、「JRAから極秘情報を入手したが、情報を提供するためには情報料が必要」、「あなたの当選金が◯万円あるが、これを引き出すためには税金等の関係で手数料が必要」などと述べて、高額な情報料又は手数料の支払を要求してくるケースもある
2. 対処法
①ご自身で返金の交渉をする
最も簡易な方法としては、ご自身で相手方と返金の交渉をすることが挙げられます。
しかし、競馬詐欺の場合、相手方が交渉に応じる可能性は低く、ご自身で交渉することにより返金を実現できる可能性はないと考えた方が良いでしょう。
②消費生活センターに相談する
競馬詐欺は消費者被害の一種ですので、消費生活センターに相談する方法が考えられます。
消費生活センターが違法性の高い案件と判断した場合、返金の交渉を仲介してくれる可能性があります。
また、消費生活センターは、行政機関であるため、ご自身で交渉するよりも相手方が対応する可能性は高いといえます。
もっとも、消費生活センターが仲介をしてくれないことや仲介してくれても相手方が対応しないというケースは多いため、消費生活センターへ相談しても解決できる可能性は高くないと考えていただいた方が良いです。
なお、消費生活センターへの相談については、こちらのページをご参照ください。
③警察に被害届を提出する
競馬詐欺は、刑法上の詐欺罪に該当するため(刑法第246条1項)、競馬詐欺の被害に遭ったことが分かった時点で、警察に相談し、被害届を提出することが考えられます。
警察が被害届を受理し、捜査が開始され、犯人を特定できた場合、犯人が逮捕されたり、取調べを受けるなどして、犯人側から示談の申入れがあり、被害金の全部又は一部を回収できる可能性はあります。
しかし、事案の内容によっては、警察が被害届を受理してもらえなかったり、受理したとしても、捜査に時間がかかり、結果的に被害金を回収することができなかったというケースは多いです。
また、競馬詐欺の場合、捜査しても犯人が特定できなかったというケースも多いです。
④口座凍結
競馬詐欺により金銭を相手方の指定する口座に振り込んでしまった場合、犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律(通称「振り込め詐欺救済法」)に基づき、振込先の口座を凍結することができます。
振り込め詐欺救済法に基づき、口座を凍結する場合には、事前に警察への被害届の提出が必要ですので、まずは警察に被害届を提出しましょう。
また、振込先の金融機関に対しても、被害の申出が必要となります。
口座の凍結が完了した後は、振込先の口座の預金残高と被害者の数に応じて、被害金の全部又は一部が分配されます。
詐欺の加害者は、口座の預貯金をすぐに引き出すところ、口座に残高がないと被害回復分配金を受け取ることができませんので、上記警察と金融機関に対する被害届の提出は早急に行うようにしましょう。
口座凍結の手続の詳細は、金融庁のホームページに掲載されていますので、ご参照ください。
また、口座凍結の手続をご自身で行うことが不安という方は、弁護士に手続を依頼することも検討すると良いでしょう。
⑤裁判手続を利用する
競馬詐欺は、民法上の詐欺(民法第96条1項)、不当利得(民法第703条、同第704条)、債務不履行(民法第415条等)などを理由に振り込んだ金銭の返還請求ができるケースがほとんどです。
そのため、相手方に対し、訴訟(裁判)を提起し、金銭の返還請求を行う方法が考えられます。
前述のとおり、競馬詐欺の加害者は、振込先の口座の預貯金をすぐに引き出してしまうことから、訴訟提起に当たっては、振込先の口座に対する仮差押えの手続を行うのが良いでしょう。
「仮差押え」とは、訴訟の判決が出る前に口座を一時的に差し押さえ、口座の預貯金を引き出すなどの処分をできないようにする手続です。
また、相手方に対し訴訟を提起するためには、相手方の氏名又は会社名と住所を特定する必要がありますが、前述のとおり、競馬詐欺の場合、相手方の会社のホームページには、架空の会社名や地番が欠けている住所が掲載されていることが多いので、相手方の氏名又は会社名と住所を特定することができないことがほとんどです。
そこで、金銭の振込先の口座情報から相手方の氏名や住所を特定することが考えられますが、そのためには弁護士会照会という制度を利用する必要があります(弁護士法第23条の2)。
弁護士会照会は弁護士のみが利用できる手続ですので、裁判手続を利用する場合には、弁護士に依頼することをお勧めします。
また、裁判手続は、非常に複雑であり、専門的な知識を有することから、ご自身で対応することが難しいケースがほとんどですので、その点からも弁護士への依頼を検討すると良いでしょう。
なお、弁護士に依頼して、弁護士から金銭の返還を求める通知書を送付するなどの弁護士を通じた裁判外の協議を行う方法も考えられますが、私の経験上、競馬詐欺の場合、裁判外の協議で相手方が返金に応じるケースは少ないため、弁護士に依頼する場合には、裁判手続を見据えて依頼した方が良いです。
3. まとめ
競馬詐欺の被害に遭われた場合、多額の被害を受けており、弁護士に依頼する費用の捻出も難しいという方も多いと思います。
もっとも、事案の内容によっては、被害金の返金を受けられる可能性のある場合もあるので、まずは弁護士に相談し、詳細な見通しを聞いてみると良いでしょう。
当事務所に所属する弁護士は、競馬詐欺被害の対応実績があり、被害金の回収に成功した案件もございます。
競馬詐欺に関する相談をご希望の方は、問い合わせフォームよりご連絡ください。