法的紛争が生じており、弁護士への依頼を検討しているが、弁護士の選び方が分からないという方は多いと思います。
弁護士の選び方を誤ってしまうと、紛争が悪化したり、経済的不利益を被るおそれがありますので、弁護士選びは慎重に行うべきです。
本稿では、静岡で良い弁護士を選ぶポイントを解説いたします。
目次
1. 事務所の立地
まずは弁護士の事務所の立地を確認しましょう。
弁護士に依頼した場合、案件処理に際し打合せが必要となることがあります。
自宅や勤務先の近くの事務所に依頼することで、事務所へ通う負担を軽減することができます。
また、訴訟や調停などの裁判手続においては、裁判所への出頭が必要となることがあり、裁判所が事務所から遠方の場合、交通費や日当が生じることがあります(ただし、近年は遠方の裁判所の場合、多くの裁判期日でウェブ会議や電話会議の利用が可能なので、遠方の裁判所への出頭回数は以前よりも少なくなっています)。
静岡県は横に広いことから、本庁(静岡市葵区所在)、浜松支部(浜松市中央区所在)、沼津支部、富士支部、掛川支部、下田支部、島田出張所・簡易裁判所、熱海出張所・簡易裁判所、清水簡易裁判所、三島簡易裁判所と多くの裁判所の支部や出張所等が存在します。
弁護士を選ぶに当たっては、仮に裁判手続に移行した場合の事務所と裁判所の距離も検討材料にすると良いでしょう。
さらに、事務所へ通う際の交通手段も意識すると良いでしょう。
すなわち、電車の場合には最寄駅からの距離、車の場合には駐車場の有無・駐車料金の有無等を確認しましょう。
2. 弁護士の得意分野
法律問題には、分野が存在します。
分野は、離婚、相続、刑事、不動産、IT・インターネット、労働、交通、破産・債務整理、企業法務、特許など様々です。
自らの法的問題が依頼する弁護士の得意分野と一致していないと、知識や経験不足から、法的紛争の適切な解決ができず、時間や費用を無駄にすることになりかねません。
弁護士に相談・依頼をするに当たっては、事務所のホームページや弁護士の紹介ページを確認するなどして、事務所の得意分野を確認するようにしましょう。
静岡県の場合は、一定の分野に特化している事務所は多くないですが、幅広い分野に対応している事務所であっても、幅広い分野の中でも得意な分野が存在したり、所属弁護士ごとに得意分野があるということが多いです。
3. 弁護士の経験・実績
弁護士の経験と実績も紛争の適切な解決に重要な要素です。
事務所のホームページや弁護士の紹介ページにおいて、解決事例・解決実績を掲載している事務所・弁護士は多いので、解決事例・解決実績を確認すると良いでしょう。
なお、経験と実績を弁護士の年数や年齢で判断する方もいらっしゃいますが、年数や年齢は参考程度に止めるべきです。
弁護士の年数が短く年齢が若い方でも経験や実績が豊富な弁護士はたくさんいますし、一方で弁護士の年数が長く年齢が高い方でも特定の分野の経験や実績に乏しいという方もいます。
弁護士の経験と実績を計るに当たっては、自身の抱えている法的紛争の分野に対する経験と実績があるかという点を重視することをお勧めします。
4. 弁護士費用
以前は弁護士報酬基準というものが存在し、原則として、弁護士費用は弁護士報酬基準に沿って定められていました。
しかし、平成16年(2004年)4月1日に弁護士報酬基準は廃止され、弁護士費用は自由に設定できるようになりました。
したがって、弁護士費用は事務所や弁護士によって様々ですので、弁護士費用をきちんと確認した上で、依頼をするようにしましょう。
弁護士費用の内訳(着手金、報酬、日当)や金額、費用が発生する条件を明確かつ具体的に説明してもらえるか、見積書を発行してもらえるかなども、後のトラブルを防止するために重要です。
弁護士費用の相場が分からないという方は多いと思うので、ホームページで複数の事務所の弁護士費用を確認してみたり、複数の弁護士に相談し相見積もりをするなどして、弁護士費用を比較すると良いでしょう。
5. 弁護方針
自身の希望と弁護士の弁護方針が大きく異なっていると、後のトラブルを生じかねません。
相談に当たっては、自らの希望をきちんと伝えた上で、弁護士の見通し、方針、解決案を確認するようにしましょう。
弁護方針で注意すべきことは、自身の希望と合っているものの、見通しが甘かったり、方針や解決案が不明瞭な場合です。
自身の希望と合致していても、見通しが甘いと、思わぬ不利益を被るリスクがあります。
また、方針や解決案が不明瞭な場合には、弁護士が明確なビジョンを持たずに依頼を目的に甘い見通しを伝えている可能性があるので、方針や解決案の具体性や実現性は特に重視すべきです。
見通しの甘さや方針・解決案の不明瞭さについては、複数の弁護士に相談することで分かることが多いので、弁護士への依頼を検討するに当たっては、複数の弁護士に相談してみることをお勧めします。
6. 弁護士との相性
法的紛争の対応を弁護士に依頼する場合、長期的に弁護士とやりとりを行う必要があることが多いです。
弁護士との相性が悪いと、案件について気軽に相談ができなかったり、信頼関係が築けずに案件処理が滞ってしまうリスクがあります。
弁護士の性格等も含め、相性が良いと感じた弁護士を依頼することが大切です。
また、相談内容が異性には相談しにくい内容の場合には、同性の弁護士に相談するようにしましょう。
相談内容を詳細に伝えることができないと、後に弁護士とのトラブルを生じかねません。
当事務所は、男性と女性の弁護士が所属しておりますが、女性からの性被害の相談は女性弁護士を希望される方が多く、そのような場合は女性弁護士が相談から案件対応まで一貫して対応するようにしております。
7. 対応の迅速さ
当事務所が受ける相談の中には、現在弁護士に依頼しているが、弁護士にメールを送っても返信がなく、事務所に電話しても弁護士に繋がらず事務員から折り返しを案内されるだけで困っているという相談が少なくありません。
弁護士にすぐに相談できない、対応が遅いというのは、非常にストレスがかかりますし、紛争の早期解決にも悪影響を与えます。
相談段階において、レスポンスが速いかなどを確認し、対応が速い弁護士か否かを判断しておくと良いでしょう。
8. 担当弁護士の数
一般的に、担当する弁護士の数が多い方が連絡が取りやすかったり、様々な意見を聴くことができるため柔軟な解決が図れるということは多いです。
もっとも、複数の弁護士が担当する場合、年数が上の弁護士が下の弁護士に案件処理を丸投げするというケースも散見されるので、単に担当弁護士が多いからという理由で弁護士を選ぶことは控えた方が良いです。
また、所属弁護士が多い事務所だからといって信頼できる事務所と判断するのも危険です。
事務所の規模が大きい=優秀な弁護士、信頼できる弁護士ということはないので、形式的に所属弁護士が多い事務所を選ぶことは控えましょう。
9. 無料相談を実施しているか
近年は初回の相談料を無料としている事務所が増えています。
相談無料の事務所に相談することで、弁護士費用の負担を軽減することができます。
10. 懲戒歴
弁護士は、弁護士法に違反した場合や日弁連・弁護士会の規則に違反した場合、所属弁護士会から懲戒処分を受けることがあります。
過去に懲戒処分を受けているからといって、必ずしもその弁護士に依頼することがいけないということはありませんが、信頼できる弁護士に依頼するという点では、参考にすると良いでしょう。
まとめ
弁護士への依頼が必要な法的紛争については、弁護士選びに失敗してしまうと、大きな不利益が生じるおそれがあります。
当事務所が受けた相談の中には、弁護士と全然連絡が取れない、事前に説明されていない高額な弁護士費用を請求された、誤った説明を受けていたため訴訟で不利な状況に置かれている、高圧的な態度で話を聞いてもらえないなどの依頼した弁護士とのトラブルに関する相談も多く見受けられます。
弁護士を選ぶに当たっては、ぜひ本記事の内容を参考にしていただき、慎重な判断をするようにしましょう。